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<有り得ないはずなのに>

2024-08-08



真昼間のことだった。

小鳥が鳴き、そよ風が吹き、枝が揺れる。

学校では授業がある時間帯。私は寮室にいた。

何故かと言えば任務遂行の為で、1人プロファイリング作業に追われていたから。

そんな時、開けた窓からフクロウが入って来た。

昨夜、涼しい風を部屋の中に入れるために窓を開けたのが良かったのか、窓は傷1つついていなかった。まぁ開けずともフクロウくらいの使役魔物ならそのまま入ってくるだろうけど。

「…あれ、どうしたの?」

時計を見ればまだ授業中の時間だった。こんな時間にどうしたというのだろう。

そのフクロウは1つの便箋を起き、すぐさま帰ってしまった。

「…????」

その便箋を手に取れば、見慣れた表紙だったことに気がつく。これは魔法局からの緊急連絡用の便箋だ。それに気がつくと同時に裏を返せば、そこには砂の神杖デザト・ケインの名と炎の神杖フレイム・ケインの名が連なっている。この2人からの緊急連絡とは珍しい。

「…嫌な予感がする」

珍しすぎて、もはや嫌な予感しかしない。

だってそうなのだ。魔法局でもかなりの強さを誇るあの神覚者、それも2人からの緊急要請とあれば妥当な直感と言える。怖い。

「………………」

「…は?」

_そして、それは現実となって当たってしまう。

そこに書かれていたのは、『アイル・スローンという生徒が黒い馬車に連れ去られた』という、至ってシンプルな文章だった。

「黒い…馬車?」

聞き覚えがあった、というよりかは、見覚えのある単語と言った方が正確なその言葉。

「…嘘、だって、だってあれは…!!」

「”こっちの世界にある筈がない”のに…!」


✦✦✦


題名:黒い馬車

<黒い馬車>とは、名前の通り、黒い見た目をした馬車のことである。

シ倚フ、テット゛■ン夕゛ー瘰ソド に存在する、十Tト■イフ゛ン力レッヅ(以下₦RC)への招待状、もJくは人学許可証■ある。

入学者が存在する場所へと向かい、学校へと案内する、いわば案内人の役割を持つ。

通常異世界の者を連れてくることは無いが、ごく稀に連れてきてしまう事例がある。

その場合帰る方法は■?邨娜�彝!■■。

出典元:⿻世界譚第5章/異世界からの存在物


✦✦✦


「オーターもカルドも、嘘をつくような人じゃない。ってことは、これは事実…?」

事実、という言葉がどうにも受け入れられない。

信じられないのだ。2人が嘘をつくはずがないと分かってはいるが、目の前の文章はにわかには信じがたい。でも、それでも、…

「………………ありえない」

ありえないんだと、そう感じ取った。

異世界からの誘い黒い馬車なんて、そんなの有り得るわけが無い。あれはこっちには存在しちゃいけないものだ。仮に存在が認められでもしたら、世界の均衡が崩れてしまう。

「…っ!」

黒い馬車という単語が頭の中をぐるぐると駆け巡って、気分が悪い。段々と視界がぼやけてくる。

彼があちらの世界に連れていかれた。引き留められなかった。助けれなかった。

『また助けられなかったの?』

「…!」

床に蹲っていると、ふとそんな声がした。

脳内に直接囁きかけているような、嫌な声だ。

「やめて、嫌だ。…気持ち悪い…」

『だからイーストン此処はやめときなよって言ったのに。また彼を助けられないかもしれないから、僕は忠告したのに。』

やっと喋り終わったのか、と思うと、次の瞬間、辺りが暗転する。木目の床も壁も、全てが暗闇に呑まれたかのように消える。

(…また、此処…)

見覚えのある、と言ってもあやふやだが、何度目かの誘拐だった。

目の前に傷だらけの少年が現れる。黒髪のベリーショートに、身体中にある傷の処置跡。いや、処置すらされていない傷もある。ついさっきやられたのかと聞きたくなる。おおよそ見るに堪えない姿だった。

『僕は君が苦しまないようにしてるのに、なんで全部聞かないのかなぁ。大体…』

「…此処は何処?」

長くなりそうな話をぶった切り、ずっと気になっていた疑問をぶつけた。すると、渋々ながらもここの場所について話してくれた。

『…まだ僕話してたんだけど。まぁいいや。此処はね、僕が創った場所。僕の気分次第でどんな光景にも出来ちゃう、とっても楽しいトコロ。』

楽しいトコロ、と言っても楽しいのは多分この少年だけだろう。少なくとも私は楽しくない。

「…返して。私をあっちに戻して。」

『嫌だよ。どうせまた彼を助けに行くんでしょ?』

「だったら何っ…!?私がどうしようと、私の勝手でしょ…っ!誰だかわからないけど、私は誰かに指図されたり縛られたりするのは嫌いなんだよ…!早く戻して…!!」

この少年と居ると、感情が掻き乱される。嫌な気持ちが入り混ざって、不快にしか感じられない。

『…うーん、「誰だかわからない」、ねぇ。酷いなぁ、ずっとそばに居たのに。』

「生憎君みたいな人の弱い所を突いてくるような知り合いは居ないよ。皆はそんなに酷くない。」

ずっと傍に居た割には何も分かっていないような発言をしてくる少年にら私は思わず言い返す。

『うんうん、あの人たちのこと、凄く信用してるんだね。まぁ今日のところは返してあげる。その代わり次会った時は…ね?』

「…いいからさっさと返して。気持ち悪い。」

無駄話はしたくない。そう遠回しに伝えた。

『…じゃあね。また今度会おうね。』

その意味を知ってか知らないでか、少年は穏やかに微笑むと、再会を望んだ。

「…一生会いたくない、君になんか。 」

毒を吐けばその仮面のような笑顔も消えるかと思い、そう口にした。 けれど、最後まで少年は笑顔を崩さずに私を見て笑った。


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