テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ガラガラとスーツケースの音を響かせてインターホンを押す。
自分の家に帰ってきたのに初めてインターホンを鳴らす。何だか変なの・・・
可愛らしい声が返ってくる。
翔太💙『どちら様?』
亮平💚『分かってるくせに・・・早く開けて』
翔太💙『えっ〜翔太くん好きな人しか通れませんよ?』
亮平💚『なら問題ない。翔太くんはもっと俺の事好きみたい。会いたいんだって』
翔太💙『ふふふっ好きって言ってよ?』
亮平💚『ねぇ後ろに人来てるのよ?早く開けて』
膨れているのだろう〝んーっ〟と唸っている。俺ははぁーと溜息をつくとバカみたいに大きな声で叫んだ。
亮平💚『大好きです。お願いだから開けて』
エントランスホールを足早に抜ける。
恥ずかしくて、顔から本当に火が出そうになったのは初めてだ。
エレベーターを待つ俺は疲労困憊で立っていても眠ってしまいそうなくらいだった。本当に早く開けて欲しかった。
家で待っている人がいる・・・それだけで幸福感に満たされ、大変な仕事でも乗り越えられる活力となっている事は言うまでもなかった。
自分の家の扉の前まで来る。扉の向こうに愛する人が待ってると想像するだけで顔が緩んだ。
インターホンに手を伸ばすと扉が開いて翔太が飛び出してくるとコアラのように俺に抱きつき掴まっている。
亮平💚『コアラ飼ってたっけ?』
翔太は〝もう猫の次はコアラかよ〟と言いながらボコスカ俺を叩いた。優しい猫パンチは全く痛くなかった。蹌踉めきながら玄関に入る。片手で翔太を支え、片手でスーツケースを転がす。
〝只今〟〝おかえり〟が玄関に響くとどちらからともなくキスをした。
翔太💙『首取れちゃいそうだった。長くなったでしょ?』
首をうんと伸ばして見せている。今度はキリンさんのお出ましだ。
亮平💚『可愛い事ばかり言ってると、次からどこにも行けなくなっちゃう』
〝もう何処にも行かないで〟何て言っていてキュン死にしそうだ。今すぐにでもベットに沈みたいんだけど、きっとそれは言わない方がいい。疲れた身体をソファーに預けた。
翔太💙『イチャイチャしたいけど仕事なの。亮平はゆっくり休んでね。あと、お風呂入れてあるから炭酸風呂だよリラックスできるよ』
翔太は寂しそうな顔をして俺の頰を撫でると〝もうあんまり時間なくて…ごめんね〟と言うと入れ替わりで翔太は仕事へと出掛けて行った。
俺はよろよろと脱衣場へ行きお風呂に入る。
翔太が俺の為にお風呂の準備をしてくれていただなんて、すごく嬉しい。疲れた身体を湯船に沈めた。
その後は洗濯を済ませるとベットに横になった。
ベット脇に置かれたノートを開いた。そこには俺の不在中の寂しい思いが綴られていた。寂しいだなんて一度だって言わなかったのに我慢してたんだろうか・・・
🗒️
1日目→亮平くん今何してる?生放送見たよ。天気予報を読み上げる亮平はいつもよりシュッとしててカッコいい。
💚いつだってカッコいいのまちがいでしょ
2日目→今日は雑誌の取材でした。亮平さん忙しいの?〝会いたいっ〟言ったら迷惑だよね。
💚反省してます。我慢させちゃってごめんね。この日はテーマパークの取材に行ったよ。声出しすぎて喉が痛くなった。〝亮平さん〟って呼び方好きかも♡
3日目→リョウ夢にくらい出てきて?今日は嫌な事がありました。会いたいよ…
