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康二side
「向井康二くん。」
学校からの帰り道、めちゃキレイな人に声を掛けられた。紺のスーツで深緑のネクタイを締めていた。その人は何かを俺の前に差し出した。
「?」
それを覗くと、両親が写っていた。
「な、に…これ?」
「あのね、康二くんのご両親がウチからお金を借りてるんだけど期日までに返せなくなちゃったんだ。」
「え、借金?」
「そう。会社倒産しちゃったんだって。」
「倒産…。」
血の気が引いていくのが分かった。
「大丈夫、顔色悪いよ?」
「だ、大丈夫ですっ。」
本当は立ってるのも辛い。会社の業績がそんなに悪かったなんて思わなかった。
「康二くんはあと少しで高校卒業でしょ?それまでは待つからさ、卒業したらウチで働いてね。」
「で、でも大学…。」
「え、行きたいの?」
「……。」
この状況じゃ行けるわけないか。諦めるしかない。写真もっと極めたかったな…。
「うーん。じゃあ、平日は学校に行ってもいいよ。単位が取れる様に働いて貰うから。あ、学費はご両親払えないだろうから出してあげる。」
「そんなん借金増えてまうからええわ…。」
はぁ。最悪や。
「大丈夫。これはサービス。俺のポケットマネーで出してあげるよ。」
「拒否出来ひんの?」
「働くのは拒否出来ないよ。でも絶対に嫌って言うならご両親の負担が増えるだけ。それでもよければ。」
両親を盾に取るなんて卑劣な奴やな。
「あと、お兄さんにも連絡はしてある。」
「……分かったわ。」
「ありがとう。ご両親にはちゃんと働き口見つけて計画的にお金を返せる様にしてるから安心して。従業員の皆さんも同じ。お兄さんはもう働いてたから、そこから負担のない様に少しずつ払って貰う様にしたよ。」
……なんか手回しよくない?まるで初めから計画してたみたいや。気のせいかな?
「よろしくね。康二くん。」
「……名前聞いてへん。」
「ああ。ごめんね。俺は深澤辰哉。」
「深澤さんか。よろしく。」
「家は返済に回っちゃったんだよね。だから今日から俺の家で過ごしてもらうから。」
「は?」
「ちょっと遠くなっちゃうから学校は毎日途中まで送ってあげる。」
「あのっ!」
「ん?何?」
「二人は無事なん!!」
「もちろん無事だよ。今までの生活は出来ないから管理してるアパートに引越してもらっただけ。」
「あ、会えるん…?」
「会えるよ。今はご両親も精神的に大変だと思うから落ち着いたら会いに行こうね。」
「よかったぁ…。」
「じゃあ帰ろっか。」
「声聞きたい!」
「……いいよ。今までの携帯は解約したから新しい二人の番号はこれ。」
「……もしもし!!……はぁ無事でよかった。俺は大丈夫やから。うん…、大変やったな。ごめん知らなくて。……え?急やったん?でも無事なら……。うんっ落ち着いたら会いたい!!毎日電話するし!うんじゃあ。」
「安心した?」
「……おん。行こか。」
「車パーキングに停めてあるからこっち。」
「うわっ!?」
「おっと大丈夫?」
何だか足に力が入らなくて、深澤さんに抱きとめられた。
「……グズッ、グズッ。」
「泣かないでよ。」
「やってぇ…二人に会えへんの…グズッ、寂しい。」
「困ったなぁ。分かった!じゃあ今から二人のとこに連れてくよ。ね、そうしよ?」
「おん…グズッ。」
「歩ける?」
「ちょ…っと待って……。」
「いいよ。待つからさ。」
何か疲れてもうた……。