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『鍵の意味』
tg視点
ベッドのすみに置かれた、小さな箱。
光の加減で、金属の鍵穴がかすかに光ってた。
俺はまだ、見てはいけないものを見た気がして。
それでも、視線をそらせなかった。
tg しおたん、あれ……何が入ってるの?
so ふふ。ちぐちんは、気になるんだ
tg だ、だって、なんか鍵、ついてるし
しおたんは、少しだけ沈黙した。
まるで、心の奥を探るように、俺を見てくる。
so でも、まだ開けちゃだめだよ
tg ……どうして?
so ちぐちんが“ちゃんと俺のもの”になったら、見せてあげる
その言葉に、心臓が跳ねた。
“ちゃんと俺のもの”って、どういう意味?
tg …俺、しおたんのこと、好きだよ?
so うん。知ってる。でもそれって、まだ“好き”ってだけでしょ?
しおたんの笑顔は、柔らかくて、優しくて。
だけど、どこか“試すような温度”があった。
so 本当に俺だけを見てくれるなら——鍵、渡すよ
静かにそう言って、しおたんはその箱に指を滑らせる。
カチリ、と小さな音がして、
中から、鈍く光るもうひとつの鍵が取り出された。
so これ、ちぐちんの引き出しの鍵と同じやつ。さっき、こっそり合鍵作っちゃった
tg え…?
so だめ、だった?
笑ってるのに、心臓が冷たくなる感じがした。
でも、怒れなかった。
怒るって感情より先に、
“俺は、そこまで見られてるんだ”っていう甘い痺れが広がって。
tg ……ううん。だめ、じゃないけど……びっくりしただけ
so そっか。よかった。ちぐちんなら、受け入れてくれるって思ってた
鍵はそっと、俺の手のひらに乗せられた。
ひんやりしてて、でも、少し重たかった。
so その鍵がある限り、ちぐちんのこと、俺がちゃんと管理してあげる
tg しおたん……
“管理”って、普通なら怖い言葉なのに、
俺にはそれが、安心できる響きに聞こえた。
その夜、俺は鍵を握ったまま、眠った。
夢の中でも、しおたんが隣にいてくれて、
外の音は何一つ、聞こえなかった。
この部屋が、世界のすべてになるなら——
それでも、いいって思ってた。
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