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初めまして、マルテラ商会会長を務めるチェルシーよ。以後お見知りおきを。ご覧のように、私は魔族。自慢の翼は毎日手入れを欠かしたことは無いわ。

先代魔王様より人間との繋がりを保持して欲しいとのご命令を受けて、私はずっと人間社会で暮らしてきた。その任務のために、最後の戦いに馳せ参じることが出来なかったのが心残りね。

先代様が勇者に討たれた後も私はご命令を守り人間社会で活動を続けた。何百年の月日が流れたか。ただ先代様のご命令に従い続けた。

いいえ、他の道を自分で考えるのが怖かったの。だって、そんなことをしたら魔王様がもう居ないと言う現実に押し潰されそうになるから。

百年ほど前に気紛れに始めた商売が上手くいって、『マルテラ商会』を立ち上げた。それからは会長として多忙な日々を送り不安を忘れようとしていたわね。

そんなある日、今から数年前だったかしら?デュラハンが私の前に現れたわ。懐かしいものね。彼は私と同じで魔王軍の幹部だったけれど、あまり愛想が良いタイプじゃなかったわ。少なくとも旧交を暖めるようなタイプじゃない。

疑問に思いながらも彼を迎えて話を聞いた。彼はゼピスと名乗っていることを伝えて、魔王様の生まれ変わりである少女にお仕えしていると教えてくれた。

衝撃だったわ。魔王様は必ず復活なさるとは思っていたけれど、数千年は先だと諦めていたのにこんなに早く復活なさるなんて。

私は逸る気持ちを抑えゼピスに伴われてマリア様と、お嬢様とお会いすることが出来た。

その身体から感じる魔力は間違いなく魔王様のもの。そして魔王様と同じ清く美しい心をお持ちだったわ。まさに魔王様の生まれ変わり。

涙を流す私にお嬢様は、自分に仕えなくて良い。ただ先代様の遺志に従って欲しいと仰有ったわ。

そのお言葉に宿る優しさはまさに魔王様のもので、私はその場で改めて永遠の忠誠を誓ったの。

その後の話し合いで魔王軍の最高幹部、つまり四天王をどうするかが議題に上がったわ。先代は勇者に討たれていたから不在だったし、改めて私達が四天王を襲名することになったの。

私こと緑翼のチェルシー、デュラハンのゼピス、グリフィンのダンバート、オークチャンピオンのロイスでね。

私は『マルテラ商会』を営みながらお嬢様の活動を支援する役割を与えられた。もちろん、幹部で話し合ってね。

お嬢様は遠慮なさっていたけれど、弱者救済のためには多額の資金が必要なのは明白。

『聖光教会』は余り良い噂を聞かないし、お嬢様の崇高な理想に共感するとは思えなかった。

だから私は寄付と言う名目で資金援助を開始したわ。反対するものは居なかったし、もちろん汚職を繰り返す教会幹部に渡らないよう、細心の注意を払ったわ。寄付金も聖女様の活動資金と言うことにしてね。

お嬢様を影ながら支えて、数百年ぶりに充実した毎日を送っていた頃、南部にある『ロウェルの森』で獣王ガロンの復活と魔物によるスタンピードが発生。

お嬢様は人間を守るためゼピス達を率いてご出陣なさったわ。もちろん私も馳せ参じるつもりだったけれど、運悪くレンゲン公爵家との重要な商談と重なってしまったわ。

臣下として全てを捨てて馳せ参じるべきだと考えた矢先に、お嬢様から商談を優先するようにとのお言葉が届いたの。

『マルテラ商会』は西部最大の商会。混乱すれば西部全域の混乱に繋がり、無辜之民が苦しむことになると。

会ったこともない人々を案じるその慈悲深さに改めて感激した私は、後ろ髪を引かれながらも商談を無事にやり遂げた。

後からダンバートが詳細を教えてくれて、お嬢様にお怪我はなくそれどころか獣王ガロンを討ち取る武功を挙げられたことを聞いたわ。

ただ、そこで問題も発生したのよ。それが勇者の力を持つ娘との出会いね。最後までお嬢様と反りが合わず、最大限の警戒をするように魔王軍全体に警告が流れた。私も商会を動かして情報収集を行っていたのだけれど、まさか勇者の妹が直接この場に来るなんてね。

まあ、お嬢様は勇者の妹には好感を抱いている様子だし、納得できる対価を用意出来たら望みを叶えてあげましょうか。

「女公爵閣下に貴女を紹介するのは簡単よ。それで、対価は何かしら?」

星金貨数枚程度じゃ動かないわよ?確かに大金だけれど、充分稼げているし。

「その様子では、並大抵の対価では喜んでいただけないでしょうね?」

「そうね、大金を積まれても困るわ」

『暁』の羽振りが良いのは知っているけれど、うちとは規模が違う。

貴族社会で大人気の農作物は魅力的ね。それの卸値を定価の半分以下で、とかなら考えるわ。

「では、此方をお納めください。私達姉妹の誠意と受け取って頂ければ幸いです」

ん?書類?何かの権利書かしら?今さら南部の土地に興味は無いのだけれど……んん?

『ライデン社』の紋章?待って、これってもしかして!

「これは……船の権利書?」

「はい、我々が所有する予定の物を無償でお譲りします」

「廃棄寸前とかじゃないわよね?」

「まさか、内容をご確認ください」

はっ!?最新鋭の蒸気船じゃない!どうやっても手に入らなかった代物!

「これを、無償で!?」

「はい。まだ完成はしていませんが、既に|艤装《ぎそう》工事も大詰めです。年内には完成するでしょう」

嘘でしょ!?とんでもない価値がある手土産じゃない!いや、ここは揺さぶりを。

「でも内陸だからねぇ」

「ご冗談を、レンゲン公爵家が領内の港町を大々的に整備しているのは承知しています。海運に手を出すおつもりなのでしょう?そして、マルテラ商会は旧来の船しか保有していない」

うぐっ、流石にそのくらいは調べてるか。確かに蒸気船が普及し始めて海運が活発になるからと女公爵閣下と私達主導で港町を整備しているのは事実だわ。

ただ肝心の私達マルテラ商会がライデン社との取引に出遅れてしまって蒸気船を一隻も所有していないのが問題。

「この船があれば、あなた方が抱える問題も解決しますよ?どうしますか?」

中々悪い顔が出来るじゃない。まさか対価に最新鋭の蒸気船を、それも無償で提供とは恐れ入ったわ。流石は『勇者』、考えることが派手ね。

「分かったわ。充分すぎる対価を頂いてまだ意地悪をするほど腐っていないわ。女公爵閣下と会わせてあげる。午後、時間はあるわよね?」

「今日ですか!?」

よぉし、一発返したわよ。

「本当は数日焦らすつもりだったけれどね。ここは私も誠意を見せましょう。ちょうど今日女公爵閣下との商談があるの。貴女も一緒に連れていくわ」

唖然としている目の前の女の子を見て、私は彼女に興味を抱いたのを自覚したわ。

お嬢様も気にされていたし、もう少しこの子の事を調べてみましょうか。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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