少しこのお話変えさせてもらいました💦
ただ新一くんのいじめられてる設定を無くしただけなので、そこの部分以外は変わりません。
設定があやふやになりそう、と言う方はもう一度見てもらっても構いません!!
それではどうぞ!!
「ねーね、新一」
「ん?なに、快斗?」
いつも通り、快斗と学校へ登校している時だった。それを聞かれたのは。
「新一は好きな人いるの?」
「……」
突然のことで少々戸惑ってしまった。まさか快斗に恋バナを振られるとは思ってもいなかったし、答え方に迷う。
そう、俺には好きな人がいるからだ。
ここは嘘を吐くべきなのか…でも今までそばにいてくれた快斗に好きな人がいるということも言えないのはなんだか申し訳ない。でもやっぱり引かれるかもしれない。そう決めて、快斗には嘘を吐いた。好きな人はいない、と。
「そっかぁ…」
「でもお前が恋バナなんて珍しいな」
「まぁ恋バナっていうか、新一も年頃だし好きな人いんのかなーって思っただけだよ」
「ふーん…」
まさか、俺の想い相手がバレているのかと焦ったけれど、理由を聞いて安心した。
よくよく考えれば快斗は思いつきで行動するタイプだし、そう言うパターンもあるよな、と思った。
俺はキザでかっこつけ、でもそこがカッコよくて、紳士なアイツに恋心を抱いている。
アイツに初めて会ったのはあの時だ。
「新一、今日先帰るね…ごめん」
「そっか、…ってなんでそんな顔してんだよ」
快斗はすごく残念そうな顔をしながら俺に先に帰ると報告しにきた。なんだかいつもの元気なオーラが今ではしぼんでいるようだ。
「だって、新一と一緒に帰れないんだよ!?!?新一が下校中にどっかの野次馬に取られでもしたら、俺、生きていけないよ…」
「や、やじうま…?まぁでもそれだけ大事な用事があるんだろ…?」
「うん………新一、知らない人に声かけられたら無視して絶対俺に連絡するんだよ!?無理矢理連れ去られそうになったらそいつのこと蹴り飛ばしていいから!!分かった!?」
「え、あ、あぁ…てか、んなことわかってるよ、母さんみたいなこと言うなっつーの…俺はもう高校生だってのに…」
「あぁ…ごめん新一、でも本当に気をつけてね…」
「ああ、そんじゃあな」
快斗の過保護さには時々嫌になる。心配してくれたのだろうけれど、高校生に向かってあんなこと言うだろうか。
まぁでも、過保護な幼馴染だけども快斗は大切な親友だしあまり悪く言いたくはない。
でも最近の快斗は忙しいのだろうか。帰りのホームルームが終わるとあんな感じで俺に帰ると伝えてはパッパと早足で帰って行ってしまう。
まぁ快斗のことだし、マジック関係のもので予定があるのだろう。
そう考え、俺は快斗と歩くいつもの通学路で今日は一人で歩いて家に帰り、家に着いてから自分の部屋のベッドにぽふん、と体を横にする。
そこでなんとなくスマホでニュースを見ていると、最近話題になっているらしい怪盗キッドという文面が目に入った。
「怪盗キッド…」
何故だろう。初めて知ったものなのに俄然と興味が湧いてくる。その興味は調べていけば調べていくほどより一層増していく。不思議な気持ちだ。
どうやら怪盗キッドというのは、20年ほど前から活動している神出鬼没な泥棒のことを指しているらしい。ある期間ぱったりと音沙汰が途絶えたものの、最近になってまたあの怪盗キッドが出没したらしい。
泥棒である故、警察には目の敵にされている人物だけど、世間ではキッド様なんて呼ばれてるくらいの人気者らしい。
「…20年も前っつったら、今はまぁまぁ歳いってるよなぁ…40代くらいか?」
怪盗キッドは宝石を盗む泥棒だけど、奪っては返してを続けているとも書いてあった。
何か、金以外の目的があってそのような奇妙なことをしているのだろうか。
そして、怪盗キッドは宝石を盗む際、当日前から予告状、所謂キッドカードというものを出すらしい。
その予告状がつい先日に出されたということがネットニュースに流れていたのだ。
月が満ちる土曜の夜、
零時の鐘と共に
