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〜あらすじ〜
検査を受けたkamomeは体調の悪化を実感しつつも、冗談を交わして翔を安心させようとする。
だが結果は厳しく──脳腫瘍の進行により手術が必要と告げられる。
「大丈夫」と強がるかもめの笑顔は、翔には痛いほど嘘だと分かっていた。
第四話 本編「黒の幕開け」
病院の朝は、やたら早い。
カーテン越しの光に目を細めると、隣のベッドから翔ちゃんの寝息が聞こえてきた。
「ぐーすか」って言葉が似合う、やけに堂々とした寝顔。
思わず笑ってしまいそうになったけど──すぐに、胸の奥がずきりと痛んだ。
(……やっぱり、まだ頭痛が残ってる)
昨日は「怖い」なんて本音を翔ちゃんにこぼしたのに。
朝になったらまた「大丈夫」って言わなきゃ、って思ってる自分がいる。
◆
朝食のトレーが運ばれてきた。
温かいスープの湯気が鼻に届いた瞬間、胃がきゅっと縮む。
「……おぇ……」危うく声が出そうになり、慌てて咳払いした。
「どしたん? かもめん。スープと睨めっこしてるで」
寝起きでぼさぼさの頭のまま、翔ちゃんがニヤニヤしている。
「いや……あの、スープが俺を見てきて……」
「は? スープと目ぇ合うやつおる? 新しい才能やん」
思わず吹き出してしまい、つられて吐き気も引っ込んだ。
──こんなやりとりができるのも、翔ちゃんが隣にいるからだ。
◆
けど検査に呼ばれて、機械の台に横たわると、笑いなんか一瞬で消えた。
冷たい台に体を預けてじっとするうち、頭の奥が痺れるように痛んで、視界が揺れる。
終わって立ち上がろうとしたとき、足に全然力が入らず、そのまま車椅子に乗せられた。
病室に戻ると、翔ちゃんがすぐに身を乗り出してきた。
「かもめん、顔真っ青やん! ゾンビ役で映画出られるで」
「……役者デビューするならもうちょいマシな役がいい」
そう返したけど、息をするたび胸が重く、笑いが途中で途切れた。
◆
昼過ぎ、医師と母さんが病室に入ってきた。
その空気で、嫌な予感はしていた。
「kamomeさん。検査の結果、脳腫瘍の進行が早いことが分かりました。早急に手術が必要です」
母さんが短く息を呑む音。
翔ちゃんが信じられないって顔で僕を見ている。
胸の奥にあったざわめきが、一瞬で現実になった。
昨日までの頭痛も吐き気も、全部「兆し」だったんだ。
でも──泣いたら母さんが崩れる。翔ちゃんも不安になる。
だから俺は、いつもの笑顔を無理やり作った。
「……分かりました。お願いします」
自分でも驚くくらい冷静な声が出た。
翔ちゃんは歯を食いしばりながら「大丈夫ちゃうやろ!」って言ったけど、俺は首を振る。
「翔ちゃんまで不安になったら、余計しんどいから」
そう口にした瞬間、翔ちゃんの顔が苦しそうに歪んだ。
俺の「大丈夫」は、やっぱりすぐバレる。
◆
夜。
消灯した病室で、天井を見つめながら深呼吸した。
手術が決まったというのに、頭の中に浮かぶのは翔ちゃんの寝癖とか、変な冗談とか。
怖い。
でも、隣にいる彼に「大丈夫」と言い張ることで、ほんの少しだけ勇気を保っていた。
「……大丈夫、大丈夫」
そうつぶやいた声は、自分自身を励ます呪文みたいに、暗闇の中に溶けていった。
今回はここまで!
次回はkamomeさんが出演するゾンビの映画が公開されます!
嘘です!そんなもんないです!
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