読み切り
解説がほしい場合は気軽にコメントしていただければ幸いです。
注意
・この物語はwrwrd様の二次創作となっております。
・本人様には一切関係ございません。
・登場しない方が多数。
・BL要素、病気の要素等が含まれております。
・キャラ崩壊
謝罪
表現の関係で、伏せ字にすることができていません。
ご理解の上、平気な方だけお進みください。
若年性アルツハイマー病。
彼が患った病気の名前。
これは65歳未満で発症するアルツハイマー型認知症のこと。
主に、物忘れ、判断力の低下、段取りがうまくいかないといった症状が特徴。
【ut視点】
「大せんせー?そろそろ出かけるで?」
「はいよーシャオちゃん、ちょー待ってな」
どうも僕です。
隣はシャオちゃん。僕の恋人。
ガチャパタン
今日は久しぶりに二人の休日が合ったので少し出かけることにしたのだ。
「なーなー!今日なんかお揃い買わへん?」
「せやなー何をお揃いにしよか?」
満面の笑みで会話を交わす彼は、見えない尻尾をぶんぶん振っているのが分かる。
犬かな(?)
少し歩いた後、僕らはショッピングモールについた。
それを前にして、
「あれ…俺何しに来たんやっけ」
と隣の彼が呟いた。
「今日はな、俺とシャオちゃんの休みが合ったから、お揃いのもの買いに来てん。」
「あ、せやったな!はよ行こーや大先生!!」
「…おう!」
彼はもともと物忘れが激しい方ではなかった。
そんな彼が、財布や時計を忘れるようになった。
最初こそ小さなことであったが、時を重ねるに連れ、
取り込んだ洗濯物をもう一度洗濯してしまったり、
撮影を忘れたり、
毎年の記念日に不器用ながら共同制作するアルバムの存在を忘れたりと、
忘れる、ということが増えていった。
ある時、シャオちゃんは迷子になった。
シッマから連絡が来て、いい年して何しとんねん、笑としょうがなく迎えに行ったときだったかな。
彼は自分の家を忘れていたんだ。
住所も、家の形も何もかも。
その時の彼から「家」という言葉が消えていたように見えた。
帰らなければいけない、ということも、自分の家がどこにあるのか、ということも、何もかも。
それらことがきっかけで病院に行った。
診断結果は「若年性アルツハイマー病」を患っている、と聞いた。
幸い、死に至る病気ではなかったが、一人で生きていくことが困難になると言われた。
…悔しかった。
なぜこんなにも頑張り屋な彼が病気を患わなければいけないのか。
一人で生きていくことが難しくなってしまうのか。
彼が辛い思いをするくらいなら、僕が代わりになりたい。
けれどそんなこと、どう頑張ったって実現不可能なことが。
精一杯のサポート。
僕ができることはこの一言に尽きる。
彼の辛さが和らぐように。
少しでもいい。彼のこれからの人生を鮮やかなものにするために。
「大先生!これとかええと思わん?」
シャオちゃんが右手に持って見せてくれたのは
リング。
青と黄色に輝く宝石がついてるやつ。
ターコイズとレモンクォーツだろうか。
「ふは、笑ええなぁ 」
「せやろ!!俺、会計してくんな。奢ってやるわ!!そこで待っててや」
「はいよー」
僕は彼が会計を済ませているのを横目に、ぐるり、と店内を見渡した。
彼の誕生日が近いから、何か買ってプレゼントをしようと考えていたのだ。
うーん……。
ペアのマグカップ?
いや、すぐに壊してしまいそうやな。
新しいパソコン?
ううん、最近買い替えた言うてたな。
その時ばちり、 僕の目に止まったのはカメラである。
カメラなら持ち歩けばどこでも記憶を形に残せる。
折角ならば、スマホの写真ではなく、解像度が高い写真で恋人を残したいものだ。
それにもしものときにシャオちゃんをとどめてくれるかもしれない。
もしものときにな。
僕はなけなしの残高でカメラを買った。
さて、そろそろシャオちゃんが会計を済ませて戻ってきてもおかしくない時間だが…。
いない、か。
んー、行ったほうがいいか?
