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デネス大国に行くには、バイロン国を抜ける必要がある。昨日からバイロン国に入っているが、抜けるまでに何日か宿に止まらなければならない。夜通し進んでもいいのだが、馬に負担をかけたくない。 それにしてもこの時期の日差しのなんと強いことか。強くて疲れが溜まる。森の中を進む時はまだマシだが、さすがの俺でも体調を崩しそうな暑さだ。それなのにフィル様は、この暑い中を、イヴァルの王城まで来てくださったのだ。十分に休息を挟みながらの移動だったとしても、疲れて熱が出るのは当然だ。帰りは第二王子が一緒ではあったが、大丈夫だっただろうか。無事に帰り着いただろうか。また熱を出して、苦しんでいるのではないだろうか。
俺は一刻も早くデネス大国に行かねばと、手綱を握りしめ馬の腹を蹴った。
昼を過ぎた頃に大きな街で短い休息を取り、再び馬を飛ばした。途中に川や湖を見つけると馬を休ませ、辺りが夕陽に染まり始めた時、見覚えのある土地に着いた。
「この先を行けば…ラシェット殿の領地か」
馬の足を止めて遠く道の先を見る。
ここから半日進めば、リアム様の叔父、ラシェット殿の領内に入る。城に立ち寄り挨拶をしたいが、目的を果たしてからにしようと思う。デネス大国で首尾よく鉱石を入手できた後に、ラシェット殿を訪ね挨拶していこう。
俺はもう、イヴァル帝国の騎士ではないが、ラシェット殿は歓迎してくれるはずだ。彼はとても優しく良い領主だ。領民からも慕われている。だからフィル様を安心して任せられるのだ。
完全に日が落ちて暗くなる前に宿に入った。暑いせいか旅人も少なく、どこの宿も空いていて助かる。俺はあまり賑やかな宿は好きではないのだ。
宿の使用人に馬を預けて中に入る。安くもなく高くもない平均的な宿だが、清潔で天井が高く広く感じられる。案内された部屋もベッドと机と椅子と棚だけがあり簡素だが、とてもきれいだった。