テラーノベル
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⚠️吸血鬼パロ
⚠️やや擬人化・衝動書き・ギャグ
⚠️小豆と黄色が喋ってるだけ
夜空の中に、異物が混じった。遠近感を失いそうな、烏よりも遥かに大きいそれは、星のない空を旋回する。目で追うにつれ影が大きくなっていく。
やがて隕石と見紛うような速度で降りてきたそれは、蝙蝠のような翼をぱさりと鎮めて、こちらを振り向いた。
「ど〜も! 吸血鬼です」
「今ので足痛めないのか?」
速度を出していたにもかかわらず着地は足でしたようだが、骨が折れるどころか足ごと潰れそうな勢いだった。なんならちょっとした地響きが発生していたのに。なぜ当人は平然としているのだろう。
ピースサインを繰り出していた彼は、「んー?」と首を傾げながら一歩飛び退る。
「ま、そのへんはどうにかすればどうにでもなるから」
「何もわからないな」
「で、僕は小豆。てっきとーに誰かの血を吸いたくて降りてきたんだけど、とりあえず君の名前は?」
雑に話を逸らして、彼は胸元に手を添える。月明かりの中に燕尾服の輪郭が浮かぶ。
名を尋ねるなら自分から、をしっかりと守られてしまい、黄色は地面に目を落とした。黙るのも憚られて、徐に口を開く。
「……黄色」
「本名じゃないでしょ」
「そちらもだろう」
偽名同士。あまり意味のない情報交換だったが、ひとまず互いの呼び名は決定した。
吸血鬼本人の謎のフランクさにより、初対面特有のよそよそしさは全カットされ、ふたりの声の端々に知人へ宛てた色が混ざり始める。
「そんでもって本題!」
突然の出会いからひとまず落ち着いて、吸血鬼こと小豆は、背の翼をはためかせた。ちらりと唇の隙間から犬歯を覗かせる。
「血吸わせてほしいな〜っ」
両の手を合わせた「きゃぴっ」という効果音がつきそうなお願いを、黄色はばっさり切り捨てる。
「断る」
「うん知ってた。この誘いで許諾もらったこと一回もない」
「実績がないなら改めた方が良いと思うが」
けらけら愉快そうに笑う小豆に、呆れたように黄色が返す。珍しく一切揺らがない獲物を目の前にして、小豆が微かに目を見開く。
「……まぁ、最終的には僕の勝手だし? 実績はもはやあるに等しいよね、うん」
「お前の勝手で事を進めさせるつもりはないが」
「…………あのさ、焦ったりしないわけ? 逃げるとか。めちゃくそ自信満々だけど、今の立場、自覚してる?」
「勝てるからな」
「……ふ〜ん?……それはまだ未確定だと思うけどなぁ」
翼がぴた、と動きを止める。血のような瞳が不思議な光を帯びる。
「僕これでもヴァンパイアなんだけど……あんまり邪険な扱いされると拗ねちゃうよ?」
「知っている」
「少しくらい付き合ってくれたっていいじゃん、ね? 僕もう断血671日目だよ?」
流れで飛び出したやたら具体的な数字を聞いて、黄色の表情にはますます不信感が積もる。
「そこまで来たならもう吸わなくて良くないか?」
「そんなつれないこと言わないでよ〜」
強請るような彼の眼差しが、捕食者のそれに切り替わった。爪の長い指先で宙をなぞって、だってだってと主張する。
「目の前にご馳走並べられた状態で671日我慢してるんだZE? ご褒美があって然るべきじゃないか」
「俺は嫌だ。というか671日をしっかりカウントしたんだな」
「そりゃそう! ヴァンパイアにとって血が吸えないなんて死活問題だからね!」
「暇人なのか」
「話聞いてた? 僕だって血吸いたいもん嫌だもん! ねね、一回どう?」
「どうじゃない。断ると言っている。普通の食事でも取っていろ」
なおも突っ撥ね続ける黄色に対して、小豆はとうとう懐に手を伸ばした。
「……それじゃお腹空くって言ってるの! もういいもん、自分で食べられるし!?」
二丁拳銃。およそ吸血機らしからぬ現代的な武器に、黄色の眉根が寄る。
「ファンタジーの存在ならファンタジーらしい刃でも使ったらどうだ」
「だぁかぁらぁ! 吸血鬼対策で銀製にされてるやつが多すぎるの!! 僕触れないでしょうが! よってたかって吸血鬼のこといじめて楽しい???」
「そうか、それは何よりだな」
「話聞けよっ!」
銃声が響くと同時に、黄色の姿が掻き消える。夜目の効く赤い瞳が辛うじて残像を捉えるものの、慣れの見える黄色に攻撃を与えられるほどではないらしい。ましてや手元にあるそれは銃で、放たれるのは銃弾。
思考の流れる小豆の沈黙に、黄色が切り掛かる。
「ちなみにこの短剣も銀製だな」
「はぁ!? 鍛治職のみなさんって全員親ヴァンパイアに殺されてる!? 恨み強すぎでしょ僕何もしてないって!!」
「671日前は何をしていた?」
「普通に人間の血吸ってたけど」
「害だな。排除」
「そこをどうか負けてくれませんか店主さん」
「誰が店主だ」
渋々拳銃をしまい直し、風切り音を立てた刃をひらりと躱して、小豆も剣を抜く。