いやいや、それでこの前
「俺をあまり舐めるなよ!!」
と悲しい目をして怒っていたじゃないか。
(涙目で怒っていて、可愛かったので。
内容はよく覚えてないよう)
もう少し待つべきだ。
…もう少し。
もう、少し。
もう少し…いぃや、待てない!!!
僕、行きます。行くしかないです。
「シャオちゃん!!」
見つけた。
まだ手には2つのリングが握りしめられていて、財布も片手にあった。
「ん?あぁ、だいせんせ!!俺、今何してるんやっけ???これ何?」
「これはリングやで。お揃いの買うんやろ??」
「…せや!買うんよ!だいせんせ!!
…てことで、奢ってやー!!!」
「んえぇぇ…!!?」
いやぁ、想定外。マジかぁ。
「え、だめなん?」キュルン
え、かわ
「はぁぁぁ………しゃーない、その可愛さに免じてやるわ!! 」
「うぃぃ、やったぜ!!ほら、はよいこ!!」
くぅぅ…。お金、足りるかなあ。
その後、俺らはフードコートで小腹を満たす程度の食事をして、帰路についた。
シャオロンは塩辛いものが好きなのに、急に苦手だった甘いもの、クレープを食べたいとか言い出すからびっくりした。
僕は車を買ったが、シャオちゃんが患ってからはなるべく一緒に歩いて出かけるようにしている。
せめて、近所の道は覚えていてほしいから。
頭で、記憶に残っていなくても。
体が覚えていてほしいから。
「大先生!!ありがとな!!」
「おう、勿論やで。」
「俺、今日もまたいっぱい忘れてて。迷惑やったやろ?ごめん。」
そう言っていつも明るい彼が俯く。
影ができる。
「ハァぁ???これが迷惑だとでも???
これが迷惑言うんやったら、彼氏失格やろ!!あんま舐めてんとアカンで??」
「…ふは、笑。そっか、ありがとう!! 」
ん。顔上がった。笑った。
黄色い目に夕陽が映る。
「ふふ笑。シャオちゃんは笑ったほうがいいよ。」
「んぁ?そうか?」
「せや?」
「ふふん。ま、俺みたいな完璧イケメンはどんな顔でもカッコイイけどな!!」
「いや、シャオちゃんは可愛い路線やろ!!」
「いいや?俺は認めないね!せめてかっこ可愛いやな。
…いや?どっちも取るか。俺は今日からかっこ可愛いシャオロン様や!!」
「はははッ!!!なんやねん、それ笑」
あぁ。こんな時間がずっと続けばいいのに。
僕の隣には必ずシャオちゃんが居て。
シャオちゃんの隣には必ず僕が居て。
それでいい。それだけでいい。
裕福な暮らしも、贅沢もできなくたっていい。
最低限の生活で、シャオちゃんさえ居れば。
どんなことでも楽しく過ごせる。
僕は確信している。
俺にはシャオロンだけでいい。
僕の人生には黄色が彩られていればいい。
なあ、シャオロン。
お前は俺を忘れない?
他のこと、全て忘れてしまっても、俺だけは忘れないでいてくれる?
俺は忘れへんよ。
笑った顔も、悔しい顔も、悲しい顔も、嬉し顔も、怒った顔も。
ぜんぶ。僕の記憶の中に。
シャオロンは?
