テラーノベル
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※結構長いです。
午後七時。
仕事を終えた康二は、待ち合わせ場所のカフェへ向かっていた。
今日は、久しぶりに翔太とゆっくり過ごせる日。
付き合い始めてから数年。
忙しい日々の中でも、二人はこうして時間を作ってきた。
それでも、会える日は何度だって特別だった。
カフェのドアを開けると、窓際の席に翔が座っていた。
帽子を取った彼が、康二を見つけて笑う。
「康二!」
「翔太ー!」
近づくと、翔太はうれしそうに目を細めた。
「遅かったね?」
「まだ約束の時間やん!」
「うん。でも、早く会いたかったから」
「……っ、そういうこと急に言わんといて!」
「なんで? 本当のことなのに」
翔太は楽しそうに笑った。
康二は恥ずかしくなって、向かいの席に座ろうとする。
すると翔太が、隣の席をぽんぽんと叩いた。
「こっち」
「え?」
「隣、空いてるよ?」
「いや、向かいでええやん笑」
「やだ。今日は隣がいい」
あまりにも自然に言うものだから、こまりは何も言い返せなくなった。
結局、翔太の隣に座る。
すると彼は満足そうに笑った。
「よし」
「……子どもか!」
「康二の隣が好きなだけですー」
「もう!!笑」
そんなやり取りさえ、愛おしかった。
コーヒーを飲みながら、二人は最近の出来事を話した。
仕事のこと。
おいしかったご飯のこと。
次の休みに行きたい場所のこと。
そして、話題は自然と、二人が初めて出会った日のことになった。
「覚えてる? 康二、最初めっちゃ敬語だったよね」
「やめてや! あのときは翔太が有名人やったんやから!」
「今も有名人ですけど?」
「それはそうやけど!!笑」
翔太が声を上げて笑う。
「あとさ、関西弁」
「……何?」
「今も好き」
康二はコーヒーカップを持ったまま、固まった。
「……何年経っても、それ言うん?」
「うん。何年経っても好きだから」
「……っ」
「ほら、また照れた」
「翔太が照れさせてるんやろ!!」
「かわいいなあ、ほんと」
「もー!!」
康二は顔を隠した。
翔はそんな康二を見て、ふっと優しい表情になった。
「……でも、本当に不思議だね」
「何が?」
「初めて会ったときは、こんな未来があるなんて思ってなかった」
康二は、静かにうなずいた。
「……俺も」
「でも今、こうして隣にいられる」
翔太は、テーブルの下で康二の手をそっと握った。
「俺、すごく幸せだよ」
康二は翔太の手を握り返した。
「……俺もやで」
カフェを出る頃には、街はすっかり夜になっていた。
二人は少し遠回りをして、静かな道を歩いた。
「今日、楽しかったな」
翔太が言う。
「うん。もっと一緒におりたいくらい」
康二は何気なく答えた。
すると、翔太がぴたりと足を止めた。
「……え?」
「ん?」
「今、もっと一緒にいたいって言った?」
「言ったけど……?」
翔太は、にやっと笑った。
「じゃあ、もうちょっと一緒にいようよ」
「……ええの?」
「俺がそうしたいんだけど」
康二は、思わず笑った。
「……ほんま、甘えん坊になったなあ」
「康二限定です」
「はいはい笑」
「……ねえ、康二」
「ん?」
翔太は少しだけ真面目な顔になった。
「手、もうちょっと強く握っていい?」
康二は驚いて、彼を見上げた。
それから、ぎゅっと握り返す。
「……これでええ?」
「うん」
翔太はうれしそうに笑った。
「大正解」
しばらく歩いたあと、翔太がふと口を開いた。
「康二」
「んー?」
「これからのこと、考えたりする?」
「これから?」
「うん。何年後とか、もっと先とか」
康二は少し考えた。
「……するよ」
「どんなこと?」
「翔太と、いろんなとこ行きたいなって。おいしいもん食べたり、旅行したり。普通のカップルみたいに、何でもない休日を過ごしたり」
そこで、少し笑った。
「あと、翔太が忙しいときは、ちゃんと応援したい」
翔太は黙って聞いていた。
「でもな、たまには俺のことも構ってほしいで?笑」
「……ふはっ!」
翔太が吹き出した。
「そこ、ちゃんと言うんだ?笑」
