起きた時に
私の枕になってくれた人の体温は
もうなかった
「……クロエさん」
彼女は死んだ
その事実だけが私を蝕んだ
揺すっても、つねっても
つついても、ぎゅっとしても
反応はなかった
いつもの声も、聞こえなかった
「……死んじゃってる」
声に出すと重みが増した
信じたくない現実が、逃げれないよう突きつけられてる
全身がずぶ濡れみたいに重い
動けない
動きたくない
でも、うごかないと
そうでもしないと、首元に刃物を立ててしまいそうな気がしたから
遠く、遠い
花畑の隅っこ
そこに手紙があった
どうせ、下らないものだろう
そう思って投げ捨てた
こんなところに手紙なんて、魔獣から逃げそびれたスラムの人が落としたんだろう
そう思ったから
クロエさんの近くに戻る
そしたら、声が聞こえた
クロエじゃない、でもクロエみたいな声だ
私はこの声を知っている
《あら、死んじゃってるじゃないわたし》
「…魔人」
愛しい人と同じ見た目をしていながら、その人と真逆の感情を抱く悪魔
彼女の笑顔は傍から見れば無垢だが、一面を知ってしまった者には二度とのそのようには見えないだろう
《その魔人って言うのやめてくれなーい?私そんなにゴテゴテしてないでしょー?》
「性格的にピッタリだと思うけど、じゃあ逆になんて呼んで欲しいわけ?」
《そーだねー……》
《エレニカ、エレニカ・ワーカー》
「そ、でエレニカ。何の用?」
目の前の悪魔はエレニカと名前を改めた
だから私は親切にエレニカに問いつめた
《んー?わたしはただ忠告を聞かなかった愚者の最期を見に来ただけだよ?♪》
「……」
顔が歪む
エレニカは私の顔を見て、更に楽しそうにけらけらと笑ってた
《あーあ面白い!人間になった魔貴族に愚かで頑固な元王女!本っ当に……》
《虫唾が走るのよ》
その瞬間彼女の顔が変わった
まるで平和な国に弾丸を撃ちこんだかのように、顔は冷徹だった
《こいつも馬鹿だよね、期待なんて持った所で裏切られたら終いなのに》
そう言いながらクロエさんを踏み蹴る
そのエレニカの行動に一度は全身の毛が逆立つような思いをしたがよく考えれば謎だ
エレニカにとってクロエは創造主、言わば従わなければならない人
なのにこうやって暴行を働いている
おかしい
つまり
「……エレニカ」
《何、怒られる筋合いは無いわよ》
「貴女もしかして」
「演技してる?」
《……どういう意味よ》
その端麗な顔に一瞬浮かんだ動揺を見逃すほど私は甘くは無い
「貴女は復讐心から生まれた存在
だけど復讐心はだんだん期待へと変わった」
「だけどクロエさんはそれが許せなかった、自分自身へ牙を突き立てたくなった」
「だから貴女に、それが反映されたんじゃないの?」
「魔貴族に対する復讐と、その信念を曲げてしまった自分自身に対する復讐に」
……エレニカは下を俯いたまま固まった
と思ったら急に動き出して
私の胸の前に拳を突き出した
強く握りしめていた手に入っていたのはネックレスだった
私がどういうことかと困り果てていると、エレニカはその口を開いた
《あなたに》
「え?」
《あなたにあげるってクロエが……私が渡したいって思ったわけじゃないからね?勘違いしたら殺す》
さっきまであんなに悪魔と言って差し違えないほど邪悪だったのに、今じゃこんなに丸くなった
とっても微笑ましい
「……ふふ」
《何笑ってんのよ》
「いいえ?あはは!」
《ちょっと貴女こっちに来なさい今すぐに奈落に突き落として差し上げる》
「うわ〜!逃げろ〜!」
拝啓、クロエさんへ
いつか、また会えたら
その時は、エレニカも混ぜて遊びましょう
敬具
以下、これは花畑に落ちていた手紙となります
『拝啓 ご覧の皆様
エピローグまでご覧頂き、ありがとうございます!ハッピーエンドを望んだ方がいますが、このエピローグありなら十分ハッピーエンドですね!多分だけど。 ちなみにこの後、この花畑の番人にアリーシャがなったり、エレニカは魔法学生になったり、花畑には百合カップルが来るとか来ないとかします。
多分いつか参加型で書きます。 次回はアンドロイド百合かヤンデレ百合の予定です。
お楽しみに〜
敬具
私より』
コメント
2件
今回もめちゃくちゃ良かったよ!!!! そして、完結おめでとう〜!!!!🎉🎉 あー!!!最高だったよ!!! マジで自分のね…癖に刺さったわ(?) 救われないけど未来は明るい… そんなエンディングは最高なのよ☆(?) ふふ…エレニカちゃんは可愛いわね! きっとクロエちゃんと一緒で 優しいんだろうねー… 次作も楽しみに待ってるね!!!!
ギリ…ギリハピエン近くか…?? クロエちゃんと また逢う事を願っております… 次回のも楽しみにしております☆