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#探偵
橘靖竜
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視聴覚室は、校舎の端にある。 使われることがほとんどないせいで、昼間でも薄暗かった。
扉を開けると、古い機械の匂いがする。
榊はすでに来ていた。
カーテンを閉め切った部屋で、一人だけ椅子に座っている。
「……ほんとに来た」
「お前が呼んだんだろ」
「来ないかと思った」
「だからそのセリフ何なんだよ」
榊は少し笑って、机の上にノートパソコンを置いた。
「これ」
画面には動画ファイル。
タイトルも何もない。
「去年の文化祭準備の日に撮られたやつ」
「誰が?」
「知らない」
「怖」
冗談っぽく言ったつもりだった。
でも声が引きつっていた。
榊は動画を再生する。
荒い画質。
手ブレ。
夜の校舎だった。
誰かが隠し撮りみたいに歩いている。
遠くで笑い声がする。
『おい、やめろって』
『はは、逃げんなよ』
男子生徒たちの声。
画面が揺れる。
階段。
屋上へ続く扉。
そこで、映像が止まりかけた。
誰かが映った。
フェンスの近く。
制服姿の男子。
俯いていて顔は見えない。
「……これ、水野?」
「多分」
榊の声は静かだった。
動画の中で、撮影者が近づく。
『おーい』
その瞬間。
別の声が入った。
『……やめろって言ってんだろ』
全身が凍った。
その声。
俺だった。
「っ、」
椅子が大きな音を立てる。
「これ……」
呼吸がうまくできない。
「なんで俺……」
「まだある」
榊は動画を止めなかった。
画面の奥で、誰かが言い争っている。
でも風の音でよく聞こえない。
『お前のせいだろ』
『知らねえよ』
『見てたくせに』
ノイズ混じりの声。
その直後。
ガタン、と大きな音。
映像が激しく揺れる。
悲鳴。
そして、
画面の端に、一瞬だけ俺が映った。
青ざめた顔で。
何もせず立っていた。
動画が終わる。
部屋が静まり返った。
「……俺」
喉が震える。
「何してたんだよ」
榊は答えなかった。
代わりに、ゆっくり俺を見る。
「思い出した?」
その目が怖かった。
責めてるわけじゃない。
怒ってるわけでもない。
もっと別の、
“ずっと待ってた”みたいな目だった。