テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
183
48
「……そうなんだ」
「ごめん。変なこと言って……気分悪くしたろ?」
こんな話を聞かされて、ナギがいい気分になるはずがない。
蓮がすまなそうに項垂れると、ナギは小さく息を吐き、そっと耳元に唇を寄せた。
「何となく、そうじゃないかとは思ってたけどね」
「え……?」
驚いて顔を上げると、ナギは苦笑しながらコツンと眉間を小突いてきた。
「凛さんがお兄さんをそういう目で見てるんじゃないかって、薄々わかってた。ていうか、今まで気付かなかったお兄さんが鈍すぎ」
「うっ……」
正論過ぎて、ぐうの音も出ない。視線を逸らす蓮を見て、ナギはにやりと意地悪な笑みを浮かべた。
「し、仕方ないだろ! まさか自分の兄貴がなんて、考えもしなかったし……」
「うっわ、凛さん可哀想。あれだけ露骨だったのに」
「そ、そう……なのか?」
蓮が困ったように眉尻を下げると、ナギはちゅっと鼻先にキスを落とした。
「でも……よかった」
「……え?」
「お兄さんが、そこまで見境のない人じゃなくて。――もしそうだったら、俺……」
言葉を区切り、視線が下へと動いたかと思うと。
次の瞬間、ナギの手がギュッと蓮の根元を握り込む。
「このチンコ、ちょん切ってた」
「いっ……!? お、おい、ナギ!」
突然の痛みに声を上げる蓮を前に、ナギは握ったまま、にっこりと微笑んだ。
その笑みは甘さを含みつつも――どこか本気の色を帯びている。
「……隠し事してた罰。俺、嫉妬深いから」
蓮が痛みに表情を険しくするも、ナギは一向に力を緩めてくれる気配はない。
「凛さんがネコかタチか知らないけど……。お兄さんは俺のなんだから、よそ見しちゃ嫌だし?」
「するわけないだろ。 僕がどれだけナギの事好きだと思ってるんだ!」
「わかってる。わかってるけどさ、嫌なんだよ。 俺以外の人がお兄さんの事を狙ってるなんて。考えるだけでも嫌なのに、ライバルが凛さんだと思うと……どうしようもなく不安で仕方がないんだ」
やっと手を離してくれたかと思ったら、今度は蓮の首元に顔を埋めてしまう。
もしかしたら、自分は想像以上にこの年下の恋人に愛されているのかもしれない。
可愛い独占欲を前にして、理不尽だとは思いつつも思わず頬が緩み、ナギの柔らかい髪に指を通した。
「バカだな。いくらなんでも、うっかり流されるほど僕は馬鹿でもないし、手あたり次第手を出すほど悪食でもないから安心しなよ」
「……じゃぁ、銀次君は?」
「えっ?」
「え、じゃなくて。銀次君」
不意に出て来た名前に、蓮はギクリと顔を強張らせる。
「銀次君って、昔好きだった人に似てるって前言ってたでしょう? 実際、どうなのかなぁって」
不安の混じった瞳で見つめられ、蓮の口からは失笑が洩れた。
「……前にも言ったと思うけど、彼は別人だってちゃんとわかってるし、もう何も思ってないよ……今はキミ一筋だって」
「本当に?」
疑うようにナギが覗き込んでくる。その瞳には拗ねと不安がないまぜになっていて、蓮は思わず苦笑を漏らした。
「本当だよ。ナギ以外に好きになる人なんていない。だって……」
言葉を区切り、ナギの頬にそっと触れる。
指先に伝わる温もりを確かめながら、蓮は真っ直ぐに見つめ返した。
「俺には、ナギが一番大事だから」
「……っ」
ナギの瞳がかすかに揺れる。
その一言を聞いただけで、今まで張り詰めていたものがほどけていくように、彼の肩から力が抜けた。
「……ズルい。そうやって真顔で言うと、疑えなくなるじゃん」
小さな声でそう呟き、ナギは蓮の胸に顔を埋めた。
耳元に熱い吐息がかかり、くすぐったくて愛おしい。
蓮は微笑みながら、その柔らかな髪に指を通し、今度は自分から額を寄せてそっと触れ合わせる。
「信じていいよ。俺はナギだけのものだから」
「……ほんとに、絶対だよ?」
「うん。絶対」
「……そっか」
ナギはまだ何か言いたそうだったが、蓮の素直な返答にホッと安堵の溜息を洩らすと、甘えるように頬を摺り寄せてきた。
「だったら、いいや。銀次君がお兄さんに迫ってきたらどうしようとか、色々考えちゃった」
「流石にそれは無いだろ」
蓮は苦笑しながら、ナギの髪をくしゃりと撫でる。指の隙間から零れる銀糸は絹のように柔らかく、心地よい感触に自然と目を細めた。
「……うん。大丈夫、大丈夫だよね」
自分に言い聞かせるように呟いたナギは、不意に蓮の唇を奪う。小さな音を立てて触れるだけのキス。けれど、そこに込められた気持ちは真剣だった。
そのまま身体を滑らせ、腹の上に跨ると、ナギは少し落ち着きを取り戻しつつある蓮の熱を指でなぞった。
「ごめん。俺が変なこと言っちゃったから……」
「仕方ないさ。僕もちゃんと話すべきだったし……それに、ナギに愛されてるってわかって嬉しかったからね」
「そりゃそうだよ。俺はお兄さん一筋なんだから。……天然タラシな恋人がいると苦労するんだよ?」
「酷いなぁ。僕だって、君一筋なのに」
「今は、でしょ?」
悪戯っぽく笑うナギに、蓮も苦笑を返す。
「――今夜は、俺にリードさせてよ」
囁きと同時に、ナギの指先が蓮の服のボタンをひとつひとつ外していく。
唇を舐める仕草、熱を帯びた視線。すべてが誘惑で、抗うことなどできなかった。
喉が自然と鳴り、萎えかけていた熱が再び昂ぶりを取り戻していく。
その反応に満足げに目を細めたナギは、指でそっと扱きながら、今度は自分から深く口付けを重ね――そして唇を、ゆっくりと下へと滑らせていった。