いっそ、俺をずっと覚えているのと引き換えに。この世のすべてを忘れてしまったらいいのに。
「……せんせ!!」
「だいせんせ!!」
「どわァッッッ!!!」
「ふははッ笑、どんな驚き方してんねん!!」
「うわ、びっくりした。えぐ」
危ない。何、今の黒い感情。
我ながら気持ち悪い。
口に出てないよな。
あぁ、心臓に悪い。
「な、それ何?」
シャオちゃんはカメラの入った紙袋を指差す。
「ん、あぁこれ??」
ガサゴソと紙袋からカメラを出す。
シャオちゃんの顔はぱぁぁ、と効果音がつきそうなほどみるみる明るくなっていく。
目が見開かれて、夕陽の光がよく目に入ってより一層キラキラして見える。
「じゃじゃーーーん!もうすぐシャオちゃんの誕生日やから、少し早めの誕生日プレゼント!!」
「えええ!!なんこれ!カメラ!!!」
飛びつくようにマジマジとカメラを見つめるシャオちゃん。
かわ。
「これからたくさん写真取って形で残そうな。これなら、忘れちゃってもすぐ思い出せるで!!」
「…うんッ!!!」
涙目。
「ふふ、笑。これ、もう電源つくかな。」
ウィーン
レンズが開く。
あ、使える。
「ほら、シャオちゃんこっち来て!!」
「んェ、なにぃ?」
「はい、チーズ」
ぱしゃり
大きい、赤がかった黄色の夕陽をバックに記念すべき一枚目を撮った。
ビックリした表情のシャオちゃんと、満更でもない顔をしてる僕のツーショット。
そうだ、日が沈む前にあそこに行こう。
「シャオちゃん、ちょっと寄りたいんだけど。」
1年後程
懐かしいな。
この写真。
水性線に沈み行く大きな夕陽を眺めるシャオロンの後ろ姿の写真。
逆光で儚さが増している。
カメラを買った初日。
ツーショットを撮った後、水平線の見える公園に行ったんだ。
シャオちゃんは、
「こんな近くにこんなとこがあるなんて…ッ!!!!世界は広いな大先生!!!」
なんて。子供みたいな顔をしていたな。
あれから僕らは沢山写真を撮った。
カメラはどこへ行くにしても持ち歩くようにしていたし、何気ない日常でもシャオロンにレンズを向けた。
最初の方は毎度毎度、ビックリして、恥ずかしそうな顔を向けていたシャオロンも、最近は利き顔というのを覚えたそうで。
そんなシャオロンの不意をついた写真を撮るのが僕らの日課。
年が明けて、もうすぐ僕の誕生日だからと、プレゼントを買いに行ってくるとシャオロンは出かけた。
最近は忘れるものもことも減ってきたし、写真のおかげか、忘れてしまった昔の記憶も、写真を見れば幾らか思い出せるようになった。
通っている病院の先生もいい方向だとおっしゃっていた。
だから、少しの不安がありつつも
「大丈夫やから、任せとけって!!」
という自信満々な表情をしたシャオロンに負けて、留守番を選んだ。
とはいえ遅い。
時刻は5時を回ろうとしていた。
シャオちゃんが出かけたのは12時のお昼時だ。
嫌な予感がする。
「これ、大先生はこっちつけて!!俺の色!!!」
そう言って渡してくれたレモンクォーツが光るリング。
右手の薬指にはめたそのリングを撫でて、バックにありったけのアルバムを詰めて、カメラを持って、着ていただる着そのままで外に出る。
「はっ…はッ……しゃお、ちゃんッ!!どこや、シャオロン……」
息切れなんて知らない。
寒さなんて知らない。
ただひたすらに、僕の光である黄色を求めて走る。
日が沈みそうだ。
…いない。近所を走り回って探したが、いない。
電話にも出ない。
ああ。やめてくれ、神様。
僕から光を奪わないでくれ。
そう思ったとき。
ふいに、地平線が光った。
もうすぐ今日という日を照らす仕事を果たした太陽が沈んでいく光が僕に当たった。
あ。
まだ、まだある。
1か所。
僕と、シャオロンの。
思い出の場所。
ねぇ。そうなんでしょ。シャオちゃん。
憶えているんでしょ。あの日の夕焼けを。
ねぇ。シャオちゃん。
ねぇ。
「ねぇ。シャオちゃん!!」
いた。やっぱりここ。
あの日と同じ。水平線に太陽が沈んでいく。
もう少しで光が見えなくなる。
僕の目にはあの日同じ光景が映る。
「しゃおちゃん??」
僕の目に映る黄色はゆっくりと振り返り、そう言った。
**
**
**
**
**
**
「しゃおちゃんって、だれ??