天高き時計をいただきに参上する
怪盗キッド
どうやら今回奪うというのは時計の針らしい。
あそこの時計台は快斗との思い出の場所でもある。キッドなんかに盗まれるわけにはいかない。
「場所はあそこの時計台だよな、そして予告時間は今日の夜中の12時…行ってみるか…!」
探偵心をくすぐる、その怪盗キッドっていう泥棒をどうしても一眼見ておきたいとも思い、今すぐ目暮警部に連絡をする。
怪盗キッドを捕まえるのは捜査二課であって、捜査一課ではないのだが、いきなり捜査二課に連絡したところでただのいたずらか何かだと思われてしまう。
目暮警部がいる捜査一課が担当している事件は何度も俺が手を貸して解決してきたのだ。何かあった時のために目立つのは避けたかったので、名前は伏せていたのだけれど。
自分で言うのもあれだが、高校生探偵、平成のシャーロックホームズなんて一部の人たちには讃えられていて鼻が高い。
それに、以前、警部に捜査一課のヘリに乗せてくれと約束をしたのだ。
このヘリに乗せてもらって怪盗キッドを追えば捕まえるのも楽勝だ。お手並み拝見というのもしたいし。
俺より頭の切れる人物なんて快斗ぐらいだろうし。そう簡単には逃げられないだろう。
*
「目暮警部、もうキッドは時計台の中にいると思われます」
「え、そ、そうなのかね…?」
予定通り、ヘリに乗り込むことができた。捜査二課の中森警部には電話越しに怒鳴り散らされてしまったけれど。
怪盗キッドを捕まえる計画は順調に進んだ。やはり世間から讃えられている怪盗なだけあって、あっという間に姿を消したり、持ち前の頭の良さとマジックを利用して完璧に宝石を盗むと書いてあったあの記事やニュースを思い出し冷や汗を垂らしたこともあった。
でも今のところは順調なのだ。このままいけば本当に怪盗キッドを捕まえられるかもしれない。
そう思っていた時だった。
少し妙な異変に気づいたのだ。
ある隊員が東側の階段で警官に変装していたキッドが変装を解いたとの報告が入った時だ。
「…妙ですね、警官が密集する空間でキッドが変装を解いた…?」
「工藤くん?何かおかしな点でもあったのかね?」
「…ええ」
そう呟いた瞬間、時計台の鐘の音が大きく鳴り響く。予告の時間だ。
「…あの隊員は途中から入れ替わっていたのかも…」
鐘の音が鳴り止んだ、その途端にピンク色の煙幕のようなものが時計台付近から吹き出した。目暮警部も声を荒げて驚いている。
「やはりあれはフェイクか…怪盗キッド…」
しばらくしてガスが消えると時計台の針は丸ごと消えた。
いや、キッドが消えたように見せかけたのだろう。
ヘリを移動させてもらい別方向から見ればすぐにわかった。文字盤が揺れているのだ。
「…すいません、もう少しヘリを時計台に近づけてください」
ヘリが近くに行くことで風が吹く。
キッドファン大勢含めたギャラリーたちもこれで気づいただろう。完全にこの文字盤が揺れてなびいていることに。
「どういうことだね!工藤くん!!」
「煙幕と共に文字盤のライトを切り、前もって仕掛けていたであろう巨大スクリーンで文字盤を覆ってから、文字盤の針が消える映像を工事中の足場に取り付けていた映写機で照らしたんでしょう…」
「で、でも、そんなトリックすぐバレるだろう…?」
「ええ、そのトリックは…フェイク……おそらく彼はスクリーンの裏側にいるでしょうから」
「す、スクリーンの裏側?」
「ええ、あ、ちょっとお借りしますよ!」
警部の胸ポケットからヒョイっと拳銃を取り、文字盤の端を狙い定め…
「く、工藤くん!?」
的確に打つ。
「さぁ、マジックショーの終演だ!!」
もうこれでキッドも逃れられないはず。怪盗キッドのフィナーレを迎えようではないか。
「座長の姿を拝見するとしましょうか…!」
また狙いを定めて…的確に…
打ったその瞬間、スクリーンと共に人混みの中へと落ち、怪盗キッドはそのままハンググライダーでこの場から飛んでゆく。
「…!!…今すぐキッドを追ってください!!」
