テラーノベル
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珍しく、今日は少し時間があった。
ある日の思い出、他人や 友達でもなく、 仲間 として在れたほんの1週間余り、大きく揺らぐキッカケとなった彼、他の仲間達は 今、僕らの心の中で生きている。代わりに、僕らの心の中で でしか、生きられなくなってしまった。
だからこそ、彼らの意思を僕は先に進めなければならなかった。
たった8日間でボスの座に君臨した彼は 激務に追われていた
組織の顔として公表する際の辻褄合わせは、元々のボスが情報を一切公表していなかった為、無駄な手間を取らずに済んだのは良いものの、それはそれとして 環境の変化は凄まじいもの ボスとしての風格を遵守しなくてはならない為、常に気を張っている機会が多くなり その分疲労も大きく溜まるばかりであった。
「ギャングスター、幾らなんでも 様になりすぎてんじゃあねえかな。」
今日も変わらず 書類に目を通していた所、僕の右腕である副幹部の彼に突発的な言葉を掛けられた。
最近は忙しかったから気分転換に と、スケジュール変更を促された。と 言うより、それは彼の言い分で 身勝手にもスケジュール帳を手に取ったかと思えば 文字を上から書き換えられてしまった。
「…」
僕の左腕であるフーゴもその場に居たばかりに 彼へと目配せをしては 俯いてこちらの様子を伺うばかり。 どうやら、彼も僕に休息をとって欲しい との事。
とりあえず、後でミスタにはちゃんと話をつけとかないとな などと思いつつ、観念して、ボスとしての僕を着飾る煙たいスーツを脱いだのだった。
理性で働いていた身体は自身の部屋に入るなり すっと肩の力が抜けて、猛烈な眠気が襲ってきた。思い返せば 随分と寝ていないのかもしれない。最後に寝たのは…五日前?それなら まだマシな方か。
寝るべきだ。彼らの言った通り、僕は休憩するべきだった。冷静さに欠けてしまう判断を取るには 何が不十分であるべきか、ジョルノはよく理解していた。
寝息が聞こえる
瞬き3回 呼吸がハッキリと聞こえる程に静かな部屋で天井を見つめた。
夢を見る必要も無いくらいに 深い眠りだった。又は、目を覚ましたから全て忘却してしまったのだろうか?そうだとすれば、何も残らないな。
ふと 本棚から一冊の小説を取り出した。寝起きの頭を活性化させるには これで十分だ。窓を開け、椅子に座り、流れ込む文字列を眺める。曖昧な記憶として心に響く単語は 記録された。
窓辺に飾った花瓶、生けた花、白色の透け感のあるカーテンからは外が眩しく見える。そんな中 まだ大人になれない少年は指で言葉をなぞっていた。貫禄がある雰囲気が漂う
3回 ノックが鳴った。
身構えたが続けて僕の名前を呼ぶミスタの声が聞こえたので、「入って」と許可を下した。
「入るぜ。」
「何の用ですか?君が休めと言ったのに、これじゃあ…」
「俺が居たら休めねえのかよ…」
他愛もない会話、でもそれは 僕自身をドンとしてではなく 僕として扱われている気がして、じわりと僕に滲んだ。
今は僕である。小説を置いて近付こうとしたところで机の端で腕を擦ってしまった。
小さな擦り傷、ミスタが驚いた様に僕を見る。
「何やってんだよジョルノォー!まだ 寝足りねぇんじゃあねぇのォ!?」
顔色から伺える焦りが少し面白おかしく思えてしまって 落とし込まれた痛みと反し込み上げられた笑いが場を柔らかくした。
「はははっ…!十分寝たよ。というか、ミスタ。僕が寝ている間も、何度か部屋に立ち寄ったでしょ?」
傷付いた僕の腕を不器用ながら硝子細工を扱う様に触れていた彼の目線が図星を突かれた様に僕を見上げてはピシャリと止まる。
「気付いてたのかよ…」
「勿論。立場上 用心無しには寝れないから。だから君も、僕がキッチリ寝た事くらい分かってるはずだ。 」
照れくさそうにしていたので 恥じる事じゃないよ と付け足せば そこまで見透かしてんじゃねぇよ… と小声で文句を垂れた
彼らの心配を埋める代わりに G・Eで腕の擦り傷を埋めた。慣れて良いものか、それでも…もっと痛いものを経験していたんだ。今はこれくらい生温いくらいが良い。スタンド能力のお陰か、そのほか 何処にも傷は見当たらない。作り物の様に透き通った肌が目の前で動く様は現実味に欠けるものだった。
「聞いて、ミスタ。」
「ん?」
「僕のスタンド能力じゃあ、心の傷は埋められないんだ。だから、以前治療した時 君が痛いと思えるのも必然的で、表面上だけなんだ。でもさ 僕、今治療した時 痛くなかった。これは 慣れだと思う?」
「…さあな正直複雑に考えんのは俺の性に合わねーからさ。でも、それって 良い様に捉えて 良いワケ?」
「それはどうかな。でも僕はこう考えた。それは 今君が僕の心の傷を埋めてくれたから」
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