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私と、朋也さんと一弥先輩。
不思議だ。
少し前には、こんなこと想像も出来なかった。
一弥先輩にフラれた私と、朋也さんに強引にされて困ってた私だったのに。
2人は今、私の大切な存在になってる…
今でも信じられないことだよ。
ありきたりの言葉で何度も思う…2人とも、本当にカッコよすぎるって。
私服姿なのにとっても素敵で。
こんな2人の横にちっちゃい私。
恥ずかしい。
きっと、不釣り合いにも程があるよね。
『運転、途中で代わるから』
一弥先輩が朋也さんに言った。
3人での視察…という名の小旅行。
『ありがとう。頼むよ』
そんな単純なやり取りでさえクラクラする程に眩しい。
これは、まるで目の前で繰り広げられる恋愛ドラマなの?
だとしたら、私はただのスタッフ…だよね。
こんなのずっと耐えられるかな…
車に乗ってから、ずっとドキドキしてるんだ。
朋也さんが運転。
助手席に私。
後ろに一弥先輩が座った。
カメラ機材もたくさん積んである。
『今日泊まる旅館って、老舗なんですよね?』
『ああ、かなり。とても風情のある良い旅館みたいだ』
『楽しみだね。僕、旅館なんて久しぶりだな』
一弥先輩、ワクワクしてるみたい。
『着いたらすぐに写真撮りますか?』
私は、朋也さんに対しても敬語を使った。
『そうだな。旅館に荷物を置いたら、すぐにある程度押さえておきたい』
『わかりました。じゃあ、今日は私が助手になりますね。夏希みたいにはいきませんけど』
『恭香ちゃんが助手なら、僕は荷物持ちだね』
一弥先輩が笑った。
一弥先輩が笑うと、本当にその場の雰囲気が温かくなる。
ずっとそうだった。
いつも大好きだった笑顔。
『僕は、夜のご飯と温泉が楽しみだな。そのために撮影と取材も頑張らないとね』
一弥先輩、可愛い。
『温泉なんて久しぶり過ぎて…いつ入ったか覚えてない』
朋也さんが言った。
『お父さんと温泉とかは…』
『ちょっと…無理だったな。父さんは忙し過ぎた。まあ、子どもの頃、友達と銭湯に何度か行った覚えはある』
『社長はやっぱり忙しいよね。うちも、社長じゃないけど役員だったから、全然家にいなかったよ。母親も働いてたし。だから、旅行とかも無かったな…』
一弥先輩、そうだったんだ。
知らなかった。
『今日は3人でいっぱい食べていっぱい満喫したいです!って、一応、仕事でしたよね。すみません』
『恭香ちゃん可愛いね。そういう元気なとこ、見てて気持ちいい。うん、そうだね。本当にいっぱい食べて満喫しよう』
可愛いとか…簡単に言わないで。
朋也さんは…黙ってる。
そのうち、私達は目的の旅館に着いた。
立派な老舗の旅館。
緑もあって静かな佇まいだ。