おにいさん、だれ??」
忘れたんだ。僕のことも。自分のことも。
恐れていたことが起こった。
でもそれは、準備していたやないか。
覚悟していたことやないか。
落ち着け、深呼吸。
「シャオロン」
「帰っておいで」
こちらを完全に向いた黄色に1歩近づいて。
僕の言葉に耳を傾けてもらえるように。
ゆっくり。落ち着いた声で。
「だれ?怖い、ちかづかないで」
震えている。まずい。
…でも、ここで引くわけには行かない。
「シャオロン。君は、シャオロンやで。」
「ぼく?しゃおろんは僕なの??」
「そう。君はシャオロン。僕はシャオちゃんって呼んでる。」
「…おにいさんは?」
「僕は、鬱。君には大先生って呼ばれてる。」
「……うつ………だいせんせい……」
まだ警戒しているのか、近付きもせず、遠のきもせずの距離感で会話をする。
スローペースで、シャオロンが言葉を噛み砕ける速度で。
これは、何年も前からずっと練習してたこと。
「その右手のリング、お揃いなんやで。」
1歩近づいて、僕の手をシャオロンに見せる。
遠いな、シャオちゃんに見えてるかな。
「りんぐ??僕のは青い。」
「そう。それは僕の色だよ。
僕のは黄色、君の色。」
「僕の…色」
シャオロンが、僕に一歩、一歩と近づいてくる。
リングをよく見せて。そう言っているように。
「きれい。」
「ふふ、笑。せやな。お前がくれたんやで?ちょっとベンチに座ろか。」
「な、シャオちゃん」
「ん?」
「……遠ない!?!?!?」
少し警戒を解いてくれたにしろ、ベンチの端と端の端に座っている構図である。
「ふはは笑。 んー、いやだってさ、お兄さんまだ名前しか教えてくれないんだもん。
お母ちゃんには変な人には近づくな言われてるもん。」
少し僕を煽るような、そんな口調で言われる。
記憶がなかろうが、シャオロンなのだ。
「こら、お兄さんやなくて、鬱。大先生でもええで?そうお呼び!!あと、僕は変な人じゃありませんーーー」
「ええ??じゃあ、誰なの?僕にとってだいせんせい?は、何なの?」
…本当の事を言うべきか?恋人だって。
シャオロンは信じてくれるのか。
はっきり言って不安の要素しかないが…
…………ここは、言ってしまえ。
僕には写真があるんだ。
シャオロン…お願いだ。思い出してくれ。
「……………こ、恋人。」
「へ、」
俯いていた顔をシャオロンに向けると、夕陽は沈んだはずなのに赤い顔が目に映った。
固まってる。
そりゃそうだ。いきなり恋人だって言われたらそうなるに決まってる。
「………ほ、ほんとうなの?」
「ほんまやで。これ見て。」
持ってきた紙袋からアルバムを取り出す。
適当なページで開く。
おにぎりを握るシャオロンの写真。
いい年して木登りをしてはしゃぐシャオロンの写真。
ハロウィンだと言ってナースのコスプレをさせられた挙句、シャオロンに爆笑された写真。
めくるたびにでてくる二人の思い出。
「ッッッ…これ、全部俺らの…」
「せやで」
ぺら、ぺら
街灯が落とす一つの光の下。
二人の男がアルバムをめくる。
奇妙な光景である。
そして、シャオロンが一つの写真に目を留める。
「ッッッ…これ、ここじゃん」
夕陽を眺めるシャオロンの写真。
逆光で変わらない儚さがある。
僕はさっきの光景を写真と重ね合わせていた。
