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永遠に届く声

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永遠に届く声

23 - dreiundzwanzig .

2025年05月11日

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なんとかリヒトを教育的指導(回し蹴り)し、暴走列車を止めたその深夜──
「すまなかった。」

「いえ、なんというか…その、おあいこですから。」


自傷的な笑みを浮かべ、ゆっくりとハイネに向き直るヴィクトール。

その目には見覚えがあった。

あの夢の中、その目に溺れそうになったのを覚えているから。


「……どうされましたか…?」

「ああ、いや。なんでもないよ。」


「ただ、君が走って、私との関係を必死に否定している姿が…

なんだか、とても、可愛らしかった。」


ハイネは、一瞬言葉を失った。


「……か、可愛らし……?」


「ふふ。子供のハイネには、もう言われ慣れた言葉なんじゃないかい?」


そう言って微笑むヴィクトールの目は、どこまでも優しくて、

けれど同時に、どこか遠いものを見るような寂しさを湛えていた。


「……からかっているのですか」


「そんなことはない。君が焦って、リヒトを追いかけて――

あのまま捕まえて叱り飛ばして……その姿を、少し離れて見ていたんだ」


「……ご覧になっていたのですね」


「うん。……教師の顔も、必死な顔も、君にはどちらもよく似合っていると思った」


ハイネは言葉を探したが、何を返すのが正解なのかわからず、ただ黙って立ち尽くした。


「だけど、私の名前を呼んだときの君は……」

ヴィクトールの目が、まっすぐにハイネを射抜く。


「まるで、別人のようだった。

夢の中で見た、あの“ハイネ”そのものだった」


「……!」


「だから、たぶん、私は――

現実よりも夢の中に、君を閉じ込めたくなるのかもしれないね」


「それは……残酷です」

ハイネの声が震えた。


「現実では、あなたの傍に立てないと、そう仰るのですか」


「……いや、違う」

ヴィクトールは一歩、ハイネに近づいた。


「私が、君のそばに立つ資格がないと思っているんだ」


「……それでも」

ハイネは、ほとんど祈るように目を伏せた。


「私が……“ヴィクトール”と呼んだのは、ただの夢のせいではありません」

「……」

「あなたが……私にとって、そう呼ぶべき人だからです」


静かに、けれど確かに、空気が揺れる。


目を合わせれば、何かが壊れそうで。

でも、逸らせばきっと、永遠にすれ違ってしまいそうで。


「……ハイネ」


「……ヴィクトール」


次に触れれば、それはもう後戻りできないものになるとわかっていても――

ふたりはただ、そっと手を伸ばしかけていた。


そのとき。


「……ねぇセンセー、父上〜〜? まだ起きてる〜?」


「……リヒト王子」

「……教育的指導、今度は私がしようか」


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