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あれから私は、他人の人生に関わらなくなった。 それは、単なる人間関係への、怠惰、堕落ではない。

自分の人生が、さらに壊れるのが、ただ、怖くなったからだ。

あの、いじめっ子たいきくんを止めたあと、気を失った私は、保健室でぱっと起きて。

「あ、高木さん。大丈夫?」

「先生?」

「あなた、泡吹いて痙攣しちゃっててね。私が来たときには白目むいてたからびっくりしたよ」

「す、すみません……」

保険の先生はもう事を進めて、ちゃんと、母に連絡してくれていた。

先生と母との相談で、早退の後に、近くの病院で軽い検査を受けることになった。

もちろん医者には、何も言われない。言われないどころか、不思議な顔をしていて、持病と診断されていたなら、それなのかもしれないと、母に診断結果を伝えていたな。

それからの学校生活は、きっとあんな事があったからだろう。急に、クラスメイトがぶっ倒れて痙攣するから、怖いと感じたのだろう。

私は、次の日からただ独り浮いた存在として、誰にも関わられなくなり、話しかければ怖がられて、すぐさま逃げられるような、ただ畏怖の存在となってしまった。

誰とも関わらず、関われず、自分の未来が思い出として、『キオク』として、呪いのように私の心に深く根付いてきて。

私の生気を吸い取って、醜い黒い花を咲かせたそいつは、その自分の姿を誇示するように、どんな時もいかなる時も、私の意識に入り込んできた。

寝ていても、両親と楽しく話している時も、ふとした瞬間に、そいつは背後から襲いかかってきて。

ああ、自分の人生が視えるというのはこんなにも怖いんだなって、認識してしまった。

「ひいちゃん、最近元気ないよ? 大丈夫?」

母は、私の瞳を覗き込んで心配してくれるけれど、見つめ返す母の瞳孔の奥には、こんな自分を煙たがるような、邪魔そうに見つめる母の姿が視えて。

もう、……もう何もかもが怖くなって、苦しくなって、信じられなくなって、イヤになって。

私という存在は、元の『高木柊』とは違う、鬱屈とした孤独を象徴するような、誰も信じない、なにごとにも希望を持たない、ただ暗い陰の存在として形成されていった。


私は小学校を卒業し、中学に進学した。

私が見た、ただ孤独な生涯を全うする『高木柊』は今でも、変わらなくて。

その『高木柊』は良い方向に変わる事も、さらなる絶望に変わる事もなく、ただ『そのままの高木柊』だった。

本来、この世界線の『高木柊』が交友を持つはずだった人間が話しかけてきても、私はもういい、疲れるからと友達にならなくて。

その場合でも、私の立てた見立てでは、その時点でその人の人生も変化するわけだから、自分の未来も変わるはずだ。

しかし、頭痛や情報が頭に流れ込んでくることはなく、関係を持たなかった、という事実に変化しただけだった。

きっと、自分から行動を起こして相手の人生に関係しなければ、相手の将来は、変化しないということなのだろう。

自分が必要なければ、ただそれだけになるだけで、未来さえも変わらない。

そんな事実が、私『高木柊』は要らない存在なのだと、そう告げられている気がして、今さらだけどさらに落ち込んで。

でも、ああ、やっぱり。と納得も出来て、今のこの『高木柊』は誰にも必要なく、迷惑もかけず、ただ独りで死のうと、決心もできた。

やっぱり、人一人の存在じゃあ、誰も要らないよね。他の人もそうであるように、『高木柊』も特段、特別な人間ではないのだ。


私は、要らない存在なんだ。

わたしは知っている、君の最期を。

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