この作品はいかがでしたか?
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それは、友達と居酒屋で飲んでいたときのことだった。
「ねえ、真理、聞いてよ。こないだの肝試し、めっちゃ怖かったんだから」
そう言って美奈は、私が仕事で参加できなかったときの肝試しの話を始めた。
「何があったの?」
私は、ビールを飲みながら聞いた。
「ほら、あの有名な心霊スポットあるじゃん? あそこに行ったんだけどさ…………途中で雨が降ってきて、雷まで鳴り出して…………」
「ああ、あの日か。天気悪かったね。心霊スポットって、確か廃病院だったよね?」
「そうそう。なんか雰囲気出まくりっていうか……私達が行ったときはもう夜だったんだけど、病院の入り口にさ、お札が何枚も貼ってあって……そのせいかな、中に入った途端に、急に寒気がして……」
「ふーん……それで?」
「えっとね、まずは二人で院内を回ることになったんだけど、そこの病院、ナースステーションの奥にある病室が、やばいらしいんだよね。だから、最初はそこを見て回ることに決まったの」
「へぇ~、そうなんだぁ……」
「でもさ、やっぱ怖いじゃん? だから私達は、一番奥の部屋までは行かずに、手前の部屋だけで済ませようと思ったわけ。まあ、それでも十分怖いけどさ。そしたら……」
「どうしたの?」
「その部屋に入るとき、ドアに張ってあったお札を見たんだけど、それが全部剥がれかけてたんだよ! これ絶対ヤバいよ!」
美奈は顔を強ばらせている。
「うわっ、マジで!? そもそも病院にお札はってある時点で、普通じゃないよね」
「そうなのよ! そこで何枚か写真撮ったんだけど、見てみる?」
「見る見る!!」
美奈がスマホを操作して見せてくれた画像には、端っこの方の壁から、小さな女の子が覗いていた。
「なにこの子?」
「それ、その部屋の霊だよ。だって夜の廃病院だよ。町からそこそこ離れているし、そんな小さな女の子が、そんな時間に居るわけないじゃん」
「……あれ? でもこの子、どこかで見たことあるような……」
「えー?……怖いこと言わないでよぉ」
別に美奈を怖がらせようとしたわけではなく、本当にその子をどこかで見たことがある気がしたのだ。もっとも写真は写りが悪く、昼間明るいところで見たら、実は壁の染みでした、と言われてもおかしくないようなものだったので、単なる気のせいだと思おうとしたんだけど……
「あっ!!」
思い出してしまった。
「ど、どうかした?」
美奈は不安げに私の顔を見ている。
「ごめん、なんでもない。続けて」
私は平静を装った。でも、間違いない。この顔は、里桜ちゃんだ。昔、一緒に遊んでいた頃の、あの無邪気な笑顔の面影がある。だけど、どうしてこんなところにいるのだろう。何か事件に巻き込まれてしまったのだろうか。もしそうだとしたら、一刻も早く助けないと……。
「それで、それからはずっと奥の部屋を目指して歩いて行ったんだけど……途中でまた雨が強くなって……」
そこから先は、里桜ちゃんのことが気になって、美奈の話を聞いていなかった。あくまで写真の女の子が里桜ちゃんと似ているというだけで、本人だと決まったわけではない。というか、そもそも本当にここに女の子がいたのだろうか。美奈の言う通り、こんな時間、こんな場所に、小学生くらいの女の子がいるとは思えないのだが……。(続く)
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