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「ドワーフの声なのだ! 何なのだ?」
「イスティさま、小娘も成長を遂げたのです?」
「いいや、ルティだけは魔石にも触れてない。それよりも声のする方に急ぐぞ!」
食料の調達でルティは別行動をさせていた。疲れ果てからのヒールで回復した彼女であれば多少の厄介ごとに巻き込まれても問題は起きないはずだと思っていたが、どうやら考えが甘かったようだ。
「あー!? 買ったばかりのわたしの樽を! どこへ持って行くつもりなんですか~? 駄目ですよっ!! これからそれを使って作るんですから! は、離してくださいっっ!!」
ルティはこれまで持っていた樽の代わりとして新たな樽を購入。錬金術にも使えることから樽を傍に置いていたが、何者かによって奪われた。
そして、
おれたちはルティの声がする所についた。彼女の後ろ姿までは確認出来たが、何かを必死に追いかけているように見える。
また何か面倒なことに巻き込まれたか?
それとも作ってしまったかのどちらかだな。だが、みすみす見捨てるわけにはいかない。空の色が青空から暗闇の境目に差し掛かろうとしている。どうやら闇と隣接していたようだ。
「イスティさま、ここから先は闇の町になりますの。踏み込むと戦うことになりますわ」
「フィーサはここのことを知っていたんだな?」
「神族にもいけ好かない相手はいますもの。小娘を追うんですの?」
「仕方ないことだがあいつを放っておけないからな」
「わたくしがあなたさまの剣となりますわ!」
そう言うとフィーサはいつもの姿に戻った。剣の姿に変わりおれの手元に収まっている。
「アック、シーニャはいつでも行けるのだ!」
途切れの無い家屋も闇との境界に近づく。そこでは朽ち果ての家屋が目立つようになってきた。空からの陽射しも薄れ、辺りが徐々に暗くなりつつある。
シーニャを闇化させた奴をどうするか。これは正直言って迷っていた。しかし結局ルティの騒動が起こったことで闇の町に進むことに。恐らく厄介な敵であることは間違いない。
この国に来た時点でそうなることは決まっていたのかもしれないからだ。
空が完全に闇となっている所に差し掛かる。おれたちはすでに侵入者扱いとして認識されているらしく、衛兵が数人ほど見えた。横一列に壁を作り、立ち入らせまいと待ち構えている。衛兵は全て青銅の装備に身を包み、それぞれで異なる武器を手にしているようだ。
「ウニャ! 人間がたくさんいるのだ!! アック、どうするのだ?」
「構わない。シーニャ、思い知らせてやれ!」
「分かったのだ!」
「外界よりの侵入者ども、抵抗せずに止まれ!! さもなくば――」
複数の衛兵が怒涛のように襲い掛かって来ようとしている。
だが、
「フウーウゥゥ……!!」
衛兵が言葉を発したと同時くらいにシーニャの攻撃が衛兵たちを捉えていた。真新しい爪は衛兵の装備を通過し、肉体へ直にダメージを通らせる。
「ぎゃぁっ!」「んぐぁぁ!?」と、一瞬何が起きたか分からないままに呻き声が上がり、シーニャの攻撃で衛兵たちはひるんでその場を呆然とさせた。
「ウニャッ! 突破したのだ!」
「よし、このまま突入するぞ!」
シーニャの強さが格段に上がっている。衛兵程度では敵なしといったところだ。しかし正直なところ、ここまで事を大きくするつもりは無かった。
だがルティの行方が気になるし、何より闇の相手が戦いを望んでいるのは明白だと判断した――とすれば、遠慮なく倒して行くことになるのは違いない。
「イスティさま! この先は広場に出るなの。多方向から魔法が来ることが予想されるの! どうするなの?」
「問題ない。突っ込んで集中攻撃を受ける! フィーサはその中で、吸収出来そうな属性があったら自分の力としておいてくれ!」
「はいなの!」
「シーニャは、おれの傍に!」
「ウニャッ!」
フィーサは剣の姿ではいつもの口調だ。両手剣としての強さはさほど変わっていないように思えるが、以前よりも軽量になった感じに思える。
そもそもここはフィーサの生まれた国だ。彼女自身も本領を発揮しやすいかもしれない。
「イスティさま! 魔法反応!!」