/s/[storyId]/_components/heading/assets/back_arrow_icon.4081080bcaba67b8.svg){kind=icon}
/s/[storyId]/_containers/report-container/assets/more-icon.20cfac1b79e24f56.svg){kind=icon}
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。
テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
タイトル、作家名、タグで検索
ストーリーを書く
テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
タイトル、作家名、タグで検索
ストーリーを書く
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。
彼女が激しい目で睨んでいるのは、俺ではなく母だろう。
俺はよく父に『お前はさゆりに似ているな』と言われていた。
最初は似ていないと思っていたが、成長してから母の写真を見ると『目元が似ているかも』と思った。
昔、宮本にも言われた。
《速水くんは不思議な魅力があるよね。目力があるっていうか、見つめられていると変な気分になる。いつもは何とも思わないのに、見つめられてるうちに色気を感じて、誘惑されているように感じるんだ。だから、君を〝セクシーな男性〟と言う人の気持ちが分かるよ》
それを裏付けるように、バーで飲んでいる時、まったくその気がないのに『誘ったでしょ』と逆ナンされる事もあった。
見てくれや眼差しなんて、ただの遺伝だ。
誘惑しようと思って人を見ていないし、その気がないのに誤解されてうんざりしている。
（母が父を誘惑した？ あり得ない。母は幸せになれない男を誘う人じゃない）
なら、やっぱり父の責任だろう。
あいつは母を想うあまり、自分の立場、環境を顧みなかった。
母と結ばれなかった事によって、余計に過去の恋人に憧れ、母を理想化したんだろう。
だがどんな事情があっても、俺やあかりがどんな道を歩むか想像できず、欲のまま子供を作ったあいつはただの大馬鹿者だ。
本当は怜香だって、すべての元凶が自分の夫にあると分かっているはずだ。
だがこの女は、プライドの高さから夫の間違いを受け入れられない。
自分の夫が悪かったと認めてしまえば、そんな奴と結婚した自分の選択も間違えていた事になる。
夫が俺の母に一方的に入れ込んでいた事や、マンションを買い与え、月々多額の金を送金していた事も、すべて認めなければならなくなる。
そんな事はできないから、怜香は俺たちを絶対的な悪にしたいんだろう。
そうすれば自分は〝被害者〟〝正義の側〟でいられるもんな。
『浮気された、女に誘惑された』と言えば、誰もが怜香を同情し、慰めてくれるんだからお気楽な事だ。
夫と対峙して深く話し合わなかったのは、自分の責任なのに。
心の中で自分に言い聞かせている間も、我を忘れた怜香は俺を罵倒し続けた。
『あんたは存在そのものが罪なのよ！ 芸能人だって不倫したら叩かれるじゃない！ あんたは犯罪者なのよ！ 皆さんの前で土下座して謝罪して、刑務所に入って二度と顔を見せないで！』
心の中は、無だ。
俺は石像になった気持ちで怜香の言葉をやり過ごす。
『あんたなんかに人は愛せない！ あんたは自分の浅ましい欲を満たすために、人様のものをかすめとって優越感に浸っているだけのクズよ！ このゴミ！』
そこまで言った時、エントランスのドアが開いてマンションの住人が入ってきた。
ハッとした怜香は我に返り、興奮して呼吸を荒げたまま俺を睨む。
『あなたは一生、誰にも愛されない。幸せなんて感じてはいけないの。自分は罪の化身だと自覚して、一生慎ましやかに生きなさい。あなたには何もできない。誰かを喜ばせる事も、愛する事もできないし、求められる事もない。生きているだけの汚物だと自覚なさい』
怜香は徹底的に俺を否定したあと、踵を返して去っていった。
嵐のような女がいなくなったあと、俺はドサッとロビーのソファに座り込んだ。
『…………自分がろくでもない男だって事ぐらい、分かってるよ』
あいつに酷い事を言われるのは慣れているはずなのに、色んな事がありすぎて心がすり切れそうだ。
『…………どうせ俺はクズだよ』
俺は目を閉じると、朱里の人生をねじ曲げた事を思いだす。
（俺に目を付けられたばかりに、可哀想に……。本当なら自分でなりたいものを決めて、別の会社に入っているはずだったのに。自分のストーカーが上司になったなんて、ホラーだろ）
彼女を想うと、色んな感情が溢れて泣きたくなってくる。
朱里が好きで堪らない。
あいつを抱きたいし、自分の女にして大切にしたい。
ここまで大切に守ってきた分、責任を持って幸せにしたい。
――でも、朱里の意志を無視してるだろ。
――お前がやってる事は、金を持ったストーカーの囲い込みだ。
それでも……。
『…………朱里がほしい…………っ』
たった一つ、俺の心の中で輝く綺麗な星。それが朱里だ。
一人の男としてあの子を幸せにできたら、自分はクズじゃないと思える気がする。
そこまで考えた時、中村さんの言葉が脳裏に蘇った。
《自分の孤独を慰めるために、朱里を利用しないでください》
君の言う通りだ。俺は孤独やどうしようもない絶望でできた穴を埋めるため、朱里を愛して〝まともな人〟のふりをしたがっている。
――けど、ちゃんと愛すから。
――心の底から愛して、子供も大切にして、幸せな家庭を築くから。
――神様お願いだ。
――あの子を俺にください。
気がつけば俺は、俯いて嗚咽していた。
コメント
3件
大丈夫.だよ！あの子は貴方の傍に必ずやってくるから....✨貴方の深い愛に もうすぐ気づくよ💘
クズじゃない！クズである訳ないじゃん… 尊さん朱里ちゃんは受け入れてくれるよ…愛し合えるよ…🥺
朱里ちゃんは未だ気がついていないけど、ココにこんなに愛してくれる人が居る(ㅅ´ ˘ `)💕 早く気づいてあげて～(*´ｖ｀)❣️
/s/[storyId]/_containers/next-in-series-container/next-in-series/assets/list-icon.c10ab777f3210550.svg){kind=icon}
作品ページ