髪が少し長くなったな。
とか、
1年前とファッションの好みが変わったな。
とか。
懐かしさに目を細める。
すると、右手の手の甲に冷たい滴が落ちる。
ぽたり、ぽたり
静かに滴が手の甲に落ち、滑っていく。
僕の右の手の薬指のレモンクォーツは変わらない光を放っている。
そして、その手はシャオロンの冷たい手に覆われた。
ターコイズの青い宝石が、レモンクォーツの黄色い宝石に重なる。
僕の手はシャオロンの目元に手繰り寄せられた。
「ッッッ………ぐす、だいッせんせ、ッ」
「シャオちゃん??」
「大先生ィッッッ!!!!」
「うぎゃぁッ!?!?」
「大先生ッ……大先生!!!!」
思いっきりハグされて、息がし辛い。
けれど、そんなこと今はどうでもいい。
このシャオちゃんの暖かさに触れていたかった。
「大先生、思い出したッッッ!!!!お前のこと、おれェ!!!!思い出したよッッッ!!!!!」
「うん。思い出せたね、シャオちゃん」
肩が涙で滲む感覚がする。
かわいい。
肩にある頭を撫でてやる。
やっぱり、シャオちゃんはずっと変わらない。
時刻は8時。
流石に寒くなってきた。
目元を赤く腫らした男と、安堵の表情に包まれる男が家に入る音が響く。
一人はまだ泣いているようだ。
静かに鼻をすする音がする。
「シャオちゃん!!見てこの写真!!!めっちゃ懐かしいで」
「んー………あああああ!!!お前が俺にオレンジジュースこぼしたときの!!!」
「それは言わんでもええねんッ!!!」
「うわ、大先生これ懐いで」
「うわわ、映画の後やん。これ、シャオロン号泣やってんな」
「大先生やってエンドロールで泣いてたやろ」
「泣いてへんわ!!!」
帰宅後、こんな会話をしながらアルバムを一緒に棚に戻した。
やいのやいの言いながらの作業を僕はレンズに映した。
そして、
ぱしゃり
シャッターを切った。
「あ!!今利き顔じゃなかったからやり直しや!!!」
「ハァ??こちとら不意打ち狙っとんねん!!!やり直しは認めませぇーーーん」
「なんやと!?!?」
こんな日常が好きだ。
こんなシャオロンがどうしようもなく好きだ。
シャオロンがどうしようもなく好きな僕が好きだ。
シャオロンのいる人生が好きだ。
次の日。
シャオロンがついてきて欲しいというので、二人で外に出た。
行き先はやはりあの公園だった。
今日もやはり夕陽が沈みかけている。
「じゃっじゃーーーん!!!これ、俺からの誕生日プレゼントな!!ちょっと早いけど!!!」
そう言って僕に渡したのはネックレス。
真ん中の宝石は、青だけでもなく、黄色だけでもない。
混ざりそうで混ざらない。
均衡がとれている宝石。
絵の具が透明な水の中に溶けていって、それが透明な部分をなくすようにじわじわと滲んでいくような。
そんな宝石。
嬉しさでニヤケが止まらない。
「お揃いやねん。これ着けてあげるから、しゃがんで」
そう言って手をちょいちょいと僕の頭に乗っけてきたので、しゃがんでやる。
耳元でネックレスの金属と、リングの金属がかちゃかちゃと擦れる音がする。
「はい、着けた!!どうや?よう見せて!!」
顔を見なくてもワクワク表情をしているのがよくわかる。
「!!!!!」
ぱあああってSEつくだろこれ……!!!
