【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
小児科医青×天才外科医桃
麻酔科医赤さん
小児科の看護師水さん
集中治療医黒さん
のお話です
青視点
こんな仕事をしていたら思うように休みが取れないことは当たり前だし、予想外の事態が発生することも日常茶飯事だと理解している。
仕事が長引くことや、急な呼び出しだって頻繁に起こりうる。
だから別に何を恨むわけでもないし、そんなことで拗ねる気にもならない。
だけど少し浮き足立っていたところに、冷水をぶっかけられたような気分に陥るのは否めない。
なんといってもこの前まで互いに多忙を極めていたし、つい先日のないこの誕生日もろくに祝ってやれなかった。
それを挽回したくて何とかもぎとった休暇と宿の予約だったから、残念な気持ちにはなるに決まっている。
「…あー…どうすっかな…」
これから準備を終えて手術が始まったとして、終わるまで何時間かかるか分からない。
オペにこそ予想外の出来事はつきものなんだから。
宿の予約もキャンセルできれば一番いいのだろうけれど、なんといってももう「当日」だ。
キャンセル料がかかることは仕方がない。
だけど、予約の時に「夜何時に着けるか分からない」と言ったところ、夕食の時間にかなりの融通を利かせてくれたサービス精神旺盛な旅館に申し訳ない。
仕事を片付けてからそんな思いでぐるぐると思考を巡らせていた時、ふと私用のスマホが鳴った。
…ないこからのメッセージだ。
開くとたった一言だけが届いている。
『ごめん』
連絡はいいよ、って言ったのに。
術前準備をしながら急いでこの一言だけでも打ったのかと思うと胸が痛い。
いいよ、別にお前のせいじゃない。
そう胸の内で改めて思えば、自然と答えは出た気がした。
「まぁ…一人でも行くしかないよな」
親身に部屋や料理の相談に乗ってくれた旅館スタッフのことを思えば、ドタキャンはやはり避けたい。
それに何より、いつもないこがいるあの家に一人で帰ることの方が、今日は精神的にきつそうだ。
そう思って、鞄と車のキーを手に自分の執務室を後にした。
「あれ、いふくん今帰り?」
駐車場へ向かう途中、ほとけに遭遇した。
あいつも仕事を終えたところらしく私服に着替えている。
「今日もうちょっと早く上がってるはずじゃなかった? 確かないちゃんと温泉……あ」
言いながら、思い当たったことがあるらしい。
少し気まずそうに口を噤んだほとけは取り繕うように一度咳払いをした。
「まぁ…残念だったよね。しょうがないよね緊急オペは」
「情報早いな」
「まぁね」
ふふん、と少しだけ得意げに笑う。
「で、旅館キャンセルしたの?」
「いや、行ってくる」
「え!?一人で!?」
「しゃあないやん。せっかくの予約もったいないし、2人分うまい飯食ったろうと思って」
そう言った俺を、ほとけはあんぐりと口を開けて呆けたように見上げていた。
だけどすぐに何かを思いついたように、その瞳がきらりと光る。
水色が愉悦に満ちたように見えた。
「いふくん、荷物とか取りに一旦帰るの?」
急に変えられたように感じた話の矛先に、俺は瞬きを繰り返しながらも首を振る。
「いや、ないことそのまま行けるようにって荷物もう車に積んであるから」
「じゃあそのまま直行できるんだ。……ふーん」
にやりと笑ったほとけが再びこちらを振り返った。
「よし、じゃあ行こう!今からその旅館!」
「…は?」
「僕何も持って来てないから途中でコンビニ寄ってね。パンツとか買わなきゃ」
「はぁぁ!?」
「はいさっさと歩く!運転よろしくね」
ぐいぐいと背中を押されて体を駐車場の方へと方向転換させられる。
「おい…!」なんて抗議の声は、ほとけの前では何の意味も為さなかった。
