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「五億回の動きの向こうに。」
“大丈夫”と笑う幼馴染の影にある、不安と恐怖。
支え合う声が響く暗闇の病室で、二人は初めて本音をさらけ出す。
そして胸に芽生えるのは、再会の裏に潜む“不自然な気配”。
第三話「思想の恐怖」
翔が目を覚ましてから、時間が経つのも忘れるほど、俺はただ隣のベッドを見つめていた。
この病室に入ったときの衝撃は、まだ胸の奥に残っている。
──隣にいたのは、まさかの翔だった。
信じられなかった。
偶然とは思えなかった。
何年も会えなかった幼馴染が、同じ病院で、同じタイミングで、しかも隣のベッドだなんて。
驚きと喜びと、そして言葉にできないざわめきが、心をかき乱していた。
「……翔ちゃん」
そう呼ぶと、彼は目を細めて笑った。
「……ほんまに、かもめんやんけ。新しい患者さんが来るってのは聞いてたけど……
…まさか、隣やなんてな」
その声は懐かしくて、温かくて。けれど同時に、胸が痛む。
翔もまた病気と闘っていると知ってしまったから。
「俺……」
言いかけて、飲み込む。
何を言えばいいか分からなかった。
「大丈夫やよ、かもめん。心配すんな」
翔は先に口を開いた。
明るく笑おうとしていたけど、その目の奥には確かな影があった。
俺には分かる。幼い頃から一緒に過ごしてきたんだから。
──翔ちゃんも、多分…無理してる。
辛いはずなのに…「大丈夫だよ」って。 でも本当は、誰よりも怖くて、不安で、仕方がないんじゃないかなぁ。
その夜。病室の明かりが落ち、規則的な機械音と遠くの足音だけが響く。
俺は眠れず、カーテン越しに隣を見つめた。
「……翔ちゃん、起きてる…?」
小さく声をかける。返事はない。
それでも、誰かに聞いてほしかった。
「俺…俺な…ほんとは、すごく怖いんだ」
吐き出すように声が震える。言っていいのかな。心配かけちゃうかな。でも…もう限界。
「脳に腫瘍があるって言われても、まだ実感がなくて……でも確かに体は苦しくて。
いつまで生きられるのかも分からない。……本当は、怖くて仕方ないんだ…。」
シーツをぎゅっと握りしめる。
その時、微かな声が返ってきた。
「……俺もや」
翔だった。眠っているふりをしていたらしい。
「腎臓、悪い言われても……どうしてええんか分からへん。
正直、めっちゃ不安やし、怖い」
よかった。翔ちゃんも一緒だったんだ。
そう思うと同時に、翔の言葉が止まった。しばらくの沈黙。
やがて、翔は小さく続けた。
「せやけどな──かもめんがおるから、俺……まだ頑張れそうや」
俺も…俺もだよ。翔ちゃん。
涙が頬を伝った。
翔の声は弱々しかったけれど、確かに俺を支えてくれる力を持っていた。
「……俺も。翔ちゃんが隣にいるから、戦えるよ」
闇の中で、二人の声だけが重なった。
消えない不安と恐怖。けれど同時に、たしかな絆の灯りがそこにあった。
──ただ、心の奥底でどうしても拭えない思いがあった。
どうして俺と翔が、こんなにも「都合よく」隣り合うことになったのか。
これは本当に、これはただの偶然なのか。
それとも──誰かが、意図的に俺たちを引き合わせたのか。
答えはまだ、闇の中に隠されていた。
今回はここまでです!
翔視点の小説もあるので、是非読んで見てください!
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