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5年前。
春。
空は綺麗に晴れていた。
大学の入学式。
新しい生活の始まりの日。
なのに。
🩵「……早く来すぎちゃった」
待ち合わせの三十分前。
こさは大学の正門前に立っていた。
昔からそうだ。
大事な日は早く着いてしまう。
遅刻するよりはいい。
だけど。
今日は少し違った。
理由は簡単。
今日から大学生になるから。
そして。
いるまくんと同じ大学だから。
🩵「えへへ……」
思わず笑みが零れる。
高校三年生の夏。
進路の話になった時だった。
💜『俺この大学受ける』
❤️『え、俺もそこ考えてた』
🩷『俺も受けようかな〜』
🩵『こさも!』
そんな軽い会話から始まった。
もちろん勉強は頑張った。
だけど。
四人とも合格した時は本当に嬉しかった。
これからも一緒にいられる。
そう思ったから。
🩵「……」
胸が少しだけ温かくなる。
その時だった。
💜「おい、こさ」
聞き慣れた声。
振り返る。
🩵「いるまくん!」
自然と笑顔になる。
💜「早ぇよ」
🩵「いるまくんも早いじゃん」
💜「俺は十分前」
🩵「こさは三十分前!」
💜「馬鹿だろ」
🩵「ひどい!」
昔から変わらないやり取り。
安心する。
💜「ちゃんと来れたんだな」
🩵「来れたもん」
💜「迷わなかったか?」
🩵「迷ってない」
💜「絶対迷った」
🩵「迷ってない!」
💜「顔見れば分かる」
🩵「むぅ……」
図星だった。
最寄り駅で一回迷った。
でも。
それは言わない。
💜「やっぱりな」
🩵「なんで分かるのぉ……」
💜「お前だから」
当たり前みたいに言う。
その言葉に。
少しだけ胸が高鳴った。
昔からそうだ。
いるまくんは特別扱いしている自覚がない。
だけど。
こさにとっては。
そういう何気ない言葉が嬉しかった。
❤️「朝から仲良しだな」
🩷「ほんとそれ」
二人の声が聞こえた。
🩵「なっちゃん!らんくん!」
🩷「おはよ〜」
❤️「待たせた?」
💜「別に」
🩷「入学式初日から二人の世界だったぞ」
💜「は?」
🩵「?」
❤️「無自覚怖ぇ〜」
💜「何がだよ」
🩷「何でもないでーす」
四人で笑う。
高校時代から変わらない空気。
一緒に帰って。
一緒に遊んで。
一緒に勉強して。
気付けば当たり前になっていた。
❤️「クラス見に行くか」
💜「そうだな」
掲示板の方へ向かう。
人が多い。
思った以上に多い。
🩵「わっ」
人にぶつかりそうになる。
その瞬間。
💜「危ねぇ」
腕を引かれた。
🩵「!」
気付けば。
いるまくんのすぐ隣。
💜「前見ろ」
🩵「……うん」
近い。
近すぎる。
心臓がうるさい。
❤️「ほらな」
🩷「ほらな」
💜「だから何なんだよ」
❤️「別に〜」
🩷「ね〜?」
二人が笑う。
意味が分からない。
でも。
こさには別の意味で余裕がなかった。
好きな人に触れられた。
それだけで。
頭がいっぱいだったから。
掲示板の前に着く。
❤️「お、あった」
🩷「どれどれ」
💜「あったか?」
🩵「あ!」
思わず声が出た。
🩵「いるまくん!」
💜「ん?」
🩵「同じクラス!」
💜「マジ?」
❤️「うわ」
🩷「また一緒かよ」
❤️「腐れ縁だな」
💜「今さらだろ」
💜「な、こさ」
🩵「うん!」
嬉しかった。
本当に。
すごく嬉しかった。
大学に入っても。
いるまくんが隣にいる。
その事実だけで。
十分幸せだった。
🩷「俺となつも同じだ」
❤️「奇跡じゃね?」
🩵「みんな一緒だ!」
💜「うるせぇ」
そう言いながら。
少しだけ笑っていた。
その顔を見るだけで。
胸が苦しくなる。
優しいところ。
笑った顔。
声。
仕草。
昔から何も変わらない。
だから。
好きになった。
ずっと前から。
気付いた時にはもう遅かった。
この恋は。
幼馴染のままではいられなくなる恋だった。
だけど。
伝えるつもりはない。
この関係が壊れる方が怖かったから。
四人で歩き出す。
桜が風に舞う。
きっと。
これからも。
こんな日々が続くのだと思っていた。
🩵(こさね)
🩵(いるまくんのこと)
🩵(好きなんだ)
コメント
1件
読み終えました〜!🌸 ああ、もう、冒頭の「早く来すぎちゃった」からこさの性格がにじみ出ててかわいい…。いるまくんとの「早ぇよ」「こさは三十分前!」のやり取りとか、全然変わらない安心感がすごく伝わってきました。それに、人にぶつかりそうになった瞬間に腕を引いて「危ねぇ」って言うシーン、心臓がうるさいって描写が本当にリアルで、こさの気持ちに一緒にドキドキしました。最後の「こさね、いるまくんのこと、好きなんだ」っていう自己確認、それだけでこのエピソードがぎゅっと締まって素敵でした。続きが気になります〜!
杏
17
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