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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第19話 〚受け取った合図〛(海翔視点)
昼休みの廊下。
澪と白石が並んで歩いているのを、
少し離れたところから見ていた。
近づきすぎない。
それが、俺の今の立ち位置。
白石は、
前よりもよく笑うようになった。
前は、
澪以外の前では無表情に近かったのに。
「……」
声が聞こえた。
「なあ、海翔」
呼ばれて、
思わず顔を上げる。
白石だった。
「これ、落とした」
差し出されたのは、
俺のシャーペン。
「ありがとう」
受け取ると、
白石は一瞬だけ間を置いて——
「……床の意思が、拾えって言ってた」
真顔。
一秒。
二秒。
「……は?」
次の瞬間、
俺は吹き出していた。
「それ、今言う!?」
「タイミング最悪だろ」
玲央も笑う。
りあは、
もう完全に笑い転げている。
白石は、
少しだけ口元を緩めた。
それを見た瞬間、
胸の奥で何かがはっきりした。
(……あ)
これは、
冗談だ。
俺に向けた。
さっきまで、
黙って頷くだけだった相手が。
わざと、
自分を出してきた。
(信用、されたんだ)
守るとか、
警戒するとか、
そういう話じゃない。
ただ、
「ここにいていい」って
合図をもらっただけ。
澪が、
少し驚いた顔でこちらを見ている。
でも、
すぐに安心したみたいに笑った。
「湊、それ言う相手選ぶよね」
「選んでる」
白石が、はっきり言った。
その言葉に、
変な緊張が抜ける。
(……そっか)
信用って、
奪うもんじゃない。
気づいたら、
渡されてるもんなんだ。
俺は、
一歩前に出ない。
でも、
一歩引きもしない。
白石が笑っている限り、
その距離を守る。
そして——
澪が真ん中で笑っている限り。
俺は、
この場所を壊さない。
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