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「え?あの、ここって、?」
「急に連れてきてごめんなさい。ここでなら落ち着いてる話せるかなって思ったから」
その人は困惑していた。当然だ。だって急にこんなに何もなくて、静かに音楽だけ流れてるセカイに連れてこられたんだから。
「大丈夫ですよ。ちゃんと帰れますから。あの、名前を聞いてもいいですか?」
「朝比奈、まふゆです。あなたは?」
「宵崎奏です。神校の2年生です」
「それなら私と同い年ですね。、敬語はやめませんか?」
私と彼女は同い年。なら、もしかしたら。
「わかった。ねえ、朝比奈さん。何があったの?」
「え?だから、何を言って、。」
私は遮るように言った。
「朝比奈さんの目には光がないの。そこにあるのは絶望だけ。その目を私は知ってる。絶対に何かあったんだよね?話してみてくれないかな」
「目に、光がない、か。そうなんだ。私の目には光がないんだ。」
すると、朝比奈さんの声が低くなった。こっちが本当の声なんだろうと反射的に思った。
「うん、だから、。」
「話して、何が変わるの?」
「何が、変わる?」
「何も変わらないのに、話す必要がない。だから帰して。」
言ってる意味がわからなかった。いや、正確に言えば言葉の意図が伝わらなかった。確かに言っても意味がないなら言わない。それは正しいことを言ってる。でも、なぜこの言葉を言ったのかわからなかった。
「朝比奈さんはさ、どうしたいの?」
「え?」
「直感で教えて欲しいな」
なんて返ってくるのか、予想はできた。でも、違う返答をしてほしいと願ってしまった。
「消えたい。もう希望を信じたくない。救われるかもとか、変われるかもとか、もう疲れた。」
「そう、なんだ。」
わかる気がする。中学の時、そうだったから。あの頃はどうしようもなく消えたくて。生きていたかなくて。その現実に、大きく絶望して。
「そういう宵崎さんも本当は消えたいんでしょ。どうしようもないくらい」
「え?そんなこと、。」
ない、って言いたかった。だって私は、いまが楽しいから。瑞稀も絵名もいて。一緒に曲を作れて。たくさんの人に届いていて。
「言い切れないんだね。」
「、ごめん。」
「いや、大丈夫。でも、話すだけ話してみようかな。確かに何か変わるかもしれないし」
なんで急に話そうと思ったのかさっぱりわからない。だけど、聞いてみたくなった。
「ありがとう。朝比奈さん」
「私は、親の理想の姿になるために生きてる。親がこうした方がいい。こっちの方が未来が明るいって言われたら、それに向けて努力した。こな大学に行けば将来安泰だ、とか。その仕事ならまふゆよ将来は安心だって言われたら、それに向けて努力した。でも、そんなことを、続けていたら、いつしか私を見失った。私がどこにいるのかわからなくなった。家では親の理想を突きつけられて、私がちゃんとしなきゃ親が悲しむ。かと言って学校はずっと優等生を演じてるから、居場所ではないの。私はどこにいるのかわからない。私は自分を見つけたい。だから、ライブにも行った。だけど、見つけられなかった」
私は朝比奈さんの問題に直接触れることはできない。家族の問題に関わるほど私は強くないし、簡単に関われないと思ったから。だけど、できることをしたい、と思った。
「朝比奈さん。ここで流れてる曲をを聞いて欲しい」
「え?」
不思議げにしてたけど、彼女は曲を聞いてくれた。
「朝比奈さん、この曲、どう感じた?」
「温かいって思った。ただ温かいって思ったよ」
「なら、私のやることは一つだよ。まふゆを救えるまで曲を作り続ける。それだけ。朝比奈さんにとって迷惑かもしれない。だけど私は、朝比奈さんの力になりたいの」
「でも、無理だよ」
「ーえ?」
「たかが曲程度で救われるわけないじゃない!そんな簡単なもので救われたら苦労しない!もう、救われるかもって、思っちゃうのに疲れたの!今までそう思ってダメで!」
「なら私は、朝比奈さんが無理だって言っても作るのを辞めない。それで朝比奈さんを救えるならそうする。私には曲しかないから、曲で朝比奈さんを救えるなら救いたい。これは私の本当の思いだよ。」
「本当に、作り続けてくれるの、?」
「うん。もし、私が作れなくなったら”まだ救われてない”って言ってくれればいい」
「わかった。あなたを信じるよ、宵崎さん。あ、そうだ。これ、持っといて欲しい」
「これ、は?」
「ナイトコードのコードだよ。そのコードで私にいつでもチャットができる。一緒に曲を作ろうよ。朝比奈さん。いや、まふゆ。もしかしたら、変わる日がくるかもしれないよ」
「曲を?でも私、何もわからないよ」
「私が教えるから、一緒に作ろうよ。私だけじゃない。他に二人いて、二人とも優しいかもまふゆを受け入れてくれるよ。」
「そう、わかった。これからよろしくね、奏」
そう言って、私たちはセカイから帰ってきた。でも、私は約束の時間を超えてしまった。
「まふゆ、いつでもチャットしてきていいからね」
「うん、ありがとう。奏」
そして私は急いで校門へ向かった。
「あ!奏ー!遅いよー!」
「もう、30分も待ったんだからね!」
「ーう。ごめん。ある人と話してて」
「ある人?」
「うん。私たちの新しい仲間とね。」