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フローラと初対面を終えた後、僕とクルーガーはサロンへ集まる。
普通ならサロンは学年が変わらず予約が必要だが、今回は事前予約なしで顔パス。
申請出せば顔パスで使用できるとはさすがは宰相の息子だ。
こちらも助かるし、人の目を気にしなくて済む。
何より、フローラの突入の心配もない。
室外ではセバスさんに待機しているし安心。
ウェルはアレイシアたちについてもらっている。
リタさんがいるとはいえ、心配だからだ。
「お前退屈しねぇのな」
サロンに集まった後、今日あった事を話したのたが、開口一番に言われた言葉が鼻で笑うギルメッシュの一言だった。
事情を知っているレイルやその場にいたクルーガーは苦笑いしている。
いや、確かに僕は乙女ゲームの攻略対象という立場にあるけど、僕が呼び寄せているのではなく、何故かトラブルに巻き込まれてしまっているわけで。
「それでどうするつもりなのですか?」
「うーん……どうしよう?」
「あなたはよくトラブルを呼び寄せる……なにかしら対策をしておいても良いのでは?」
「……確かにそう思うけどこればかりは」
方法は思いつかないんだよ。
このままシナリオ通り進めるか無視するかの二択だが、どちらもしたくないのが本音だ。
シナリオを進めればアレイシアを裏切る行為になるし、無視すればシナリオのアドバンテージをなくすことになる。
今確定していることはフローラは僕やアリス同様前世持ち。
逆ハーレムを目指しているだけなのか何か別の意図があるのか不明。
「目的は何かあるのかな?……突発的な行動が多く対策のしようがないんだよ」
「……国家転覆を狙っている……もしくは国の混乱を起こそうとしていると考えるべきか?」
「……は?」
どうするべきかと相談する中、レイルの一言に思わず反応してしまう僕。
ギルメッシュとクルーガーも突然の物言いにキョトンとしていたが、レイルの言葉はある意味的を射抜いているみたいでどこか納得をしている雰囲気をしている。
確かに乙女ゲームの事情を知っている人からすれば何言ってんだよ、となるかもしれないが、事情を知らぬ者からするとそう考えるのは妥当かもしれない。
国の王太子が確約しているアドリアン。貴族派筆頭の嫡男オーラス。この二人が一人の女に誑かされているこの状況。
ーー弱みを握り実権を握ろうとしている。
ーー巧みな口術で騙し、操る。
ーー洗脳している、薬を使い正気を奪っている。
レイルの調査で陰で少数ながらそう言われているらしい。
そんな今ある事実から乙女ゲーのシナリオ以外の内容で結論を導出そうとしているのだろう。
ここで僕が取る行動は、半分肯定しつつなんとなくとぼけること。
「……そう考えるのが妥当かもしれないけどフローラが僕を狙う理由は?地位もなければ富もないし」
「ユベール伯爵家嫡男の君はソブール公爵家の婚約者。パトラス侯爵家、ウォーウルフ子爵家、ガイアス辺境伯……。権力、軍事力、財力の秀でている家と関係があり、信頼もある。君をたぶらかすことができれば少なくとも中立派の足場崩しを狙っているんだろうな」
「……なるほど」
レイルの説明を聞き、一理ある。
僕をアドリアンたち同様自分の手駒にできれば僕を経由して中立派の一角を崩せないわけでもない。
だが、僕一人をやったところで賢い3人はすぐに気づき対処されるだろうが。
「あくまで可能性があるってだけだ。もし本当に起きたら対処させてもらうがね」
「ええ、アレンさんはわかりやすいですからね」
「安心しろ、そん時は力尽くでボッコボコにして正気に戻してやるからよ。やっからよ!」
考えすぎで黙ってしまったので気を使われたらしい。
僕はあははと、優秀すぎる友人に苦笑いしてしまう。
「そりゃ随分と心強いね……怖いし、しばらくは接触しないでおくよ」
「そうするべきだろうな」
「なら、俺はそれとなく話を聞くか」
「私は伝手を使って裏市場に薬物が出回ってないか調べてみますね」
僕の友人たちは優秀なようだ。
ギルメッシュは世当たり上手。クルーガーは商家の伝手がある。
最近、この輪に僕がいていいのか大丈夫なのかと思い始めているのはここだけの話。
今日は方針を決めたあと、少し愚痴や雑談し、解散となった。
最後にレイルから
「事は慎重に進めたい。アレン、確認するが現段階では本当に何も知らないんだよな?」
「レイル疑いすぎだろ!ま、確かに気をつけろよ。フローラ嬢刺激すると権力二人に目つけられるかもな」
「いや、すでに目をつけられているのではないでしょうか?」
レイルから何度も確認された。
その言葉に二人から追撃するような一言を言われたが、レイルの一言は何か特別な意味を含めているのではと思った。
『ドクン…ドクン…ドクン』
表情からは窺えないレイルの反応。わずか普段よりも鼓動が速くなっていた。
偶然か否か……その違和感は拭えぬまま今日はお開きとなった。
片付けはジャンケンで負けたレイルが罰ゲームで残った。
残りのメンバーと寮の自室へ戻っていた。
「こっからどうする?」
「僕は部屋で……本でも読むかな」
「私は講義の予習ですかね」
「クルーガーは真面目だなぁ。メガネのやつはみんなそうかのか?」
気楽に会話を挟む。
ギルメッシュの言葉はなんとなく発した言葉だったが、クルーガーは真剣な表情となった。
「私は皆さんと違って学園の成績次第で将来が決まりますので」
「あぁ、なんかすまん。だけどレイルに散々勉強教わってたよなぁ?確かに学園の授業面倒だけどよ、そんなこん詰めない方がいいんじゃねぇか?よく見ればクマできてるぞ?」
「確かに……僕も人のこと言えた義理じゃないけど、無理しないほうがいいと思うよ?」
確かによく見ればクルーガーの目元にクマができている。
ギルメッシュはよく人を見る目がある。微妙な変化を見逃さない。
僕も言われるまで気が付かなかった。
前世で無理をしすぎて死んでしまった僕からしたらしっかりと睡眠をとってほしい。
「お気遣いありがとうございます。ですが、私は定期考査で主席を狙ってますので」
「ほーん。レイルを抑えてってことか」
「ええ。……同学年の舐めてる連中を見返したいのでね」
やる気だなぁ。
僕はそこそこでいいや、なんて思ってるし。
だが、一つだけ忠告しておくかな。
「睡眠時間を削ってもいい事はないよ。寝る時は寝る、メリハリをつけなければ倒れてしまうからね。人間体が資本だからね」
「……アレンさんが言うと妙に説得力ありますね」
「なんか貫禄あるよなぁ。悟り開いてるみたいな」
こっちは過労死経験者だからな。なんて言えるわけもなく。
もしかして僕過去思い出して虚な目をしていたのかな?
「人生2度目なんだよ。一周目は過労死で死んだんだ」
一応前世があるわけで。
でも、レイルからは乙女ゲーの記憶のことは他の人に言うなと言われてるし、このくらいはいいかなぁと思ったのだが。
「あははは!んだよそれ今日一笑えるわ!」
「ええ、アレンさんは一度過労死してしまったんですね。私も気をつけますね。充分な睡眠はとりますね」
あ、冗談だと切り捨てられたわ。
多分本当のこと言っても冗談だと思われてるだけだわ。
微妙な変化を見逃さず、家の調査力で気がついたレイルは優秀すぎたってところか。
「じゃ、また明日」
「おーう」
「おやすみなさい」
その後、寮へ着くと各自の部屋に向かった。