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真ん中あたりですれ違うと、「私の方が少し早いだろ?」と、彼が片目を閉じて笑って見せた。


「負けませんから、私だって!」


そこからペースを上げてモップをかけて行くと、廊下の反対側へ着いたのはほとんど同時だった。


「引き分けだな」「引き分けですね」二人で同時に口にして、笑い合う。


続いて水切りをして乾いたモップで床を拭き上げると、彼と二人がかりで廊下の隅々までワックスをかけた。


「すごい、床が鏡みたいにピッカピカですね」


「ああ、これなら華さんもびっくりするだろうな」


二人で磨き上げた廊下を満ち足りた気分で眺めていたら、ぐぅーとお腹が鳴った。


「お腹がすいたのか?」


彼の耳まで届いてなきゃいいなと思っていたのに、しっかりと聞こえてしまっていたらしく、


「あはは、ちょっと疲れてお腹がすいちゃったみたいで」と、苦笑いを浮かべた。


「じゃあ、少し休憩にしようか?」


「はい、キッチンも解禁になったことですし、私が何か作りますから」


彼に応えて言うと、「それなら、私も手伝うよ」と、返事が戻った。


「え、でも……」彼には座って休んでいてもらいたいような気もしていると、



「二人で料理を作った方が効率もいいし、実は一人にされると、私は寂しくて死んでしまいそうになるんだ」



秘密だとでも言うように、彼が唇に人差し指をあてて、


「うさぎじゃないんですから」と、ぷふっと吹き出してしまった。

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