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「はぁ〜〜〜…ただいま〜〜」

家に帰る。母はまだ帰宅していない。…出張か。粉末味噌汁と冷凍ご飯を取り出し、冷凍ご飯を電子レンジで温める。その間に自分は風呂へ向かう。

軽くシャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かす。自分の髪の毛は前髪だけ桃色。中学を卒業するときに染めたのだ。右耳のイヤリングは、交通事故で死んだ妹の形見。ドライヤーの風がイヤリングを揺らす。妹は生まれつき前髪だけ桃色だったなぁ。そんなことを思い出す。

髪が乾いた後、冷凍ご飯が出来上がる音が聞こえたので、キッチンに戻る。温められたご飯に粉末味噌汁を加え、簡単な食事を準備する。食事をしながら、今日の出来事を振り返る。静かな部屋の中で、妹のことを思い出しながら、少しだけ心を落ち着ける。

「おやすみ……」

桃色のカーテンを閉め、ベッドに体を沈める。布団の上で、LANは手足をジタバタと動かした。桃色でコーティングされた部屋は、ほのかに花の香りがした。

隣に布団では妹が寝ていた。勉強机に置いてある妹の写真を眺める。妹の名前はサクラ。花見の時はいつもはしゃいでいたな。

「元気かな……」

いまだに妹の死を認められないLANは、部屋の隅に置いてあるギターに目をやる。久しぶりに弾いてみようか。心の中に静かに沸き上がる欲望を感じながら、ギターのもとへ向かう。ギターを手に取り、指が弦に触れる感触を楽しむ。小さなメロディーを弾きながら、サクラのことを思い出す。

音色が部屋に広がると、少しだけ心が軽くなる気がする。妹と過ごした日々が、今は遠い記憶となってしまったけれど、ギターを弾くことで、その記憶がまた鮮やかに蘇るような気がした。

「…なに弾こうかな…」

頭の中で色々なメロディーが流れる。

「…電子桜と浮世東京にしよ」

LANはゆっくりとギターを弾き始めた。



煌めく夜のデジタル風景

江戸の街が光の海

そこに浮かぶ桜の華が

虚構の空に舞い上がる

闇色のスクリーンの中で花びらが

未来と過去を繋ぐ架け橋になって…


デジタルの風に揺られながら

桜は幻想の中で踊る

浮世の街は色とりどり

ガラスと鉄のジャングルの中

ひとひらの桜の香りが

喧騒を包み込むように

昔の詩が今に蘇る


ネオンに染まる華の影

静かな美しさを放ちつつ

時代の狭間に咲いている

間接的な世界の中で

浮世の記憶が溶け合う

電子の桜がそっと教える

変わらぬものは心の中に

夜が明けるその前に

東京の空に咲く一瞬の華

デジタルの夢と現実が交差して

静かに、その美しさを刻む

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