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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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一ヶ月後、本店を一日だけ臨時休業にして照明設備の工事がおこなわれた。
実際に店まで足を運んで仕上がりを確認したら予想以上に良くて、店長である吉井さんを初め、ほかのスタッフも大満足だった。
「すごく良くなりましたね」
「うん、これだけで雰囲気が全然違う」
伊地知部長とふたりで天井を見上げて微笑み合う。これでディスプレイの演出の幅が相当広がりそうな気がした。
「続きは明日会社で。私、今日はこのあと用事があるの」
腕時計で時間を確認しながらそわそわする彼女を見て、私は瞬時にうなずいた。時刻はもう十九時を過ぎている。
「私も写真だけ撮ったらすぐに帰ります」
吉井店長は倉庫で商品の確認をすると言っていたから、私も仕事が済んだら声をかけて今日は直帰しよう。
「本当にごめんね。お先に」
「いえいえ。お疲れ様でした」
おじぎをして伊地知部長を見送ったあと、天井に設置されたライトの写真をアングルを変えて何枚か撮った。
マネキンへの照明の当たり方を確認しつつ、その写真も撮っておこうとスマホを構えていると、裏手からガチャンという音がして心臓が跳ね上がる。
今のは従業員通用口の扉が閉まる音だ。店長が事務所に戻ったのかもしれないと思ったが、実際にやって来たのは予想外の人物だった。
「あ、いたんだ」
「社長! お疲れ様です」
スリムな黒系のスーツに身を包んだ社長が事務所の奥から店内に姿を現した。
今日社長が来るとは聞いていなかったので、私は瞬間的にパニックになりながらもていねいに頭を下げる。
「お疲れ様。ひとり?」
「はい。伊地知部長はつい先ほど帰られました。……社長もおひとりですか?」
「ああ。車で通りかかったら店内に明かりがついてるのが見えたから気になって」
照明の工事が今日だと社長はきちんと把握していて、気にかけてくれていたのだ。偶然通りかかったわけではないと思う。
「これか。なるほど、良くなったな。伊地知さんから君ががんばってくれてると報告を受けてる」
「私ひとりの成果ではないですけど……ありがとうございます」
隣に立って天井を見上げながら感想を伝えてくれたのがうれしくて、感動で胸がジーンとしてくる。
社長から直接労いの言葉をもらえるなんて夢みたいだ。一生懸命仕事をしてきてよかった。
「でもさ、なんでそんなに仕事に夢中なの? 俺の立場でそんなふうに聞くのはおかしいけど」
否定しているわけではないと前置きしつつ社長が私に問いかけた。仕事にまい進している理由はいったいなんなのか、と。
「自分のスキルアップに繋がるので、今はどんな仕事でもがんばりたいんです」
「本当に伊地知さんみたいだな。ポジティブでいいと思う。俺は君のがんばり、ちゃんと見てるから」
社長の綺麗な笑顔を目にした途端、私の心臓が痛いくらいにキュンとした。容姿も仕草も発言も、本当になにもかもカッコいい。
「そうだ、倫治さんからなにか聞いた?」
「少しだけ。辰巳さんが……私たちのことで盛り上がっていると……」
「真剣に考えるつもりだって電話で伝えたら、えらく声が弾んでたよ」
社長が決まり悪い笑みを浮かべたのを見て、私も辰巳さんのうれしそうな表情が脳裏に浮かび、思わず苦笑いがこぼれた。
きっと社長は辰巳さんからの見合い話を断るために、その場を切り抜けようとしてそう言ったのだろう。
「断りもなく勝手なことを言ってすまない」
「いえいえ!」
社長が急に謝ってきたので、私はビックリしながら首を小刻みに横に振った。
たしかに私との交際に乗り気だと辰巳さんに伝えれば、社長は辟易としていた見合い話から解放される。
だけどあとになって辰巳さんがガッガリする姿を目にすると思うと心が痛んでくる。
「本当に怒ってない?」
「はい」
「ならよかった」
目線の高さを合わせるようにして私の表情をうかがう社長の仕草に驚いて、まごつきながら視線を下げた。
「いつもおどおどして、君は俺と目を合わせてくれないね」
「えっと……それは、私と社長では住む世界が違うので」
「一緒だよ。今こうして同じ空間にいるだろ」
コメント
1件
うわあ、社長が「一緒だよ」って言った瞬間、胸がぎゅっとなりました……! いつもおどおどしてる主人公と、そんな彼女の目をじっと見ようとする社長の距離感が、じわじわ近づいててすごくドキドキします。照明の明るさが関係性の変化を象徴してるみたいで、その書き方も好きです。次が気になります🌷