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「はぁ」


今日何度目かになるため息を俺は吐き出した。


ここ2ヶ月くらい、毎日こんな調子だ。


あることが脳裏に焼き付いて離れない。


こんなこと初めてで、ほとほと俺は参っていた。



「お前、ここ最近ずっとそんな調子じゃん。全然女遊びもしてないんじゃないか?」


「そうかも」


「珍しいこともあるんだな。社員は別として、可愛い子がいればすぐ口説いてお持ち帰りばっかしてる千尋なのに」



普段の俺の素行をよく知る健一郎にそう指摘され、もっともな指摘にぐうの音も出ない。


確かにここ2ヶ月、女の子と寝ていない。


遊ぼうとお誘いの連絡が来ても断っていた。


なんでか全然そんな気分じゃないのだ。


「リフレッシュしてくるって行ったパリから帰って来たあたりからじゃん?何か悪いモンでも食った?」


「…………そうかも」



そうだ、あの子を食べてからだ。


あれからいつもの調子が狂ってる。


あの泣き顔が頭から離れないのだ。




◇◇◇◇◇



それは2ヶ月前のことだ。


大学卒業と同時に会社を立ち上げ、数年前にスマホゲームのモンエクが大ヒットを飛ばして以降、忙しくしていた俺は珍しく長期休暇を取ることにした。


大きめの仕事がひと段落したところだったし、社員も増え仕事が任せられる環境にもなってきていた。


会社が成長するにつれ増えていく社員には、みんな頑張って日々働いてもらっている。


自社の社員にはぜひ公私ともに充実した生活を送ってもらいたい。


気軽に長期休暇も取ってもらえるように、まずは社長である俺自らが行動で示すべきだろう。


そういう狙いもあって、10日間の休暇を取った。


せっかくの長期休暇なので海外に行くことを決め、どうせなら仕事に活かせればと、新作ゲームの舞台の参考になりそうなパリにした。


数年ぶりの海外だったから気前よく高級ホテルも手配し、仕事から離れ、のんびり気分転換するつもりだった。



パリに着いてホテルにチェックインし、しばらくののち、俺は思い立って街をぶらぶらと歩いてみることにした。


凱旋門に向かってシャンゼリゼ通りを歩く。


メインストリートとあって、いろんな人が行き交っているから人間観察をするのも面白い。


ゲームのキャラの参考になるかもなという視点で日頃から人間観察をよくしている俺は、この日もいつも通り周囲に視線を走らせていた。


そんな時に、一人の女性にふと視線が引きつけられる。


カフェのテラス席で一人静かに読書をしている日本人の女性だった。


会話に興じる周りの人々から浮いていて、やけに目立って見える。


それに単純に容姿が可愛くてタイプだ。


彼女に連れがおらず一人のようだと分かると、俺は近寄って行って声をかけた。


いわゆるナンパだ。


日本でも普段から可愛い子に出会えば、口説いてそのままお持ち帰りをよくしていた。


「女遊びがひどい」とか「女好き」とよく言われるが、可愛い子に声をかけない方が失礼じゃない?という考えだ。


それに俺にとっては口説きながら駆け引きする過程はゲームを攻略するみたいな感覚だった。


まぁ実際のところ、そこまで攻略に苦労したことはないので、俺の会社が作ってるゲームより簡単だけど。


フレンドリーに話しかけ、可愛いと褒め、ムードを作れば、大概の女の子が簡単に脚を開く。


そこまでしなくても、俺の容姿だけで落ちてくれる子が多いのも実情だった。



……さて、今日の子はどうかな?



