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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第18話 〚笑ってもいい場所〛(湊視点)
俺が一番信用している人は、
昔から変わらない。
白雪澪。
理由は、単純だ。
無理に踏み込まない。
勝手に決めつけない。
沈黙を、沈黙のまま置いてくれる。
それだけで、
信じるには十分だった。
昼休み、
廊下の窓際で澪と話していた。
「今日の数学、難しくなかった?」
「うん……ちょっと」
「だよな。先生、容赦なかった」
そんな、
どうでもいい会話。
でも、
それがいい。
「白石」
後ろから声がした。
振り向くと、
海翔、玲央、りあ。
澪の友達。
——知ってる。
澪が説明してくれた。
(大丈夫な人たち、だ)
胸の奥で、
そう判断する。
でも、
完全に信用するには、
まだ少しだけ怖い。
だから——
試す。
「……あ」
俺は、
わざと真面目な顔で言った。
「実は今、
廊下の床が俺に語りかけてきてる」
一瞬、沈黙。
(……やばい、滑ったか)
そう思った次の瞬間。
「なにそれ!?」
りあが吹き出した。
「床の意思、再来!?」
玲央が腹を抱える。
「急に来たなそれ」
海翔まで、
肩を震わせて笑っている。
澪は、
もう完全に笑いが止まっていなかった。
「湊、それ昔から変わらない……!」
「つぼった……無理……」
気づいたら、
俺も笑っていた。
(……あ)
この感覚。
変人扱いされない。
引かれない。
否定されない。
ただ、
一緒に笑われる。
「……ありがとう」
思わず、
小さく呟いた。
「え?」
りあが首を傾げる。
「いや、こっちの話」
その日からだった。
海翔の沈黙が、
怖くなくなったのは。
玲央の視線を、
気にしなくなったのは。
りあの距離を、
自然に受け入れられたのは。
澪が信じている人なら、
俺も、信じていい。
少しずつでいい。
俺は、
そうやって人を増やす。
笑ってもいい場所が、
また一つ、増えた。