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移動だけで時間を使ってしまった。もう夕方か…そう物思いにふけっているとなんだか海月がそわそわし始めた。
「腹減った。」
ポツリと呟いたその言葉にイラッときてしまった。私の腹の虫だって収まる気配を知らない。何故、お腹がすいているのに食べないのかは深いとこまでは分からない。ただ、本能で「屋台で食したいなぁ」と考えてしまっているのかも。私はじゃがバタが好きだ。出来れば屋台のじゃがバタと屋台のオムそばを買って食べたい。あと30分経ったら食べられる。だが、既に私たちの空腹度は100を容易に超えてきた。
元はと言えば「お昼ご飯抜こ?」と、発した海月にも悪い部分がある。
「我慢してよ…海月が”抜こ?”って言ってきたんじゃん」
「なっっ…!!」
何も言えない海月は黙って俯くしかなかった。私だってこんなこと言いたくないよ。なんでこんな小さなことでストレスを貯めなきゃならないんだろう。蓄積されたストレスは祭りで発散するとしよう。
そうしている間に、屋台が出る時間になった。
「ん…行くよ。海月?」
そう言うとさっきまでそこに居たはずの海月がいなくなっていた。
海月はもう玄関の前にいた。早くー!と言わんばかりのスピードに圧倒されつつ私は色々物が入っているバッグを持っていった。
「星螺?遅いよ…もう腹がぺこぺこだよ……。」
「ご、ごめんっ!ぼーっとしてたわ…」
今回ばかりは私が悪かったのかもと思い、その後に続くはずの言葉が無くなった。少しだけ、海月への信頼が大きくなった。意外にも行動力がある王子だなぁと、感慨深くなった。
「あは!よしっ!行くぞー!!」
海月は私の手を握って、るんるん気分で祭りの会場に向かった。海月の手は人間の手のようにもう全く違和感がなくなっていた。もう海月自信に馴染んだと言うべきだろうか。それとも海月が人間の体に馴染んだのかは分からない。だが、このまま人間として生きても問題が無いくらいには人間味溢れる人間になった。(これが美男子のマシェリだったら良かったのにな…)
私は雲の隙間から出ている太陽の光に目を向けた。嗚呼、あと少しで海月は海に還らなくてはならない。正直、寂しい。 毎日、仕事が詰まっていて休む時間があまり無い私にとっては休むきっかけを作ってくれる海月が大好きだ。海月の美男子姿も好きだが、美少女姿も愛らしいと思う。海に還る美少女というものは儚い雰囲気を放つ。
「……ここかな?」
祭りの会場に着いた海月は握っていた手にぎゅっと力を入れた。
「うん。海月…行くよ。」
「うんっ!」
こんな日常が永遠に続けばいいのにな…。そう願ってしまう程にはもうましゅろんの虜なんだろう。好きは行き過ぎると依存に繋がるがいっその事、共依存状態に陥ってしまいたいと魔が差した経験がある。だが、一度、海に海月が還ってしまえば無機物のようにふよふよと海中で浮かぶだけだ。
現実なんて忘れてしまいたい。海月が永久に私のものになっちゃえば楽なのにな。