「えっ?」
私は慌てて、デバイス画面を見る。
・お母さん MFBー491
:
:
・木村先生 FBQー905
・三井看護師 IHPー491
父の名前がない。そして目の前にいたはずの父は、跡形もなく姿を消していた。
「うそっ……、うそ、ねえ、冗談でしょ?! ねえ!」
何度みてもベッドに父はいない。
なにこれ、白昼夢でも見てるの?
私は慌てて、病室を這い出るように飛び出した。
母に会わなくては、私は病院中を一心不乱に駆け回る。
人とぶつかりそうになり、看護師さんに怒られるがそれどころではなかった。
すると1階の休憩室脇の椅子に母がいるのを見つけた。
「あの、お母さん。お父さんが…」
すると母はこちらを見て不思議そうにこう言った。
「あなた、どちら様?」
私は雷に打たれたかのような衝撃を感じた。
「うそ、ねえ。お母さんまでたちの悪い冗談言うの止めてよ」
「お母さんって、私のこと? 私独身で子どもいないんだけど……」
そう言って、母は私のことを気味悪そうにみた。
あきらかに不審者を見る目、赤の他人を見る目だ。
私はその場にいることが途端に怖くなり、病院から飛び出した。
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