夕日に包まれた会場は橙色に 染まった。私たちの着ている浴衣が夕日の光に映える。
「わぁ~!!めっちゃ綺麗ー!!」
海月が子供のようにはしゃぎ回っている。まるで未発達児のような情緒だ。まだ、人間としての感情のコントロールが出来ないのか。
「星螺!!まただよ!!ばっーん!どぉーん!!って音鳴ってるし!!」
これは花火が打ち上がる前の確認弾だ。爆発音と共に周りの観客を驚かせていくピエロのように見えた。海月の手を握って屋台を巡ることにした。
まずは、一刻も早く空腹感を無くすために食べ物が売られている屋台に並んだ。海月は人間界の食に疎いから私と同じものを頼んだ。それをなんの疑いもなく口に入れ、咀嚼していく。咀嚼音は楽しいメロディーを奏でていた。海月は頭の上にハテナマークを浮かべつつまた口の中に運び咀嚼していく。不思議そうに食べる海月は時々、咳き込んでは吐き出した。そして、癖かのように飲み込んで形成されているかが分からない胃の中で逆流を繰り返している。
海月の腹部が満たされ膨張していくさまは成長を思わせる。
「…?なんか、空腹感?星螺が言ってたのが無くなった気がする!」
と、海月は私に伝えてくる。人間の体を得て初めて食べる菓子の味や海洋生物が普段は口にしないお肉や野菜の味ほど格別不思議な感覚は無い。そもそも、海月には心臓がない生き物だ。海月にとって、食とは関係がないのかもしれない。
また、教えなければならない。
「これは満腹状態と言って…これ以上食べなくても大丈夫な証だよ。」
教えてもすぐに忘れられてしまわぬようにしっかりと叩きつける。
「うん……」
「それに、海月が人間になっても空腹感がすることは当たり前なことだし。だれにでも起こることだから大丈夫!」
そう言っても変なところで真面目さが滲み出てしまう海月。そんな海月が益々愛おしく感じる。
「ほら、次は射的、行こ?」
こくりと頷き、座っていた椅子から離れ射的屋に向かう。遠くから、ぱんっぱんっと銃声が聞こえた。そして、カランカランと鈴の音が耳に届く。
「いっーらっしゃーい!いっーらっーしゃーい!射的だよぉー!!今なら一人、5発のところ…8発!!3発追加しちゃうよぉー!!へーいらっしゃいっー!!」
撃ちたいという射撃欲が芽生えた私は500円払って鉄砲を構えた。銃口に入れたコルク弾をぎゅっと押し込んで、トリガーを撃つ。
「…っ!!」
ここだっ!と、力を解放した。次の瞬間、菓子の箱には当たった。だが、ビクともしなかった。もう一度コルク弾を押し込んだ。
「…?っっ!!」
壁を撃ち、弾き飛ばされた。
「……。」
私は7発目まで撃ったが、何故だか目当ての菓子には届かない。
諦めかけたその時、机に置いた銃を海月が黙って撃った。ぱんっ!ごとっ…
「カラン、カラン♪おめでとうございます!極細ポッキーです!!」
「ありがとうございます。」
海月は私の手を握って、
「取れたよ?」
と、渡した。悔しくて無視した私をぎゅっと抱きしめてくれた。海のように優しいね、君は。
続く。.:*・゜
いつもより更新早くてごめん!!
今日は夜忙しいから
二回投下できるかもしれません…⋆ ☄︎. ·˚ *