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杏
17
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💜「……こさめ?」
聞き覚えのある声だった。
忘れられるはずがない。
五年経っても。
どれだけ離れても。
ゆっくり振り返る。
そして。
🩵「……いるまくん」
目が合った。
一瞬で。
止まっていた時間が動き出してしまう。
💜「本当に……こさめ?」
🩵「久しぶりだね」
💜「……」
💜「お前」
💜「どこ行ってたんだよ」
🩵「色々」
💜「色々って……」
🩵「変わらないね」
💜「は?」
🩵「昔からそう」
🩵「すぐ聞くもん」
💜「当たり前だろ」
💜「急に消えたんだから」
胸が痛んだ。
何も言い返せない。
言う資格もない。
だって。
こさは自分で消えたのだから。
沈黙が落ちる。
気まずい空気を壊したのは――
👦「ままーーー!」
聞き慣れた声だった。
思わず振り返る。
👦「おまたせー!」
👦「みてみて!」
👦「ふうせんもらった!」
🩵「ふふっ」
🩵「ちゃんとありがとう言えた?」
👦「いえた!」
👦「えらい?」
🩵「えらいよ」
そう言って頭を撫でる。
すると。
紫苑が不思議そうな顔をした。
👦「まま?」
👦「そのひとだーれ?」
💜「……」
💜「子供?」
🩵「……」
👦「おともだち?」
🩵「違うよ」
👦「じゃあだれ?」
答えられない。
答えたくない。
まだ。
今は。
👦「あっ!」
紫苑が声を上げた。
嫌な予感がした。
👦「しってる!」
🩵「!」
💜「え?」
👦「そのひとしってる!」
👦「おうちにいる!」
血の気が引いた。
👦「しゃしん!」
👦「ままがだいじにしてるやつ!」
🩵「紫苑……」
👦「ねぇ」
👦「まま」
👦「そのひとって」
やめて。
お願いだから。
今は。
まだ。
👦「ぱぱ?」
世界が止まった。
💜「……え?」
👦「あれ?」
👦「ちがうの?」
💜「ぱぱ……?」
💜「何言って……」
🩵「紫苑」
👦「?」
🩵「帰ろう」
👦「え?」
🩵「行こ」
👦「う、うん……」
紫苑の手を握る。
そのまま歩き出そうとした。
だけど。
💜「待て」
足が止まる。
💜「こさめ」
💜「今のどういう意味だ」
振り返らない。
振り返ったら。
きっと。
また期待してしまうから。
💜「おい」
💜「こさめ!」
💜「答えろよ!」
目を閉じる。
そして小さく笑った。
🩵「久しぶりに会ったのに」
🩵「変わらないね」
💜「……」
🩵「じゃあね」
👦「ばいばーい!」
💜「おい!!」
💜「こさめ!!」
後ろから声が聞こえる。
だけど。
こさは振り返らなかった。
振り返れなかった。
五年前。
自分で手放した恋だったから。
コメント
1件
**はる。** ああ、もう、これ……読んでて胸がギュッてなったわ。5年ぶりの再会であの沈黙と距離感、そして紫苑くんの「ぱぱ?」。タイミングえぐすぎるでしょ。こさめが振り返らずに笑って去るところ、あれが「守ってる」って感じでせつない。いるまくんの「答えろよ」も必死で…続き、気になりすぎる🔥