急ぎでヘリがキッドを追う。今飛んでいるキッドがダミーという線も一理あったが、その可能性はないと見た。ハンググライダーにはプロペラがついていない。つまり自身でハンググライダーを操作しているということだ。
「怪盗キッド…なかなかやるじゃねえか…」
自分の頭脳をも上回るその怪盗がどんな奴なのか、後ろ姿だけではなく、はっきりとこの目であの純白の衣装に包まれた姿を見てみたいと思ってしまう。
「…?でも何故キッドはハンググライダーを使ったんでしょうね…あそこで降りて持ち前のマジックで観客に紛れ込めばこんな追いかけられる羽目にはならなかったはず…だからといって偽物という線はないし…」
「キッドも焦っていてついついハンググライダーを出してしまったとかじゃあないのかね?」
「頭脳明晰の彼ならそんなことはしないと思いますけど…」
「そ、そうなのかね……あ!!く、工藤くん!!!あそこのビルの屋上に怪盗キッドが降り立ったぞ!!!!」
「…分かりました。あ、そうだ、このヘリ、パラシュートとかはありますか?」
「えっ、まぁ一応あるが…ってまさか君だけパラシュートで降りようなんて言わないだろうね!?!?」
「そのまさかですよ、あと、このヘリ以外は退散してもらうよう、中森警部にお願いします。隊員やヘリに紛れ込まれるという手を打ちたいのでね」
「工藤くん………分かった。君のことだから何か策があるのだろう?ただ風の抵抗もあるから十分に気をつけるんだ」
「ええ、では、」
そう言い残し、俺はこのヘリから飛び立った。
月明かりの元で、ようやく怪盗キッドをこの目で見れる。そう思うと何故だかワクワクした。
ただの泥棒のはずなのに。
怪盗キッドの顔はよく見えない、帽子のつばで見えないというのもあるし、キッド自信が下を俯いているようなのだ。キッドも俺の顔は見えていないはずだ。
「…お前が怪盗キッドか」
「ええ、そうです。あなたが裏で中森警部らに助言していたジョーカーですね」
「…ああ」
俺が呟いたあと、不敵な笑みを浮かべゆっくりとこちらを向く、と同時に何故か驚いたような顔ぶりを見せた。
「し、しんいっ!?!?」
「…?どうした?」
「あ、いや、失礼…知り合いの顔によく似ていたもので…」
「…そうか、」
怪盗キッドの姿をはっきりと見て少し驚いたことがある。
キッドの年齢は40代か、それ以上あるのかと思っていたが、
30代…いや、20代……いやもっと…
変装をしている可能性もあるため、わからないがキッドは相当若いんだと思う。多分俺と同じくらいの歳だろうか。
「そういえばしんい…名探偵…私が作った暗号は解いていただけましたか?」
「あ、暗号…?そういえば文字盤の一番中心のとこ、何か書いてあったような…」
「おや笑、中森警部はこんな頭の切れる名探偵にあの暗号を見せていないとはね…では私から直接、この暗号をプレゼントするといたしましょうか」
そう言い終えたあと、キッドはどこから出したのかひょいっと俺の手元にその暗号の写真を渡す。
渡された暗号をまじまじと見る。
少し考えたあと、ようやく分かったのだ、本当のキッドの目的が。
「…!!…なるほどな、通りで……最初からお前は時計を盗む気なんてなかったのか…」
「ええ、ご名答。さすがしんい……めいたんてい……」
「で、でもなんでだよ…お前はただのコソ泥じゃねえか!!時計台なんか守ってる余裕あんのかよ…」
「ええ、自信がありましたから。それに、この時計台にはたくさんの人の思い入れがあるようですしね…なんなら私もその…いえ、なんでもありません」
「はっ笑、とんでもない泥棒がいたもんだな」
「名探偵、私は泥棒じゃありません」
純白の衣装に包まれた神出鬼没な怪盗が、こちらに目を合わせると、不敵な笑みを浮かべこう言う。
『私は怪盗ですから』
どきっ、
確信は出来なかった、でも心臓が痛んで、やっぱり恋に落ちたんだ。
「…最後に聞きたいことがある、キッド…」
「…なんでしょう」
「お前は何故あそこでハンググライダーを使った、使わなかったらこんな追われる羽目にはならなかっただろ…」
