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北斗が最期のライブをしたいと言ってから、1週間が経った
手術のおかげで北斗の症状は落ち着いており、俺たちも毎日北斗に顔を見せていた
ただ…
「なんか、日に日に聞こえにくくなってる気がするんだよね…」
北斗の耳の限界は近そうだった
俺たちの呼び掛けにも、最近は答えられなくなってきている
もしかしたらライブは…
「イヤモニを調整できないのかな?」
高地が、そう口にした
そうか、そういう手があったんだ
俺は、悪い方向にしか考えることができていなかった
まだまだだ。そう思った
樹の提案でライブは2週間後に決まり、着々と準備は進んでいた
北斗は病院から許可が降りず、ダンスや歌の練習はあまりできなかった
5人で練習をしても、俺たちが互いに笑い合う事はなかった
北斗がいなければ何も成り立たない
俺は思わず俯いた
「慎太郎?どうしたの?」
きょもが俺の顔を心配そうに見つめた
「いや…5人で練習しても、北斗がいなきゃ意味なくない?どうきかできねぇのかよ!」
俺は、はっとした…
気づくと本音を言ってしまっていた
やってしまった…そう思いながらゆっくり顔を上げると、他の4人は寂しそうに眉を下げていた
「仕方ない…北斗がライブで輝ける為に、俺たちは今練習してるんだろ。」
「ちょっとでも北斗が笑えるように」
「頑張ろう!慎太郎」
「5人で北斗を全力サポートしよ!」
気がつくと涙が溢れていた
俺たちが頑張る事で、北斗も頑張ることができるんだ!
前を向かなければならない…俺が下を向いてても、何も始まらないんだ
「みんな…ありがとう」
「当たり前っしょ。支え合ってこ。」
久しぶりに、心から笑え
プルルルルップルルルルッ
「誰の電話?」
「あ…俺だ 」
そう樹がスマホをとって数秒後、呆然とした声が聞こえた
「北斗が…え、ええ。はい。今すぐ行きます」
「北斗が…倒れたって」
え…北斗が倒れた?
皆で支えあってって、言ってたのに…笑い合って…上手くいってきたのに
俺は再び苦い顔になった
俺たちは、急いで病院へと向かった
北斗は、難聴からのめまいで倒れたと医者は言った
もう意識は戻っていたが、気持ち悪そうに呼吸を荒くしている
俺は、黙って北斗の背中をさすった
翌日、北斗の体調は良くなっていた
医者から数時間だけの外出許可も貰うことができ、みんなで練習スタジオへ行った
北斗は少ししんどそうにしていたが、音楽のボリュームを大きめにすると、少しは聞こえていたようだった
ライブは北斗の体調も考え、30分とした
曲を披露する時間は15分程度、俺たちにとってはどうということないが、北斗は本当に大丈夫なのかを俺たちは思い始めていた