そんな試すような気持ちで、努めて明るく気さくに話しかけた。


彼女は声をかけられたことに少し驚いていたが、特に拒否をする様子はなかった。


そのまま同じテーブルに座って話をする。


詩織と名乗ったその子は、俺と同じく旅行で日本から来ているという。


観光もせずにカフェで読書なんてしてるからてっきり現地在住の子かと思っていた。


話しながら俺は彼女を観察する。


詩織ちゃんはおそらく20代半ばくらい。


目鼻立ちが整ったきれいな子だった。


ゆるくパーマのかかった鎖骨くらいまでの長さの茶色の髪、きちんと施されたメイク、シンプルで上品なワンピース。


イマドキのオシャレな女の子という佇まいだ。


なにより目を惹くのが、ふっくらとした柔らかそうな白い肌だ。


太ってるわけではなく、思わず触りたくなる感じといえば分かるだろうか。



……これはぜひ味わせてもらいたいな。


そんな下心を隠して、至ってフレンドリーに俺は彼女に話しかけ続けた。


控えめというか、話を聞くタイプの子のようで、詩織ちゃんは基本的にあいづちを打っている。


特に嫌そうにする気配もないので、食事に誘ったところ頷いてくれた。


この子は俺の外見だけで落ちる感じではないけど、褒めて、ムードを作って、自然な感じで誘えばいけるだろうと思えた。


その見立ては当たっていた。


宿泊先のホテルにあるフレンチに誘い、景色の良い席でムードを作り、可愛いと褒めて、自然な理由で部屋へ誘えば、彼女は了承したのだ。


……割とアッサリだったな。こんな気軽に部屋に来るなんて、この子も普段から結構遊んでるんだろうな。



まぁ、この容姿だし、あの柔らかそうな体の持ち主なのだから間違いなくモテるだろう。


控えめで大人しそうでも、実は相当な男好きで遊びまくりなんて女の子は珍しくない。


彼女もそんなタイプなんだろうと結論づけた。




部屋に連れ込み、誘う口実だったエッフェル塔のシャンパンフラッシュを見たあとは、さっそく美味しく彼女を頂くことにする。


背後から抱きしめてキスをすれば、意外なことに彼女は緊張しているのか少し身を硬くした。


少しは恥じらいを演出しているのかもしれない。


まったく抵抗する様子はないので、どんどん服を脱がしていき、下着だけになったところでベッドに連れて行った。


ベッドの上で俺の下に横たわる彼女の白い肌が目に入る。



……うっわ、えっろい体。



細いのに出るとこ出てるし、全体的に丸みを帯びてて柔らかそうで女性らしい体つきだ。


触ってみたら、病みつきになりそうなスベスベでモチモチな触り心地だった。



可愛いねと褒めつつ、手や唇で愛撫すれば、彼女の息もだんだん荒くなってくる。


ただ、なぜか耐えるように声を我慢している。


それに遊び慣れてる子だと思っていたけど、自分から仕掛けてくることはなく、完全に受け身な感じだった。



……意外と経験少ないのかも?



恥ずかしそうにしてるのは演技なのかと思いきや、どうやらそうでもなさそうだ。


まぁ気にすることないかと愛撫を続け、指を彼女の秘部に挿れて、違和感に気づく。


あまりにも狭くて指が中に入らないのだ。


なんとか1本入るくらい。


充分濡れてるのにこの狭さ。


……まさか、初めて?いやいや、さすがにそれはない。この容姿でこの歳まで処女とかありえるか?