「では私もお聞きしましょうか、名探偵、何故捜査一課に協力しているあなたが私を捕まえにきたのですか…?」
「そ、そりゃあ、時計台をお前に盗られないために来たに決まってるだろ!今はもうその心配もないけど…」
「本当にそれだけですか?」
思いあたれば怪盗キッドの名を聞いた時から、キッドに惚れていたのだろうか。一目惚れ…?ではないけどそんな感じだった。
でもこんなこと本人に言えるはずがない。怪盗キッドは皆んなの紳士であり、皆んなから愛される存在。怪盗でありつつもアイドル的な存在なのだ。
でもキッドに本当にそれだけか、と言われると言いそうになってしまう。あぁ、なんなんだ本当に。
「何かに迷われているようでしたら、私から先に答えましょうか。何故私があそこでハンググライダーを使ったのか」
そう言った後数秒の沈黙が続いた。
俺がゴクリと息を呑んだあと、キッドが口を開く。
「あなたに会いたかったんです、名探偵」
「……へ、?」
告げられたことはあまりにも意外で間抜けな声が出てしまった。それと同時に心臓がバクバクと高鳴っていく。
「今回はいつものように一筋縄ではいかなかった。それはあなたの助言のおかげです、名探偵。こんなに頭の切れるジョーカーはどんな人なのかと気になったまでですよ」
「そっ、そう言うことか…てっきりあっちの意味なのかと」
「あっちの意味というのは…?」
「いや、なんでもない…」
そう、てっきりああいう意味なのかと一瞬勘違いを引き起こしてしまった。もしかしたらキッドも俺のことが好きなのかと…俺はなんてことを考えてるんだ。そんなわけないのに。
「それで、名探偵…あなたの答えも聞きたいのですが。あなたは何故私をこんなにまで追い回してくれるのか」
そして今度は俺の番なのだとまた息を呑む。そしてゆっくりと口を開く。
「俺は、…俺も!お前と同じ!!かも…お前に会いたかった、お前のことを見てみたかったんだ、」
「嬉しいことを言ってくれる笑、私と同じような意図で来てくれたとは」
と言った途端に、俺の左手の甲に小さくキスをする。やばい、もう何もかも爆発してしまいそうだ。
「!?…な、なんだよ急に、」
「いえいえ、特に深い意味はありませんからお気になさらず。ではそろそろこの場からおさらばするとしましょうか。名探偵の可愛らしいお顔も十分拝見することができましたしね…」
「…今回は見逃してやる」
「それは有り難い、ではお言葉に甘えて……さようなら、名探偵、またお会いしましょう」
「またって…そんなの約束できねぇよ…」
「いえ、きっとすぐ会えます、私はあなたのことをずっと前から見守っているのですから…」
*
「おはよう、新一くん」
「……」
「…あれ、新一くん?」
「…あ、おはよう零さん、」
今日は昨日のこともあってまだポーッとしてる。キッドにキスされた時なんか(手の甲に)嬉し過ぎてあのまま死んでしまうかと思ったし。
「うん、おはよう、ボーッとしてみるみたいだけど、何かあったのかな」
「えっと…なんかあったって言えばあったのかも…零さん、怪盗キッドって知ってる?」
「……怪盗キッド、知ってるよ」
「!し、知ってんのか…!実は昨日キッドと会ったんだ!そ、その時にな、「僕は怪盗キッドをあまり好まないよ、彼はただの泥棒だろう」
「…そうなんだ」
零さんは怪盗キッドのことをあまりよく思ってないらしい。まあそう思う人もいるのかなとは思っていたけれど、零さんがそういう考え方をするなんて。
今日教室に行ったら快斗にも聞いてみようかな。
あの時から、今までずっとキッドに想いを寄せている。でもひとつだけ気になる謎が残されている。
初めてキッドと会った時、キッドは俺のことを見守っているなんて言っていた、一体何故あんなことを言ったのだろうか。
まぁ、どんな答えにせよ、キッドが作る暗号はどんなにあろうとも解いてみせる。
そう、あの時決心したのだから。
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