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第十二章 関東征伐
――箕輪城。
「業正殿。
箕輪城を関東征伐の拠点として使わせていただけること、大変ありがたい」
景虎から礼を述べられ、業正は静かに頭を下げた。
「憲政様をお助けするためなら、この業正、なんでもいたしましょう」
「ほほほ……感謝いたすぞ、業正」
憲政も嬉しそうに笑う。
「ありがたき幸せ」
業正がそう答えたところへ、兵が駆け込んできた。
「申し上げます! 方円殿がお越しになられました!」
「うむ、通せ……」
憲政がそう命じると、ほどなくして方円が姿を現した。
「上杉憲政様。
再びお顔を拝見でき、恐悦至極でございます」
方円は深々と頭を下げる。
「この方円、全力をもって必ずやお戻しいたします」
「ほほほ、そう固くならなくて良いぞ」
憲政は穏やかに笑った。
「そちのおかげで、ここまで早く話がまとまったからの」
「大儀であった」
「はっ」
方円が返事をした、その時だった。
「申し上げます!」
再び兵が駆け込んでくる。
「方円殿の軍所属と名乗る者たちが、広場に集まっております!」
「何……?」
景虎が思わず声を上げた。
ーーーーーーーーーー
広場では、山賊たちが声を張り上げていた。
「おめえたち、分かっているな!」
頭が仲間たちへ向かって叫ぶ。
「今までやってきたことの罪滅ぼしだ!」
「許してくださった方円殿のために――」
「死ぬ気で働くぞーーー!」
「おおおお!!!」
下っ端たちも一斉に声を上げる。
その光景を見た景虎は、思わず固まった。
「^^;」
そして、方円へ振り向く。
「方円殿、これは一体???」
方円は何でもないことのように答えた。
「甲斐国を荒らし回っていた山賊です」
「自らの罪を認め、謝罪し、憲政様をお戻しするため――」
「死ぬ気で戦ってもらいます」
「……あー、褒美はいいですよ」
方円はさらりと続ける。
「既にこちらで先払いとして、砂金を払っておりますので^^」
「ほほぉ……先払いとな」
憲政が興味深そうに聞き返す。
「ええ」
方円は頷いた。
「命を張るのです。
死ぬ前に食べたいものや、飲みたいものもあるでしょうし」
「それに彼らは、民や商人に既に直接謝罪しております」
「山賊にはなりたくなかったはずです。本当は……」
方円は少しだけ表情を曇らせる。
「どうか、彼らの参陣をお認めくださいませ」
「いやいや……認められるわけないだろう」
景虎が慌てて口を挟む。
「山賊だぞ???」
「なぜ、わざわざ山賊を連れてくる必要がある」
「……」
方円は景虎を見る。
「皆さん、知っておられるかは分かりませんが……」
「甲斐国は、地獄なのですよ^^」
「長野業正様には以前お伝えしましたが……」
業正は黙って方円を見る。
「…………」
そして、ぽつりと呟いた。
「包囲となると、百姓にさらに負担をかける……」
「それなら、いっそのこと――」
「山賊を兵にするということか……」
「だからとはい――」
景虎が何かを言いかけたところで、方円が遮る。
「――許したつもりではありません」
方円の声が少し低くなる。
「彼らのやっていたことは、許されざることです」
「ですが……」
「山賊になるしかなかった」
「痩せた土地」
「繰り返される氾濫」
「風土病」
「繰り返される飢饉」
方円は静かに語り続ける。
「兄が信濃を襲っていたのも――」
「周りから奪うしかないと、追い詰められた結果……」
「決して許されることではないですが💢」
「それも考慮して、正義のために、心を入れ替えさせ共に戻すのです」
「たとえ山賊であっても、人の心を持った人に」
その言葉を聞いた頭は、仲間たちへ振り返った。
「おい、お前たち」
「聞いたか、今のお言葉……」
下っ端の一人が涙をこらえる。
「ぐすん……」
「愚かなことをした俺たちに……」
別の下っ端も拳を握った。
「命かけて、必ずお戻しするぞ!」
「憲政様を!」
「うおおおおおん!」
その様子を見て、景虎は無言になる。
「……^^;」
(話を遮られたうえに……)
(受け入れるしか、もう手がないじゃないか……)
そんな景虎を見て、業正が苦笑する。
「景虎殿の完敗ですな^^」
「ほほほ」
憲政も楽しそうに笑った。
「心を入れ替えたのなら、いいではないか」
「帰してくれるのだろう?」
「許してやることも大切であるぞ」
そして元山賊たちへ声をかける。
「ほれ、元山賊」
「立て」
「正義の戦に参ろうぞ」
「ぐぬぬぬ……」
景虎は悔しそうに唸る。
「人の心を掴む怪物女め……」
すると方円は微笑んだ。
「お褒めいただき光栄ですわ、景虎殿」
「ほ め て な い !!」
景虎が即座に叫ぶ。
「…………」
業正は何も言わず、そっと立ち上がった。
「では某は、忍城の成田殿と少し話をしてまいります」
「必ず道をひらくので、それまでこの箕輪城で皆様、ごゆるりとお過ごしを」
「そうか……気をつけて行くのじゃぞ、業正」
「はっ……」
業正がその場を後にする。
景虎はその背中を見ながら呟いた。
「……」
(あっ、逃げたな……泣)
そんな景虎へ、方円が声をかける。
「では、その先の進行ルートについて決めていこうと思うのですが、景虎殿、どうですかね?」
「……」
景虎は一瞬固まる。
(あっ……)
(あっ……)
そして諦めたように頷いた。
「……わかった」
「……決めよう」
「うん、それがいい……」
そんな二人を見て、憲政は楽しそうに笑った。
「ほほほ」
「お主たち、仲が良いのぉ」
「頼りにしておるぞ、ほほほ」
「……泣」
富来 えび
122
#自分用
富来 えび
20
һагυ_彡
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コメント
1件
うわあ……重いけど、すごく熱い話だった……😢 方円の「地獄」発言、めっちゃ刺さった。山賊たちの過去とか、生きるために奪うしかなかった現実を考えさせられて、胸が苦しくなったよ。 でも、頭が「人の心を持った人に」って言ったシーンで泣きそうになった。許しとか正義って、白黒つけられないんだなって……。 景虎が完全に丸め込まれてるのも笑ったし、業正の逃げ方も上手すぎる😂 キャラの温度差が絶妙で、読んでてすごく面白かった! 続きも気になる……!