💚何かあったら連絡してって言ったでしょ?翔太の力になれないなんて辛い。気を遣わせてたんだねごめんね。この日は水牛に乗って雑誌の撮影をしました。牛さんちょっと苦手かも。
4日目→辛い。嫌な事ってなかなか消えてくれないね。夢にまで出て来て参っちゃった。
目覚めた時と打って変わって一気に問題解決だよ。ついに言っちゃった〝会いたい〟が亮平からも返って来て嬉しかった。同じ気持ちだった?きっと俺の方が会いたかった。
💚正直あまりに忙しくて心に余裕がなかった。翔太からの〝会いたい〟が嬉しかった。俺に遠慮しないで?翔太の気持ちちゃんと知りたい。お土産は〝亮平さん〟これで5年は辛い事があっても生きていけそうなくらい嬉しかったよ。
5日目→おはよ。後何時間かしたら会えるね。亮平とどっか行きたいな…何処行きたい?何食べたい?意外と亮平の事知らなくって少し悲しくなった。
💚俺も翔太がこんなに寂しがりやさんでこんなに可愛いなんて知らなかった。知らない事は不安に繋がるからいっぱい話そうね。ただいま翔太。
5日分の想いが書かれたノートを見て思わず涙がこぼれた。こんなにも愛されてるのに、この五日間〝忙しい〟を言い訳にしてしまった事を後悔した。
返信するようにノートに書き記すともう瞼の限界だった。
翔太💙『ただいま…ただいま!…?亮平?』
ペチペチと頰を叩かれている。薄目を開けると心配そうに顔を覗き込む翔太の顔があった。垂れた目尻の翔太が近づいてくると薄い唇が開かれ〝大丈夫?具合悪い?〟とおでこを触った翔太は熱がないとわかると頰に擦り寄って来た。
亮平💚『翔太…おかえり。やっぱり猫が1番似てる。もうゴロゴロ喉鳴らさないで?』
〝鳴らしてない〟小さな口を尖らせてまた頰にスリスリしてきた。〝ん〜っ〟と言って足をバタバタさせている。
亮平💚『なぁに?どうしたの』
翔太💙『エッチしたい///ねぇしょう?』
時計を見ると既に16時が回った所だ。ムクリと起き上がると寝過ぎて腰が痛い。お腹も空いた…
翔太は察した様子で〝お腹空いた?エッチお預け?〟昨日の夜から何も食べていない。
亮平💚『ごめんねご飯先でも構わない?鰻でも食べる?精力つくし』
俺の腕をバシッと叩くと〝やだぁエッチ〟何て言ってきて思わず〝どっちがだよ!〟と突っ込むと上に跨ってきた翔太は〝どっちも…ねっ違う?〟俺の腰に腕を回してギュッと抱きついている。
翔太💙『お返事ありがとね』
そう言ってテーブルに置かれたノートを、指差している。
翔太💙『亮平の匂いする////会いたかった』
亮平💚『何回言うのよ?お顔見せて?』
翔太は俺の肩に顔を乗せたままだ。無理やり引き剥がすと泣いていた〝どうしたの?〟
翔太💙『会いたかった!会いたかったの!寂しかったの』
待ってる側の気持ちなんて正直分からなかった。自分は仕事で忙しく過ごした5日間は、スタッフに囲まれ正直寂しさを感じる事はなかった。ノートに書き記された翔太の気持ちはほんの一部分で心の叫びはあんなもんじゃなかった。
背中を撫でるとわんわん泣いてる。30過ぎた男の子がこんなにも可愛いなんて。
急に泣き止むと〝お腹空いた〟と言ってまるでお母さんが食事を運んでくれるのを待つ子供のように俺に訴えている〝食べに行こうか?〟と言うと〝うん〟とこれまた子供のように頷いた。
亮平💚『俺、和食食べたいんだけど?』