シャオロンちゃんは夕陽よりもこの世の何よりも輝く笑顔を見せてくれる。
「僕にもシャオちゃんに着けさせて!!」
そう言ってシャオちゃんが僕にしたように、手をちょいちょいと頭に乗っけた。
夕陽を反射する宝石をキラキラと光らせるネックレスをシャオロンの細い首にかけてやる。
手元でネックレスの金属とリングの金属がかちゃかちゃと擦れる感覚がする。
「…はい!!よう見せてシャオちゃん。」
ガバッと立ち上がって、シャオちゃんは満面の笑みで僕を見る。
ネックレスの宝石よりも、シャオちゃんの笑顔に視線がいく。
やっぱり好きだ。
何よりも好きだ。
「シャオロン」
夕陽が沈んでいくのを背中で感じながら、夕陽に赤く照らされるシャオロンの名前を呼ぶ。
そして、
跪く。
「…ッッ!!!!???」
シャオロンはびっくりした表情で僕を見る。
目が見開かれ、瞳に夕陽がよく映る。
そして瞳を輝かせる。
「僕はもう、これから一生シャオロンを手放すつもりはないです。
もしシャオロンが僕を忘れた時には、どんな事をしてでも、必ず思い出させる。
そして、その前にシャオロンの記憶から消えない人物になる。」
「シャオロンの居ない人生なんて考えられないくらい、僕の人生はとっくに黄色で彩られてるんだ。」
「好きです。ずっと。
これまでも。これから先も。
この世の何よりも。1番愛してる。」
「…シャオロン。僕の隣で一緒に人生を歩んでくれませんか?」
夕陽のせいもあるのか、顔が尋常じゃない赤さで大粒の涙を零す恋人の右手をとり、薬指のターコイズを外す。
そして、左手をとり、薬指にはめる。
そのまま手にとった左手のターコイズが光る手の甲に唇を近づけ、音を立てる。
顔を上げると、涙でぐちゃぐちゃのずびずびの恋人の顔があった。
「……シャオロン、返事は?」
「ッ……ずび、そんなん、『はい』以外ないやろ、ばかぁッ……!!」
きゅっとする胸の痛みが心地いい。
一人じゃ拭いきれないほどの恋人の涙を僕も拭ってあげる。
そして
「顔、よく見せて」
黄色い潤んだ瞳に大きな夕陽が似合う、世界一の恋人。
いや、
奥さん。
人生のパートナーの輪郭を両手で優しく包む。
「ふッ、ぐす…ッ」
「だいせんせ、俺にもやらせて」
そう言って、シャオロンは大泣きしたあと特有の呼吸をしながら、
僕の右手を取って、薬指からレモンクォーツを取り、左手の薬指にはめた。
「くひひ、笑」
そう笑って、シャオロンは僕と向き合い、左手を絡めた。
互いの色が光る宝石、そしてネックレスが夕陽に輝かされてよく見える。
ぱしゃり
夕陽が沈む前にシャッターを切る。
泣き腫らした二人の男のツーショット。
少し前と違うのは、ネックレス、表情…
そして、リングの位置。
もうすぐ夕陽が沈む。
宝石の意味
ターコイズ →私を忘れないで
レモンクォーツ→明るい未来
指輪の位置の意味
右手薬指→恋人同士を表す
左手薬指→結婚や婚約の象徴
長いことここまで読んでくださってありがとうございました(土下座)
これ、下書きが去年の4/30で止まってて、本日最後まで書いたものなので、だいぶ違いというか、話がそれてるかもしれないというか、最初に描いていた結末と違うかもしれないというか……()
まぁそういうことなので、最初にも書きましたが、ご不明点あればどうぞ遠慮なくコメントにお願いします(迫真)
コメント
4件
なんで形容したら良いんでしょうかこの…素晴らしい物語…。 美しいというか、儚いというか…これからも続く彼らの人生に目一杯の祝福を送りたくなりました。善いコ彡ケをありがとうございます😭
コメント失礼します! タイトルを見て、「shoさんがutさんのことを、忘れてしまう物語なのかな?」 と、思っていました。 物語を読ませて頂いて、こんな言葉だけじゃ片付けられない程、胸がぎゅっと締め付けられてしまう物語でした✨ ※返信欄に続きます