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「っはぁ〜〜〜〜ぁ」
家に帰ると、やっぱり姉がいた。姉は不機嫌そうにいるまを睨むと、スマホを片手に自室へ向かった。いるまはカバンを投げると、自室のクマのぬいぐるみを抱きしめた。机の上には薄紫色のメガホンが転がっている。床には紫色のベースが置いてある。それを眺めながらいるまはくまをさらに強く抱きしめた。
「何でだ…」
自分の言葉が、部屋の中に響いた。ベースを見つめると、かつての楽しい日々が頭をよぎる。今ではその思い出が、どこか遠い昔のことのように感じられる。
「姉ちゃん、どうしてそんなに怒ってるんだろう……」
心の中で呟きながら、いるまはぬいぐるみに顔を埋めた。クマのぬいぐるみの柔らかさが、少しだけ心を癒してくれる気がした。それでも、心の奥底には孤独感と不安が渦巻いていた。
「はぁ…なつ〜〜…」
親友の名前を呼ぶ。返事はない。隣から物音がして、姉がドアを開けて入ってきた。
「あんたうるさいわ」
黒いジャージに身を包んだ姉がいるまを見下ろす。ボサボサの長い黒髪が揺れる。
「…わかったって………」
姉は騒々しく部屋から出て行った。いるまが中学生になった時から、姉はいつもこうだ。高校受験に落ちて、行きたかった女子校に行けなかったらしい。今家では好きな歌い手の切り抜きを量産している。ライブが毎年何回かあるらしく、ライブから帰ってきた姉は優しい。だが次の日は不機嫌になっている。
「やれやれ…」
いるまはクマのぬいぐるみに顔を埋めた。親友の暇72のことを思い出す。学校ではいつも一緒にいるけれど、家では一人だ。孤独感が胸に広がる。
「なつ…会いたいな…」
そう呟くと、いるまはスマホを手に取り、暇72にメッセージを送った。
「家着いた?」
メッセージを送ると、すぐに返信が来た。
「着いたよ。そっちは?」
「色々あったけど、なんとか大丈夫。会いたいな」
「じゃあ、明日一緒に帰ろう」
「うん、ありがとう」
いるまは微笑み、スマホを置いた。明日、暇72と一緒に過ごせることを楽しみにしながら、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
「ベースなら、姉ちゃんも怒んないかな……」
床に落ちているベースを抱え、いるまは弦をチューニングし始めた。耳を揺らすような低音が響く。姉の部屋からの物音も止まった。
「最近弾いてなかったな…」
ふくよかな響きを含んだ低音が、今のいるまにはちょうど良かった。ベースを弾きながら、いるまはゆっくりと歌い出した。重低音に合わせて奏でられる歌は、どこか寂しかった。
いるまの声が部屋中に響き渡り、ベースの音色と共にメロディーが紡がれる。心の中に溜まっていた寂しさや孤独が、少しずつ音楽と共に解き放たれていくようだった。
歌い終わると、いるまは少しだけ心が軽くなった気がした。ベースをそっと置き、再びクマのぬいぐるみを抱きしめる。
「明日は、もっといい日になるかな…」
そう呟いて、いるまは静かに目を閉じた。
夜の帳が降りる時
古びた涙の音が響く
その音は寂しげで
魂の奥深くを揺さぶる
悪魔の指先が奏でる旋律
悲しみの涙を誘うけれど
その音は優しく包み込む
孤独な心に寄り添うように
暗闇の中で響く夜色
それは痛みを癒すため
希望の灯火を探し求め
闇を照らす一筋の光
箱を開けると
見えない絆が浮かび上がる
悪魔の微笑みの裏には
優しさが隠れているのかもしれない
苦しみと悲しみの中で
その音色は語りかける
「君は一人ではない」と
夜の静寂に響くメロディ
涙を拭いて顔を上げ
その音に耳を傾けて
悪魔のオルゴールが奏でる
希望の旋律を信じて
悲しみはいつか終わる
その時まで、音に身を委ね
暗闇の中で強くなれるように
悪魔の箱は君を励ます。