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案の定、人の良い金持ち連中は、俊哉の世話をやきたがった
そこら辺は鈴子の時でやり方を心得ていた、世間知らずの上品ぶった金持ちの女どもは、自分の整った顔と嘘で、いともたやすく心を許すものだ
俊哉はゆっくり礼拝堂を後にし、離れに向かう長い廊下を歩いた
薄闇に被われつつある庭園には、バラやジャスミンの香り
水をかけられたばかりの夏の夕暮れの木々の葉の湿った、みずみずしい匂いが漂っていた
淡いブルーの人工池は半月形をしていて、同じく水面には、人口の蓮の花片隅のアーチの噴水が水を注いでいた
まさにここは楽園だ
途中何人かの在家信者に丁寧に挨拶をし、少し世間話をする
俊哉は得意のお愛想を振りまき、好青年の皮をかぶる
あのHPに載った体験談のおかげで、ここではみんな自分をヒーロー扱いしてくれる
この団体になじむのは簡単だった、極力本性を隠し、人当たりの良い善人で、元妻に手ひどく傷つけられた無垢な好青年を演じた
俊哉は暴力が好きだった、そして俊哉にとって、暴力はさらなる暴力の欲望を煽るだけだった
物心ついたころから、ガラの悪い地域の不良仲間の中で、俊哉に逆らうものはいなかった
鈴子を除けば・・・
野心に従い、金持ちの家の娘との結婚によって、まんまと自分も上流階級の仲間入りをしたと思っていたが
彼女の父親にはどういうわけか、なんとなく自分の本性が見抜かれているような気がしていた、俊哉はさっさとあの父親が死んでくれることを願った
そしてあの嫌な成金親父は、文字通り鈴子を勘当して自分と縁を切らせた