土埃が晴れると、フェルナンデスの眼光が怪しく光った。
ま、まさか……あれで倒れていないのか!
「ラスティさん! まだあの方……傷が治癒しているような、そんな気配を感じます」
スコルが叫んだ。
マジかよ!!
まさか、この前のシーサーペントみたいな自己再生スキルか!?
だとすれば――。
焦っていると、フェルナンデスが周囲の建物を吹き飛ばしながら跳躍した。
な、なんてヤツ!!
「……くっ!」
「ラスティ、貴様の力を見くびっていた。だが、その程度では儂には届かぬぞ!!」
大戦斧が迫ってくる。
ええい、仕方ない。
斧をゲイルチュールで防御した。
ガァァンと鈍い音がして――俺は手が痺れた。
なんて馬鹿力だよ。だけど、俺はなんとか耐え凌いだ。スコルの支援スキルがなかったら、アウトだったかもな。
「届かないものなんてない。俺がそれを証明してやる」
「……ほう、面白い。ならば全身全霊の覚悟で掛かってこい」
俺はゲイルチュールに魔力を込めた。
風属性は纏わせず、無属性を意識して。
「ラスティさん、わたしも」
スコルの聖女としての魔力が流れてきた。
……こ、これは凄い。
湯水のように流れてくる膨大な魔力。
どうしてこんな力を……!
普段はあんまり魔力を使っていないように思えるのだが、実際とんでもない力を持っているのか。
そういえば、以前にリザレクションを――。
いや、今はいいな。
驚いていると、ゲイルチュールの形状が変化していた。
「……! これは!」
それは『ゲイルチュール』から『シグチュール』に変化した。名前は何故か分かった。
いつもの“つるはし”ではなく“剣”となっていた。
「ラ、ラスティさん……それ」
「ああ、これは剣だ。だけど、これで勝てる気がする。いや、勝てるんだ」
俺は剣をぐっと握りしめ、一閃を放つ。
「つるはしが剣に……!? だが、それがどうしたああああああ!!」
再び、フェルナンデスの大戦斧が迫ってくるが、俺はそれよりも先に攻撃を加えた。
「くらえッ! シグチュール!!」
剣が大戦斧に激突。
すさまじい火花が散っていく。
フェルナンデスの力もかなりのモノだ。
これがニールセンの親衛隊の力か……だけど、コイツの力はただの“暴力”に過ぎない。
俺とコイツでは背負うモノが違う。
だから!!
「……ッッ! ラスティ……貴様!!」
「神聖王国だか、なんだか知らねえけどな……お前達なんかに負けない!」
拮抗していた衝突が次第に、俺の優勢となった。
斧の刃を徐々に破壊し――やがて。
大戦斧を真っ二つにして、俺はシグチュールでフェルナンデスを叩き斬った。
「ぐ、ぁぁぁあああああああああッッ!!!!!!!」
重く激しい一撃が命中して、ヤツは遠くへ吹き飛ぶ。……よし!
「あ、兄貴!!! そんな、ありえねえ!!」
ブレアと戦っていたオッフェンバックが焦っていた。だが、それがいけなかった。
「隙あり!!」
「しまったあああああ……ぐはあああぁぁぁ……」
一瞬の隙を突いてブレアは、オッフェンバックを斬った。
「短剣使いの痩せ男は倒したぞ、ラスティ」
「お疲れさん、ブレア! こっちも終わった」
安心していると、スコルが声をあげた。
「大変です、ラスティさん!!」
「どうした、スコル!」
「あの、オッフェンバックって人……急に動き出して逃げちゃいました」
地面をよくみると『丸太』が落ちていた。
異国の“変わり身の術”みたいだな。
ということは、少なくともオッフェンバックは生きているようだな。
その後、フェルナンデスの撃破を確認。
あとはブレアが何とかしてくれることになった。
だけど、街の被害は甚大。
犠牲者もかなり出たという。
ヤツ等、好き勝手に暴れやがて……絶対に許さん。
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