戦闘中に戦闘相手と交わすやり取りとしては致命的に間違っている意思疎通をしながら、ふたりの攻防が繰り広げられていく。
「ところでさあ、ひとつ聞きたいんだけど」
「質問によっては答えよう」
振りかぶった凶器に手応えはない。そして、それは向こうも同じ。
「君物理的存在とは思えない身体能力してるけど、それ、何?」
助走なしの疾走。予備動作なしの振り上げ。地面についた手は軽々とその根ごと翻して。どう見たって普通の人間じゃないことは明らかだ。
訊かれた黄色は、なんでもないような顔のままさらりと告げた。
「人間じゃないからな」
「えっ君人間じゃないの?」
「見てわからないか?」
「人間じゃないかもとは思ったけど、ええぇ、見た目の違いゼロじゃない? なんて種族?」
角も、翼も、耳も、何もかも人間と変わらない黄色の姿。
なんとなく、張り詰めた糸の気配が薄れる。けれど、柄を握る手は緩めないまま、黄色は親切に答えた。
「人外」
「マジで知らない。何そのマニアック種族。この僕が知らないとか相当なんですけど」
「ちなみに、世界にひとりしかいないらしいと聞いた」
「君やん」
それ種族ってカテゴリで括っていいやつ?と小豆が尋ねるものの、黄色は首を振った。いくら当人だとはいえ、自分についてなんだって知っているわけではないのだ。
聞くところによれば先祖が違ったり人間は持っていない器官を持っていたりするらしい、と彼は知る限りの暫定的な答えを預ける。
「君の場合前者かな? だって多分身体能力上がるだけだよね。いや、単なる身体能力って言い切っていいのかは微妙だけど」
「どうなんだろうな。しかし実際、これまでの人生で何か特別な点を見つけたことはないな」
すっかり熱りが冷めて、というかどうでも良くなって、ふたりは刃を収めてしまった。合致しすぎたマイペース同士が、探求モードに入って談義を続ける。
「他にもいるの? 世界にひとりだけの種族とか」
「実はそれほど珍しいというわけでもないらしい。人外とか人外とか、探せば案外見つかるはずだ」
「命名サボりすぎじゃない? 漢字の方も変えなさいよ」
「俺に言うな。研究者に言え」
「はいはい」
「しっかし、そうかぁ、種族ねぇ……」
顔見知り相手のようなふんわりした空気感に、ばさりと翼の音が割り込む。
「人間の血の味は知ってるけどそういう種族の血ってまだ飲んだことないんだよね! 気になるから吸っていい?」
「断る」
「首がダメなら手首とかでもいいよ?」
「手に触れられるのは嫌いだ」
「ちぇ」
ケチ。と口を尖らせる小豆に、黄色は呆れの表情を隠そうともしない。フィンガーレスグローブを嵌めた手を庇うように遠ざけながら、ひとつだけ溜息を吐く。
「もういいな?」
それは、帰って良いか、という意味の質問で。要するに、俺は飽きたからお前も満足して帰れ、という意味であり。真夜中12時に鳴る、鐘の音と同義。
本来なら黙っている小豆ではないのだが、生憎ここは屋外なのだ。
「……君と真面目に戦ったら夜が明ける気がするし、わかったよ、はいはい」
「お引き取り願おう」
「あーあ、今夜もお預けかぁ……お腹空くんだよなぁ……」
わざとらしく嘆く小豆を横目に見遣った黄色は、服の土埃を払いながら告げる。
「赤ワインでも贈る。我慢しろ」
「良いやつ?」
「まぁな」
「そりゃ贅沢な。いいの?」
「そもそも開けるつもりがないからな。飲んだくれてる間に討伐されれば良い」
「わぁ、ひど。ありがたく貰っとくよ」
燕尾服の襟元に気を遣いながら、小豆はへらりと笑った。赤い瞳が上機嫌に細められる。
どこかで見たことがある気がするな、という黄色の呟きは、風だけが受け取って。
「それじゃ、近いうちに頂戴よね〜」
「気が向いたらな」
満月の下、繋がった視線の糸は切れて、ふたりの影が反対方向へ飛び去っていった。
◇ ◇ (▽自我)
吸血鬼パロでした。
こいつらどこの世界線でもギャグしかやってないの何。
小豆は燕尾服似合うと思うんですよね。てか大体何着てても似合うんですけど。ネクタイとか締めてほしいね。学パロで締めてるわ。
あと毎回黄色だけ本編軸の記憶うっすら残ってるのなんなんですか、あざとすぎる。尊い。
以上です。
おはようございました。
コメント
3件
ヴッ......イラスト描きたいっ.......グハァ..... 現場からは以上です
ベルリウムさん、第5話読ませていただきました!小豆と黄色の軽快な掛け合いが本当に楽しくて、思わず笑みがこぼれました。特に「断血671日目」とか「銀製多すぎ問題」とか、吸血鬼あるある(?)をギャグに昇華させているのがツボです。最後の赤ワインのやりとりもほっこりしました。二人のマイペースな距離感が絶妙で、続きが気になります!
#アモアスoc
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