木村先生が出て行った後、私はボイスフレンズのデバイス画面を表示させるために声を出す。
「Hi, ボイスフレンズ。設定画面を開いて」
【Yes】
ボイスフレンズの返答とともにデバイス一覧が表示される。
・iエアコン SFK-002
・T2スピーカー KOK-117
・お父さん MFBー782 停止中
・お母さん MFBー491
:
:
あれ?
デバイスの一覧が追加されている。
・お父さん MFBー782 停止中
・お母さん MFBー491
:
:
・木村先生 FBQー905
・三井看護師 IHPー491
えっ、木村先生ってさっきまでいたお医者様、……ってことは、三井看護師ってお母さんと一緒にいた人?
なんだか、急に背筋が寒くなる思いだ。
でも、まだ偶然かもしれない。
私はそう思いながら、父を見る。
もし私の考えが正しかった場合、私があるフレーズを言えば父は戻る。
でも確認してその”もし”が正しかった場合、私の世界は一体どうなっているのか、一気に疑念が吹き上がる。
全ての鍵を握っているのは、ボイスフレンズ。
聞くか、聞かないか。
聞くべきなのだろうが、とても気味が悪く恐ろしい。
私の顎から冷や汗がひたりと伝う。私は意を決して尋ねた。
「Hi, ボイスフレンズ。お父さんを……」
怖い、その先を言うのがただ、ただ怖かった。
【お父さんというデバイスをどうされますか?】
「ごめん、やっぱ今のなしで」
【今のなしが理解できませんでした】
「取り消しってこと」
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