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鈴「おにーちゃん!えほんよんでー!」
赤「いいよ?なににする?」
鈴「これー!」
そんな会話をする娘と居候の青年の声を聞きながら、翠智と蘭はゆっくりとお茶を飲んでいた。二人の娘、鈴蘭が出来たのは、当時はまだ成年と呼ばれる歳ではなかった、19歳の頃。高校を卒業して直ぐにふたりは同棲を始めた。男同士のカップルだ。お互いの両親には同居すると話し、翠智は高卒ながらに一流企業に務め、蘭は専業主夫といくつかのパートを掛け持っていた。
そんな中、体調が優れなかった蘭が病院に行き、いくつかの病院を転々とした結果、下された診断結果は、”妊娠”。
当時は二人とも困惑したが、近年稀に見られる、妊娠できる体質を持つ男性。それが蘭だった。
幸い、最終的な判断を出した病院は男性妊娠に着いての理解をあり、蘭は無事、鈴蘭を産むことが出来た。今でもそこの病院にある小児科にお世話になっている。
桃「…ひま君の子、無事に産まれてくれたらいいな…」
緑「担当は十七夜先生なんだし、大丈夫だよ、きっと。」
十七夜先生、と言うのは、蘭の元担当医で七二の担当医でもある、産婦人科医の事。
少し天然で、抜けているところもあるが、知識が多く、頼りになる先生で、2人も信頼している。
桃「それは分かってるけどさ…」
緑「…心配だよね。」
桃「…うん。」
男性が妊娠するというのは、極めて稀で、まだ世間には浸透していない。
蘭自身が、鈴蘭を妊娠した時、周囲から稀有な目で見られたのも、事実だ。
緑「…ちゃんとお腹の子が生まれたとして、世間はどう思うか分からない。俺はひまちゃんの恋人さんがどんな人かは知らないけど、俺なら、自分の赤ちゃんを産んでくれて嬉しいって思うし、ちゃんと一緒に育てようって思うかな。」
桃「うん、知ってるよ。じゃないと、鈴はあそこまで育たなかった。俺ひとりじゃ、絶対に無理だったもん。ありがとうね、翠智。」
緑「( *¯ ꒳¯*)んふふどういたしまして〜」
赤「あの、翠智さん、蘭さん…鈴ちゃん、寝ちゃったんですけど…」
緑「あ、わかった。向こうで寝かせてくるね〜」
桃「ありがと、ひま君。」
赤「いえ…今の俺にできるのなんて、これぐらいですから…」
桃「それでも、俺達はすごい助かるんだよ!」
赤「へへ…蘭さん達には助けて貰ってばっかですから。」
桃「君はもっと、大人を頼ってもいいんだよ?」
赤「あはは…すみません、慣れてなくて…」
緑「いいんだよ、ちょっとずつ慣れていけば。」
赤「…はい。」
ニコッと儚げに笑う七二。少し複雑な顔をする彼に、2人は心配の眼差しを送った。
桃「…あ、そうだ。明日検診だよね?」
赤「はい…もう7ヶ月、か…」
緑「そうだねぇ…すっかり蒸し暑くなってきちゃった。」
桃「ねぇ…ほんと、くせっ毛には辛いよ…」
今は6月。外ではしとしとと雨が降り続いている。
赤「…この子が生まれる頃には、夏なんですよね…」
桃「そうだね。」
緑「ふふっそういえば鈴蘭が、「すずおねーちゃんになるのー!」って保育園で言ってたらしくて、保育士さんに「奥さんおめでたですか?」って聞かれちゃったw」
桃「え…///!?」
赤「あはは…鈴ちゃん、そんな事言ってたんですか?」
緑「うんw一人っ子だから、下に兄弟ができるみたいで嬉しいんだろうねw」
桃「だね…でも、あんま外でそういうこと言わないでって言っとかないと…///」
緑「別に俺はいいよ?もう1人作っても。ニヤ」
桃「へ///!?」
赤「わぁ…///」
桃「もう!このバカ///!」
緑「ごめんごめんw」
桃「もう…///…ひま君の子が生まれて落ち着いたら、考えてあげる…///」
赤「え!?」
緑「え、いいの…?」
桃「言い出したのそっちじゃん…///それに、俺ももう1人ぐらいは欲しいって思ったの///!」
緑「そういえばらんらん、2人兄弟だったもんね。」
赤「え、そうなんですか?」
桃「うん。離れた妹が一人いるんだ。もう暫く会ってないけど。」
緑「因みに俺は一人っ子。」
赤「へぇ…」
桃「兄弟って大変だけど楽しいから…鈴にも、もう1人ぐらい兄弟作ってもいいかなって。」
緑「ふふっありがとう、らんらん。」
仲睦まじい2人を、七二は羨ましく思った。
赤(…俺も、若とこういう風に居られたら…)
赤(…でもダメだ。若には蒼乃様がいるんだ。)
或間の許嫁、矢神蒼乃は、或間にぞっこん中だ。(尚、或間は七二一筋である。)そして彼女は、自分の望みはなんとしてでも叶えようとする。きっと、或間と彼女の結婚は、逃れることが出来ない運命だろう。
赤(…俺が、女だったらな…)
彼と駆け落ちでも、結婚でもなんでも出来たかもしれない。でも、その場合、蒼乃は七二の事が嫌いなため、露骨に嫌がらせをしてくるだろう。それこそ、或間と会えなくなるうな事をしたり、子供になにか危害を与える可能性だって全然有り得る。
もしも、或間との子を身篭ったことを、蒼乃に知られたら…
ギュッ…サスサス…
赤(…この子だけはなんとしてでも守らないと。)
赤(俺と若が、愛し合った証なんだから。)
桃「……」
その晩、翠智と七二も寝静まった後に、蘭はとある人物へ電話をかけた。
桃「…もしもし、お久しぶりです。」
桃「はい…ええ、彼は元気ですよ。」
桃「それで…はい。どうかお腹の子が産まれる前に…」
桃「ええ、それではまた、日を改めて…はい。お願い致します…”旦那様”。」
ガチャッ…