注意
日さんのにゃぽんを陥れて幸せになってる話
日さんがクズ
私の兄は、優しすぎる人だ。
月に一度、兄から贈られてくる手紙をもう一度最初から読み直してほっと息をついた。
本当によかった。
兄はこの家では珍しく正常な性格の持ち主だ。
穏やかで、争いを好まない本物の善人である。
人は誰しも平等である、といつも泣いている私を慰めてくれたのを今でも覚えている。
兄は、普通の人間だ。
この家の人間である証である『目』を持たずに生まれた。
かという、私もきちんと受け継いではおらず本来は濃い血のような紅であるのだが私は薄い桃色だ。つまり派生である。だから、目を持つものだけが見える御先祖様も一応見えはするが薄く見えるだけで、他の後継者みたいにはっきり認識することも触ることもできたない。
つまり、出来損ないだ。
ちゃんと受け継げてなく、しかも女。だからといって容量がいいわけでも何か特出したものがあるわけでもない。 当然、私は一族の人間であると認められていない。しかし、一応視えはするので人間扱いは一応されていたので学校以外にも御先祖様による教育はきちんと施された。その原因は家がそこそこ由緒ある家系であることも理由の一つだろう。
男尊女卑は当たり前だし、『目』を持たざるもの人であらずんば。
現代では、考えられないほどの歪んだ認識だ。
昔はそんなこと当たり前だったかもしれないが今は現代だ。逆に、この考え方が脈々と今まで受け継がれてきたことが驚きだ。
そんな狂った御先祖様からすらも認められていないのだ。
当然、外の人たちからもそんな私の扱いは雑で年に2回ほどある社交パーティではいつも空気のような扱いだし名前も覚えられていない。
そりゃあ、御先祖様からも身内だと認められていないのだから外でも認められるわけがなかった。
一応、持ってるから子孫の中でもまだマシな私が表向きは『後継者』になっているだけで簡単に言えばお飾りだ。
こんな家から出たくないといえば嘘になる。
だが、だからといって私は家を出た兄を恨んでなどいなかった。
勿論、幼い頃はどうして私だけこんな理不尽な扱いを受けなければならないのかと思いもしたし、何度もお兄ちゃんにもあたった。それでも、お兄ちゃんは「ごめんね」と悲しそうな顔で私を慰めてくれた。お兄ちゃんは悪くないのに。
寧ろ、今は兄が持っていなくてよかったと心底思っている。
そんな優しすぎる兄は私を一人置いて家から出ようとしないのはわかりきっていたので私はお兄ちゃんを態と冷たい言葉で突き放して外に逃がしたのはかれこれ七年前だ。
聡い兄だ。兄はそれをわかっていたのだろう。
それから、お兄ちゃんは毎月こうやって手紙や写真を送ってくれる。
それが私の唯一の楽しみであり、生きがいだ。
手にある写真の中に入る女の人と片手で数えられる年ほどの少女がお兄ちゃんの隣で幸せそうに笑っている。
それを見ていると自然に笑顔になれる。
兄が幸せなら私も幸せだ。
「おとうさん、ごほんよんで!!」
まだ幼い娘にそうせがまれる。
「勿論、今日はどんなお話にする?」
やさしい、やさしい笑みを浮かべて男はそう言った。
「おひめさまのおはなし!!」
少女は嬉しそうに父親に本を手渡す。
「むかーし、むかーし、あるところに………」
娘が寝たことを確認して父親は静かに立ち上がった。
がちゃり、と扉を開けるとそこには雑誌に目を落とす妻の姿があった。妻は旦那に気がつくとふわりと微笑んだ。
「ありがとう、ごめんね?疲れてるでしょう?」
男は自分の体を案じている様子の妻を見て幸せそ
うに微笑んだ。
「大丈夫だよ、これくらいさせてよ」
そう言う旦那に妻もつられて笑った。
「少し、仕事をしてから寝るから先に眠ってて」
「そう…あまり頑張りすぎないでね?」
「うん、ありがとう、おやすみ✕✕✕」
「おやすみやさい、✕✕さん」
がちゃり、男は書斎に入ると大きな椅子に身を任せた。
ぎっ、と体重で椅子が軋む。すると、男は引き出しの中から一通の手紙を取り出して封を切って中を見た。
時代錯誤な筆で書かれた今どきの人間は読めないだろう文字を男は卒なく右から左へ読んでいく。
やがて読み終わると男はふっと口元を緩めた。
「本当に、馬鹿な奴。」
そう人知れず呟いた声音は先程妻娘と話していた声音より幾分も低かった。その笑みも親しみあるものではなく、心底愉快とでもいいたげなものだった。
男は我慢出来ないとでも言うようにくつくつと喉で笑いながら、眼鏡を外した。
「我が妹ながら、かわいそうな子だ…私が、『持ってる』なんて思わずにこんなに健気に………」
クスクスと心底面白げに嗤うその男の目は真紅の色をしていた。
眼鏡に映っている自分の目を見て、私は更に笑った。
本当に、何年も苦労して『やさしい兄』を演じた甲斐があるというものだ。
万が一なことを考えて、家を出てからも家の内情を知るために文通やらカモフラージュとしてバツ一子持ちの妻を持ったりと念には念を入れて面倒事をしたがこれはもう『勝った』とみていいだろう。
にっ、と口角を持ち上げる。
一応、かなり警戒していたのだがそれも杞憂だったようだ。かの御先祖様方も態度だけで口程にもなかった。
まぁ、所詮死人なのだから当然か(笑)
妹に関してはまあ同情はするが仕方のない犠牲だ。恨むなら私に騙される自分の馬鹿な頭とあのイカれた先祖共を恨んでくれ。安心してほしい。 お前が望む通り、私は「普通」の幸せを享受するよ。
だから、これからも私の代わりに地獄で踊り狂っておくれ
コメント
4件
クズな日さんも大好きです!!!! 楽しみながら読ませてもらいました!! ありがとうございます!!!
ありがとうございます!! どんな感じで家から出すか少し迷っていたので、助かりました! これに続けて、日さんをしっっっかり地獄に叩き落としますね! 少し想定と違われることもあるかと思われますが、参考にしながら書き上げていこうと思います!
サカナーウミ様にお願いしたリクエストの参考になればと簡単に書き上げたものなのでちょっと変なところとかあるかもしれません! どうか、この勝ち逃げしようとしてる日さんを地獄に墜として下さい…!!