もう一度指を挿れようと試み、やっぱり入らないことで、ますます自分が思い浮かべた可能性が色濃くなる。



思い切って彼女に処女かと問いかけてみれば、「はい、そうです」とあっさり肯定されてしまった。


この展開は予想外すぎて俺も驚くしかなかった。


ナンパで女の子をホテルに連れ込んで、相手が処女だったなんて初めてのことだ。


普通処女なら誘われた時点で拒否するだろうに。


彼女はなぜここまでついてきたのだろうか。


それを聞こうとしたら途中で言葉を遮られ、「挿れてほしい」と潤んだ瞳で懇願されてしまった。


こんな顔でそんな可愛いことを頼まれたらお手上げだ。


本当にいいのかと問えば、彼女は問題ないと言う。


それならということで、中断していた行為を再開するが、完全に俺の心境は様変わりしていた。



さっきまで彼女のことは、経験豊富な遊び人の女の子だと認識していた。


だから美味しく楽しく食べさせてもらおうと思っていただけだった。


どうせ相手もそのつもりなのだから。



それが一転、経験豊富とは真逆なのだ。


この恥ずかしそうな反応も、慣れてない初々しい感じも、演技ではなく本物。


彼女のこの可愛い姿を知ってるのは、世の中で俺だけ。


しかも彼女の初めてを俺がもらえるという。



今までも可愛いと思っていた詩織ちゃんだが、なぜかますます可愛く感じてくる。


モテるだろうに今まで経験がないだなんて、遊び人とは程遠い。


なんて身持ちが堅い子なんだろとうっすら感動さえ感じた。


なんで彼女が今処女を捨てようとしてるのか知らないけど、相手が俺で良かったと思ってもらいたい。


妙な使命感まで生まれてくる。



そこからは彼女が痛くないように細心の注意を払いながら行為を進めた。


挿入時はやっぱり痛かったようで、彼女は顔を歪めていた。


そんな耐え忍ぶ苦しそうな表情が色っぽい。


女の子のこんな顔にそそられるのは初めてだ。


無事に全部挿入できた時には思わず労るようにギュッと抱きしめてしまった。


まったくいつもの俺らしくない行動だった。


挿入後は次第に彼女も感じてくれてるようだったことにはホッとしたがそれも束の間。


次の瞬間にはまた驚かされた。


彼女が涙を流していたのだ。


行為中に気持ちよくて泣く女の子もたまにいるけど、彼女のそれは明らかに違った。


悲しくて泣いている……そう直感で分かった。


なぜ彼女は男に初めてを捧げて抱かれながら、悲しそうに泣いているのだろう。



その泣き顔が、そしてこの夜の出来事すべてが印象的すぎて今も俺の脳裏から離れない。




◇◇◇◇◇


「はぁ」


またあの夜のことを思い出して、俺はため息をついた。


俺がシャワーを浴びている間に、消えてしまった彼女。


もう2ヶ月も経つのに、名前しか知らない彼女のことを全然忘れられなかった。


女遊びがひどい俺がピタリとそういうことをやめてその気になれないなんて異常事態である。



「ああ、そういえば、千尋の秘書の採用の件だけど、俺の知り合いの子でいい?」


健一郎から仕事の話を振られ、急速にパリの夜から意識を引き戻す。


経営者として社員の採用は重要な業務だった。


「健一郎の知り合い?」


「そっ、幼なじみの妹なんだけど、俺も昔から知ってる子でさ。ちょうど前の仕事辞めて今は無職だっていうから」


「へぇ、健一郎から見て秘書の適性ありそうって思ったから誘ったってこと?」


「ああ、その通り。ビジネスマナーも大丈夫だろうし、控えめで人を支えるタイプの子だから合うと思って。あと、簡単にお前に惚れなさそうだし」


「それ、どういう意味?」


「千尋の秘書するんだったら、お前の容姿にコロッと落ちる子はダメじゃん?仕事にならないし。その点、あの子は兄もイケメンでイケメン耐性があるし、本人も美人だから飢えてないだろうしさ。あと、恋愛関係の話するのも苦手っぽいから安易にお前に絆されないと俺的には思うわけよ」



