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太智 side
楽屋の前で立ち止まっていた仁人の顔を見た瞬間に何かあったんだろうなということはすぐに分かった。
目の周りは赤く、表情も暗い。勇斗と何かあったのだろうかと思ったが、その予想は当たっていたみたいだ。
2人が喧嘩をするなんて珍しい。一体何で喧嘩したのだろうか。
気にはなったが喧嘩の内容を深く聞いて、仁人が泣いてしまっても困る。仁人がせっかく昨日目を冷やして赤みを最小限にしたというのに、さらに赤くさせてしまう。
とりあえず喧嘩の内容は深く聞かずに、何かあったら言えよ、とだけ伝えた。
楽屋の雰囲気はいつもとは違い、暗かった。まず、仁人と勇斗が話さないことが異常なのだ。仁人は気まずそうに暗い顔をしているし、勇斗は怒っている訳ではなさそうだがずっと怖い顔をしている。
さすがに舜太も柔太朗も異変に気づいているみたいで、舜太が仁人に話しかけに行ったようだ。仁人のことは舜太に任せよう。舜太の雰囲気が今の仁人に1番適していると思ったから。
撮影が始まり、俺と勇斗と柔太朗の3人は仁人と舜太の2人の撮影をイスに座りながら見ていた。
仁人と舜太の距離近いなー。今日のカメラマンはやたらと仁人と舜太をくっつけて撮影したいみたいだ。顔も鼻くらいならもうくっついてるんじゃないかって距離だな。
ぼーっと2人の撮影を見ていると隣からベキベキッという音がした。何の音だと隣を見ると、その音は勇斗がペットボトルを握り潰した音だったということが分かった。勇斗の手の中にあるペットボトルが潰れている。
勇斗はその潰れたペットボトルを持ったまま、険しい顔で仁人と舜太の撮影を見ていた。
勇斗の手はまだ力が込められており、もう既に潰れているペットボトルは更に潰れてしまいそうだった。
そんな顔するなら、はやく仲直りすればいいのに。
ちゃんと話し合いができる2人なんだから、早く話し合って、いつもの仲良い2人に戻ってくれ。
「勇ちゃん、顔怖いよ」
「………あ、ごめん……」
柔太朗に指摘されて、勇斗は素直に謝る。
「………何があったんか知らないけど、俺は早く仲良しな2人が見たいな」
柔太朗は勇斗も仁人も責めるわけではなく、優しくそう言った。
「うん……ごめん」
「はやく2人で話し合いなよ」
柔太朗は優しく微笑みながらそう言った。勇斗はそれを見て少し表情が柔らかくなる。柔太朗の凄いところはこういう所だよな、と感心する。
「………太智」
「ん?」
「仁人、何か言ってた?」
勇斗が潰れたペットボトルを握りしめながら、俺にそう聞いてきた。
「………それは、仁人本人に聞きや」
仁人の気持ちを他人の口から聞くんじゃなくて、ちゃんと本人の口から聞きや。
そう言うと、勇斗は難しい顔をしながらも小さく頷いた。
コメント
1件
うわ、仁人と勇斗が喧嘩……これは珍しい。太智sideだからこそ、楽屋の異様な空気感がひしひしと伝わってきました。特に勇斗がペットボトルを握り潰すシーン、あれはすごく衝撃的でしたね。嫉妬なのか焦りなのか、複雑な感情が一瞬で伝わってくる描写で「おおっ」となりました。柔太朗の優しい指摘も効いてるし、太智の「本人に聞きや」の距離感も良い。このバンドの関係性がじわじわ見えてくるのが楽しいです。次、どうなっちゃうんだろう……!