「大事やろ!!」
「うん。めっちゃ大事」
翔太は笑いながら、康二の手を握り直した。
そして、ゆっくりと言った。
「俺も、同じこと考えてた」
「……ほんま?」
「うん」
翔太は康二を見つめた。
「仕事も大切。応援してくれる人たちも大切。だけど、これから先の人生を考えたとき、康二が隣にいてくれたらいいなって思う」
康二の目が、少しずつ潤んでいく。
「昔はさ、康二と普通に会えるだけで、すごくうれしかった」
「……うん」
「会いたくても会えない日があって、連絡するのも我慢して。康二を不安にさせたこともあったよね」
翔太は、少し申し訳なさそうに笑った。
「でも、あの頃も今も、変わってないことがひとつあるんだ」
「……何?」
「俺、康二のことが大好き」
康二の目から、涙がこぼれた。
「……もう、ほんまに……」
「えっ、泣いちゃった?」
「泣くやろ、そんなん……!」
翔太は慌てたあと、優しく笑った。
「……おいで」
が康二近づくと、翔太はそっと抱きしめた。
久しぶりに会えた日のような、ほっとする温かさ。
康二は彼の肩に顔を寄せた。
「……翔太」
「ん?」
「俺も、大好き」
「うん」
「ずっと、一緒におりたい」
翔太は、康二を抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。
「……うん。これからも、ずっと」
しばらくして、二人はゆっくりと離れた。
康二が涙をぬぐうと、翔太は少し照れくさそうに笑った。
「……ねえ」
「何?」
「キスしてもいい?」
康二は一瞬、目を丸くした。
それから、顔を赤くしてうなずく。
「……ええよ」
翔太は、康二の顔を確かめるように見つめてから、そっと唇を重ねた。
ほんの短い、優しいキス。
離れたあと、二人はしばらく見つめ合った。
翔太が、照れたように笑う。
「……やばい」
「何が?笑」
「何年経っても、康二とこうすると緊張する」
「……うそやん!」
「ほんとだって!」
康二は笑いながら、翔太の肩を軽く叩いた。
「……俺も、ちょっと緊張した」
「……え、かわいすぎない?」
「もう!! それ禁止!!」
「無理です」
「なんでやねん!笑」
二人で笑う。
そして翔太は、もう一度康二を見つめた。
「……もう一回、いい?」
康二は恥ずかしそうに笑って、うなずいた。
今度は、康二からそっと近づいた。
もう一度、優しいキスを交わす。
離れたあと、翔太は幸せそうに目を細めた。
「……好き」
康二も笑った。
「……俺も、好きやで」
帰り道。
二人は、また手をつないで歩き始めた。
昔は、隣を歩くだけでも周りの目を気にしていた。
会える時間が短いことに、寂しくなる日もあった。
それでも、二人は少しずつ、自分たちなりの幸せを見つけてきた。
完璧じゃなくてもいい。
毎日一緒にいられなくてもいい。
大切なのは、何度でも相手と向き合うこと。
「ねえ、康二」
「ん?」
「また、あのカフェ行くね」
「……もちろん」
康二は笑った。
「いつでも待ってるで」
翔太も笑った。
「うん。俺、あそこが大好きだから」
「コーヒーがおいしいから?」
「それもあるけど」
翔太は、つないだ手を少しだけ握り直した。
「康二に出会った場所だから」
康二は、また少し泣きそうになった。
「……ほんま、ずるいわ」
「何が?笑」
「そういうとこ!」
翔太は楽しそうに笑った。
夜の街に、二人の笑い声が溶けていく。
その先に、どんな未来が待っているのかは、まだわからない。
けれど。
これから先も、きっと何度だって思い出す。
初めて出会った日のこと。
初めて好きだと伝えた日のこと。
離れそうになって、それでも一緒にいることを選んだ日のこと。
そして、何年経っても変わらない気持ちのこと。
「これからも、ずっと隣にいてね」
その言葉を胸に、二人は同じ未来へと歩いていった。
――『カフェでのひととき』 完。
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はんぎょ
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