健一郎の言うことはもっともだった。


そもそも外部から秘書を採用しようとしているのも、社内で秘書を募ったら俺目当ての女性社員が群がるからやめたのだ。


必然的に一緒にいる時間が長くなるだろう秘書に、そんな仕事にならない子は困る。


だから、外部で男性秘書を探そうかとこの前健一郎と話したところだった。



「健一郎のお眼鏡に叶う人なんだったら、俺はそれでいいよ。健一郎の目は信じてるしね。なにせ並木くんを引っ張ってきてくれたし」



営業部で目覚ましい活躍をしてくれている社員の|並木蒼太《なみきそうた》は、健一郎の大学時代の後輩だ。


俺とも同じ大学なわけだが、俺には彼と接点はなかった。


健一郎は顔が広いところがあり、並木くんとも仲良くしていたらしい。


彼が就活をする時期に、うちの会社へリクルートしてきてくれたのだ。


並木くんだけでなく、他にも複数名の社員が健一郎の紹介で入社して働いている。


そんな実績もあり、健一郎を信じていた俺は、知り合いの子だという子の履歴書も見ず、面接もせずに採用を決めた。


全面的に健一郎に任せることにした。


「オッケー、じゃあ来週から来てもらえるように調整するわ。初出勤の日時が決まったら、千尋にも連絡するから予定空けてくれよ?最初に挨拶くらいして欲しいし」


「それはもちろん。決まったら連絡して」


ということで、健一郎の采配のおかげで社長秘書の採用という一つの懸案が片付いた。


あとはその子がちゃんと仕事をしてくれることを期待するばかりだった。


健一郎は早々と動いたようで、翌日の水曜日から新しい社員の出社が決まった。


お昼前に社長室に連れてくるから、その時間は空けておけと言われている。


挨拶はもちろんのこと、面接もしてないから俺も少し話したいとは思っていた。



トントントン


その水曜日の昼前の時刻、社長室のドアがノックされる。


「どうぞ」



俺はデスクでパソコンに視線を向けたまま返事を述べた。


ドアが開く音がして人が入ってくる気配がする。



「千尋、連れてきた~」



健一郎の暢気な声に、俺はパソコンから目を離し、そちらを見やる。


ドアの前には、パンツスーツをきれいに着こなした女の子が立っていた。


その子と視線が重なり、思わず息を呑む。


なんとその子はパリで出会ったあの子だった。



まさかこんなところで偶然また会えるとは。


信じられない思いだ。



「こちら、今日からうちの社員として秘書を担当してくれる小日向詩織さん」


「……初めまして。小日向詩織です。よろしくお願いします」



健一郎に紹介され、彼女が丁寧な仕草でペコリと頭を下げる。


パリで会った時とは服装がずいぶん違うから印象が異なるが、間違いなくあの時の彼女だ。


きっちりとしたパンツスーツ姿は堅い印象なのに、彼女の柔らかそうな体のラインが見え隠れして妙にエロい。


昼前っから、しかも会社でこんなことを思ってる俺は相当ヤバイのではないだろうか。



「詩織ちゃん、こっちが社長の瀬戸千尋。前に話した通り、俺の大学時代からの友人なんだ。詩織ちゃんには千尋の秘書を担当してもらうから、まぁ何かと面倒なヤツだけどよろしく」


「……健一郎、面倒なヤツとか余計なことは言わないでよ」


「事実だからしょーがないだろ」


「まぁ否定はできないけど。はじめまして、瀬戸です。これからよろしく」



健一郎の紹介にツッコミを入れつつ、彼女に改めて挨拶をする。


彼女が初対面で接してきたから、俺もそれに従い「はじめまして」と述べた。



「じゃあ、俺はちょっと用事あって席外すけど、しばらく2人で話でもしてて。詩織ちゃん、あとでまた来るから。その時に社内を案内するよ」


「えっ?あ、はい。わかりました」


「千尋、あとはよろしく」



健一郎は俺にあとを託すと、さっさと社長室を出て行った。


部屋に2人だけになり沈黙が訪れる。


俺は彼女の様子を盗み見た。


何度見てもやっぱりあの時の彼女だ。


この2ヶ月、幾度となく思い出したあの彼女が今この社長室にいることがすごく不思議な気分だった。



「とりあえず、座ってコーヒーでも飲もうか。そこのソファー座って?」


「あ、はい」


応接用のソファーを勧め、室内にあるコーヒーメーカーでマグカップにコーヒーを2つ注ぐ。



「どうぞ」


「ありがとうございます」



俺は対面のソファーに腰をかけ、彼女と向かい合う。


さて、どうしようか。


こんな形で再会するとは思ってなかったし何から話すべきか。



ここ最近ずっと続いていたため息は、今やすっかり鳴りをひそめていたーー。

涙溢れて、恋開く。

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