『繋がれた呼吸』
tg視点
しおたんの部屋で迎える、初めての夜。
パジャマも、歯ブラシも、全部しおたんが用意してくれた。
すごく自然に、まるで最初から俺の居場所がここだったみたいに。
so ちぐちん、寒くない?タオルケットもう一枚出そうか?
tg ん、大丈夫。しおたんの部屋、あったかいし…
俺は照れたみたいに笑いながら、ベッドの上で小さく丸くなった。
しおたんのベッド。
俺の部屋よりも広くて、柔らかくて、いい匂いがして——
でも、なんとなく、深呼吸するのが苦しくなる気がした。
so …しおたん
tg なに?
tg 俺が、いきなり泊まるって言ったのに……怒ったり、しなかったね
しおたんは静かに微笑んで、ベッドの端に腰かけた。
so 怒る理由なんて、ある?ちぐちんが来たいって思ったことが、何より嬉しかったんだから
tg そっか
心からそう思ってた。しおたんといると、安心できる。
けど、安心しすぎて、逆に不安になる瞬間がある。
——まるで、自分の意思じゃないみたいに、流されてる気がする。
tg ねぇ、しおたん。俺、明日……家に戻ったほうがいいかな
その言葉を出すのに、少し勇気がいった。
でも、しおたんは一瞬黙ったあと、笑顔のままでこう言った。
so どうして?嫌なことでもあった?
tg いや、そうじゃなくて……ただ、心配するかなって、親が……
so 大丈夫。ちぐちんのスマホ、俺が連絡しておいたから
tg え?
so “今日は泊まります”って、送っておいたでしょ?ほら
しおたんは俺のスマホを見せてくれた。
確かに送信履歴があった。俺の名前で、俺の親に。
——でも、俺、触ってないのに。
tg しおたん、勝手に?
so 勝手じゃないでしょ?ちぐちんが言い出せなかったから、俺が代わりにしただけ
tg うん、でも……
so ねえ、ちぐちん
しおたんが顔を寄せてきた。
声は甘くて、優しくて、耳に直接触れるみたいな温度で。
so “俺が”してあげたんだよ……嬉しくない?
tg …うん、嬉しい
思わず、頷いてしまった。
それ以外の選択肢が見えなくなるほど、しおたんの声は柔らかくて。
so 良い子。大好きだよ、ちぐちん
撫でられる頭から、胸の奥まで、熱が降りてくる。
俺はただ、しおたんに「いい子」って言われたくて、ここにいる気がしてきた。
それが怖いって思った瞬間、
ベッドの隅に置かれた“鍵のかかった箱”に、ふと視線がいった。
あれ……最初から、あったっけ?
tg しおたん、あれ……なに?
so ん?それはね……秘密。まだ、ちぐちんには見せられない
しおたんは、また笑った。
その笑顔の奥にある“本当”に、俺はまだ気づいてない。
けど——息が、少しずつ浅くなるのを、身体はもう知っていた。
♡▸︎▹︎▸︎▹︎1000
コメント
2件
最高にも程があります…!(?)