「そもそもさぁ、いふくんはもうちょっと感情を表に出しなよ。ないちゃんと温泉行けなくなって残念なんでしょ? 本当は拗ねたいでしょ?」
「仕事やからしゃあないやろ」
ウィンカーの音がかちかちと鳴る。
その規則的な音が今日はやけに耳についた。
車内に流れるBGMとテンポが揃うわけもないところすら気に入らない。
「しょうがなくても怒ればいいのに。僕は怒ってるよ? 今日はせっかく仕事の後ご飯食べに行こうって約束してたのに…!」
誰と、とは聞かなかった。聞かなくても分かるからだ。
無意味な問いは飲み込み、ハンドルに寄りかかるようにして目の前の長すぎる赤信号を見上げる。
「怒ってもしゃあないやん。それとも何?急変した患者さんに文句でも言いたいわけ?」
「患者さんは悪くないよ。緊急オペが悪いわけでもないよ。ただ楽しみにしていたことがなくなったっていう事実に拗ねてるだけなの僕は。誰かのせいにしたいんじゃなくて、自分の境遇に拗ねてるだけ」
…何が違うん、と言いかけてやめた。
ほとけの言いたいことも分からないわけではなかったからだ。
ただそうやってほとけのように感情を出して、自分の思いをうまく発散させることはできない。
つまらない大人になってしまったな、とは自分でも思う。
「最近さぁ…すごく忙しいみたいで、ろくに会えてなかったわけよ」
シートベルトを指先で弄りながら、ほとけは助手席でそう言って唇を尖らせる。
相槌も打たずに続く言葉を待っていると、長かった信号が青に変わった。
それを確認して再びアクセルペダルに足を乗せる。
「だから久々に一緒にゆっくりできるはずだったんだけどなー…。やっぱりこういうときさ、いふくんたちが羨ましくなるよ。もっと早く一緒に暮らしておけば良かった」
そうしたら忙しくても家で一緒にいられるのにね。
そう付け足してほとけは苦笑いを浮かべた。
右に切ったハンドルに合わせるように、車体が傾く。
そうしてそのハンドルを元に戻して右折を終える頃には、耳障りだったウィンカーの音がようやく消えた。
「…そうでもないかも」
ぽつりと呟くと、ほとけが「え?」と小さく問い返すのが聞こえてくる。
どんなに仕事が忙しくても、一緒に住んでいれば確かに頻繁に顔を合わせることはできる。
だけどそれは、ほとけが言うようにいいことばかりではない。
今日みたいに、一緒にいたかったのにそれが叶わず家に帰った時、きっと余計に思い知る。
一緒にいられるはずの時間がなくなったことで、2人で住む家に自分1人の状況は広く寂しく感じてしまう。
そんな感情は、きっと一緒に暮らしてさえいなければ抱かなくて済むものだ。
それを全部説明するのも面倒だ。
なんといっても自分の感情を表現するのは苦手だから。
それが分かっているせいか、ほとけもそれ以上はその話題を突っ込んでくることもなかった。
俺が黙り込んだせいで、一瞬で空気を読んだらしい。
「そう言えばさぁ」と、最近看護師仲間から仕入れたという院内の笑える噂話なんてものをろくな前触れもなく始める。
俺もそれに合わせるようにして、そのくだらない話にただ声を立てて笑い返した。
(続)
コメント
4件
ごめんの一言が一番心に来ちゃいますね… 一緒に暮らすのも暮らさないのも不満に思ってしまうことがあるのかもですね…😣 一緒に着いてくのが水さんなりの優しさがあって好きです…😽💕
悲しいよなぁ、、、。 青さんとか水さんの気持ちもわかるし 桃さんとかも楽しみにしてたんだろうから悲しいよね😢 こういう言葉にはし難い気持ちが 凄い出てきますよね。 恋愛も医者も難しいですね。 あと関係ないけど医者について凄い知ってて尊敬です。医者の子供でも全然知らなかった…。 どうしようもないしょうがない事だからこそ悲しいですよね💔 だからこそ青桃2人には幸せになって欲しいです