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フィーサの反応よりも先に、おれはいくつかの気配を感じた。さすが闇に属するだけあってか、魔法を放とうとする気配の他に複数の魔族が紛れているようだ。
――とはいえ、ここは間違いなく神族の国。ここだけ別の支配エリアになっていることは考えにくい。
「イスティさまっ! 魔法防御を!!」
「――おっと」
魔物の気配よりも今は魔法攻撃に集中しなければ。
屋根もしくは、建物の上から来る属性は氷と風。地上から向けられる属性は土と炎のようだ。フィーサの言う魔法防御では単純にガードをするだけで防ぎきれるものではない。
複数の属性が混ざり合った状態の魔法は、普通であればそう簡単に対処出来ないだろう。控えている魔物の気配を探れば炎を吐き出す火竜も控えている。普通ではない耐性を得ているおれはこれを存分に味わうことが可能だ。
「イスティさま、氷!」
「《バーニングシールド》を展開! 氷を融解して消失させる」
「土、風、炎、いっぺんに向かって来るなの!!」
「問題ない」
おれはあらゆる魔法の属性に対応が可能だ。全てを消し消滅させられる魔法もすでに習得済みではあるが、これを発動させるとフィーサが弾かれてしまう。衝撃によって魔物とおれとで、相対的な時間の流れが狂う可能性が生じる。
選んだのは重力魔法だ。重力であれば、あらゆる事象をも強引につぶすことが可能になる。
「《エンド・グラヴィティ》を発動だ!」
周辺一帯に、闇よりも色濃い漆黒の渦が顕現する。そして否応なしに全ての敵を巻き込んでいく――。
「ウニャニャニャ!? 頭が圧し潰されそうなのだ……ウゥゥ……」
「シーニャ、おれから離れずくっつけ!」
「フニャウゥ」
実際に試すのは初めてのことだ。この魔法は、かつて仲間だったバーヴァルに教わった重力魔法。もっとも彼女からは基本的な発動方法しか教わっていない。この威力にまで押し上がったのは炎と風の印を得られてからだ。
「イスティさま。辺りが無に包まれているなの。一体どうやって……」
「いちいち属性ごと相手にするよりも手っ取り早く終わるからね。反則技みたいなものだ」
「そ、それでも、こんな魔法にまで仕上げたのは、イスティさまの強さによるものなの! これは自慢していいレベルなのなの!!」
「そ、そうかな」
「フニャウゥ……頭が痛くなったのだ~」
思った以上にシーニャへの負担が大きかった。重力魔法は、敵味方問わず肉体への負担が伴いやすい。シーニャには少しきつすぎたか。
「ガグゥルルルル……!!」
「ひ、ひぃっ!? イスティさま、火竜が控えていたなの!! 魔法じゃないものが吐き出されるなの」
「心配いらない。魔法じゃなくても、炎なら属性で消せる」
「ひゃうぅぅっ!!」
「熱いのだ、熱すぎるのだ~!」
間を置かず、火竜は炎を吐き出していた。これは耐性を試すいい機会。シーニャとフィーサには少しの間、水の壁を覆わせることにした。
「こ、これは!?」
「ウニャッ!?」
「二人とも、そこで大人しく待っているんだぞ?」
「イスティさま!?」
こういう機会はあまりない。人間相手ではなく、限られた場所にしか存在しない相手だ。いい機会だと言わんばかりに、おれは魔法では無い炎をまともに浴びてみることにした。運が悪ければどこかに火傷を負う危険性もある。だが今までまともに戦闘出来てないこともあり、まずは無謀な賭けに出てみた。
火竜から吐き出された炎は狙いを定めたというよりは、目に見える範囲全てを焼き尽くすつもりがあるようだ。
ゴウッ、とした滅却の炎がおれを含めた一帯を焼き焦がす。
肝心の耐火スキルは、
【アック・イスティ 耐火スキル+431 限界値】
元がどれくらいのスキル値だったかは覚えていない。上空の火竜は大したことが無いらしい――とはいえ、ラーナを潜在としたアクアトラウザーがほんのり赤くなっている。
若干の汗が流れ始めた。この時点でおれの耐火スキルは、火竜の炎よりもやや劣るということに気付く。しかしスキルの上限値に変化が見られないのは明らかなので、フィーサを使って火竜を切り崩すことにする。
「フィーサブロス!!」
水の壁で守られていたフィーサはおれの求めに応じ、すぐに手元に収まった。打ち直されたフィーサの斬れ味はどの程度なのかソードスキルを開放して、接近を試みることにした。