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倉斗は幼い頃から、親族の中で「厄介者」として扱われていた。親は彼に無関心で、祖父母や叔父叔母は彼の存在を疎ましがり、事あるごとに罵倒や嫌がらせを受けた。些細なことで叱られ、理不尽な要求を押し付けられる日々。誰も助けてくれないどころか、「お前はダメな子だ」「役に立たないならいなくなれ」と言われ続けた。
最初は苦しんでいた。しかし、どれだけ反抗しても状況は変わらなかった。やがて倉斗は、違う考え方をするようになった。
「これは愛の形なんだ」
「自分がダメだから、厳しくされるのは仕方ないんだ」
と。そう思い込むことで、少しでも楽になれる気がした。むしろ、罵られたり理不尽な目に遭うたびに、
「ああ、これは俺が生きている証だ」
とすら感じるようになった。
そうして彼は、
「自分は生まれつきのドMなのだ」と信じるようになった。ただの防衛本能だったはずが、いつしかそれは本物になり、倉斗の人格の一部となった。
成長し、家を出た倉斗は、明るく爽やかな性格を手に入れた。苦しみを受け入れ、それを楽しむことで、自分の人生を肯定できるようになったのだ。そして今では、自分と同じ感覚を他人にも味わってほしいとさえ思っている。
「さあ、俺と共にバンジージャンプの様な人生を歩んで行こうぜ!」
そう笑う彼の目の奥には、過去の傷跡がかすかに滲んでいる。
…………
「後輩ちゃん。後輩ちゃんは立ち向かったり、逃げられるようになるんだぞ。耐えたって後伸ばしにしてるだけなんだから。」
「分かってますよ。先輩。あ。そうだ。先輩が逃げたくなったら私が逃げ場にでもなりましょうか?」
冗談のように笑う言う鈴に倉斗は驚いた顔していたが再び微笑んだ。
「大丈夫だよ。僕の性格を知ってるだろ?ありがとね」
その時だけはとても先輩らしかった。