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「う、た…?」
いや、うたかどうかは分からないじゃないか、まだ暗いし…眼鏡、青みがかった髪色だけでうたと決めつけるのは……
まだだ、まだ大丈夫…
自分を納得させるのに必死だった。
暗いから、まだ分からないだろ。
だけど、…
「………うた、…っ」
タイミング良くついた街灯が、俺に残酷な現実を突きつけた。
眼鏡の奥の彼の眼はうっすら笑っていて、不気味な表情。
「…んふふ、焦ってんの?」
やめて、やめてくれ。
「……どしたの?うた!コンビニ一緒に行きたいん?えもしや奢ってくれ……」
「とぼけんな〜?♡」
俺の言葉を遮るように、彼は俺の背後にまわる。
俺の肩の上から手を回して、後ろから俺の首を優しく締めるように抱きしめてくる。
俺より少し背の高い身体が、俺の身体を包んでくる。
俺の顔に自分の顔を擦り付けてくる彼は、普通を振舞おうとした俺の勇気を一瞬にして崩した。
「…う、…た、…?」
恐怖と困惑の感情がぐちゃぐちゃになって、脳がパンクしてしまいそうだ。
うたが、俺の…ストーカー…?
「うた、そんなわけ、ないよな…俺が、可笑しいよな…?」
最後の希望を込めて、聞いてみる。
「…おかしいのは、はるてぃーだよ」
…ということは、やはりふざけていただけ?
やっぱりうたは、ストーカーなんかじゃ…!!
「はるてぃーが、俺の事見てくんないから悪いんだよ」
「…は、?」
「はるてぃーが、他のやつらとばっかりつるんでるから悪いんだよ。幼馴染の俺を差し置いて…」
は、?何言ってんだよこいつ…
「…嘘だろ、そんな、の…?」
「嘘なわけないじゃん。俺のはるてぃーへの思いは本物だよ?ずっと大好きだったんだから」
よく考えたら、全ておかしかったんだ。
俺はあの時__うたくんの家に泊まりに行って…
__確かに、部屋の鍵を閉めたんだ。
それなのにうたくんは、俺をベッドまで運んでくれた。
…どうやって入ったのか?
そして、荷物。
俺は作業を始める前、荷物は壁に揃えて置いたはず。
なのに__翌朝にはぐちゃぐちゃになっていた荷物を整理した自分…。
そういえば、『家が危ない』と言い出したのもうたくんだった。
今まで感じていた違和感が、ようやく今、腑に落ちた感覚だった。
全ては……
『俺に寄り添ってくれる優しい俺の幼馴染』を演じるための…
「自作自演…ッ」
「はるてぃー…これで俺のモノだよ……俺と幸せになろう」
そう言って彼は、もう一度正面から俺を抱きしめた。
end1
『俺のモノだね』
next…?♡500↑
コメント
2件
End1ってことはもしかして他のEndもあるってことじゃ…