コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
真ん中あたりですれ違うと、「私の方が少し早いだろ?」と、彼が片目を閉じて笑って見せた。
「負けませんから、私だって!」
そこからペースを上げてモップをかけて行くと、廊下の反対側へ着いたのはほとんど同時だった。
「引き分けだな」「引き分けですね」二人で同時に口にして、笑い合う。
続いて水切りをして乾いたモップで床を拭き上げると、彼と二人がかりで廊下の隅々までワックスをかけた。
「すごい、床が鏡みたいにピッカピカですね」
「ああ、これなら華さんもびっくりするだろうな」
二人で磨き上げた廊下を満ち足りた気分で眺めていたら、ぐぅーとお腹が鳴った。
「お腹がすいたのか?」
彼の耳まで届いてなきゃいいなと思っていたのに、しっかりと聞こえてしまっていたらしく、
「あはは、ちょっと疲れてお腹がすいちゃったみたいで」と、苦笑いを浮かべた。
「じゃあ、少し休憩にしようか?」
「はい、キッチンも解禁になったことですし、私が何か作りますから」
彼に応えて言うと、「それなら、私も手伝うよ」と、返事が戻った。
「え、でも……」彼には座って休んでいてもらいたいような気もしていると、
「二人で料理を作った方が効率もいいし、実は一人にされると、私は寂しくて死んでしまいそうになるんだ」
秘密だとでも言うように、彼が唇に人差し指をあてて、
「うさぎじゃないんですから」と、ぷふっと吹き出してしまった。