聞けば〝焼肉〟と言いそうだったので先手を打つ。翔太のように毎日焼肉食べれる程、油物が得意ではない。翔太は何処かに電話をかけると〝お願いだよ一生のお願い〟なんて言っている。
翔太💙『よしっ行くぞ』
行き先を告げずに辿り着いたのは涼太の家だった。
亮平💚『えっ?ちょっ翔太?涼太に頼んだの?』
分かってたら何か手土産でも買ってきたのに。あまりにも失礼すぎるだろ。
涼太❤️『君たちお店行きなさいよ』
翔太💙『涼太の手料理に勝るものがあるのか?ないだろっ!』
なんで怒り気味なんだ…翔太は涼太が料理を作るところをカウンター越しに眺めると〝涼太お店開けば?〟 何て言ってて涼太も満更じゃなさそうに〝翔太が出資してくれるなら考えるよ〟なんて言ってる。
亮平💚『ごめんね急に押しかけて』
涼太❤️『亮平くんの頼みとあらばなんでも致しますよ』
翔太💙『おい亮平に色目使うなよ!』
〝悪いねうちの幼馴染我儘で大変だろっ?〟少しだけ…いやかなり2人の関係性に嫉妬してしまう。2人にしか分からない阿吽の呼吸のような、お互い分かり合っているからこその空気感のようなものを感じる。翔太は〝我儘〟だなんて言われて怒るのかと思いきや〝涼太にしか俺我儘言わないもん〟なんて言っていて胸がざわついた。俺には何で我儘言ってくれないんだろ…
亮平💚『ゆりゆりしちゃって嫉妬しちゃう』
思わず本音が出てしまう。翔太も涼太もポカンとした顔をして、2人にとっては当たり前のことなのも俺をイライラさせた。
涼太❤️『大好きな2人が幸せそうで俺も嬉しいよ』
なんて本当にロイヤルすぎる。完璧な男過ぎで脱帽ものだ。翔太なんか突然の涼太の〝大好き〟発言に頰を赤らめてる。色目使ってるのはどっちよ。
食卓に並べられたのは、金目鯛の煮付けにほうれん草の白和えにご飯にお味噌汁。凄すぎて声にならない。翔太は目をキラキラ輝かせて生唾を飲んでいる。子供みたいに足をカタカタ鳴らして〝早く早く〟 なんて言っている。
亮平💚『お行儀悪いからやめなさい』
涼太が椅子に座ると〝ご賞味あれ〟なんてそんなセリフ料理番組以外で聞いた事ない。翔太は〝頂きまぁ〜す〟〝うわっうまっ〟と騒いでいる。
亮平💚『本当にどれも美味しい。ありがとう涼太。今度俺に料理教えてくれない?』
翔太は箸をテーブルに置くと〝亮平はそんな事しなくていいぞ!〟なんか拒絶されたような気がしてムッとした顔をすると涼太は〝今の言葉に悪意はないよ〟なんてどうして翔太の心が読めるんだよ。
涼太❤️『翔太ちゃんと言わなきゃ誤解するだろっ?』
翔太💙『えっ?あっ…亮平の手柔らかくて気持ちいいから…料理って水使うし、火なんて危ないぞ危険がいっぱいだ。料理は涼太に任せればいい』
涼太❤️『おいお前毎日通う気じゃないだろうな?』
翔太💙『ここに住むか?部屋空いてるよな。それでも構わないぞ?亮平どうかな?』
涼太❤️『馬鹿なのかな?亮平も迷惑だ』
ちょっといいかもなんて思っちゃう自分もいた。ここなら翔太も寂しい思いしなさそうだし〝おいおい本気で悩むのやめてくれる?普通に迷惑だから〟返事する前から速攻で断られた。
亮平💚『翔太が寂しくないかもって思って』
涼太❤️『亮平の代わりは誰にも勤まらないよ。たまになら食べにおいで。話し相手には丁度いい』
帰り際涼太が俺に〝困った事あったらいつでも言いな。コイツ変わってるから〟そう言ってウインクをする涼太はTHEアイドルという感じだった。頼もしい理解者ができて有意義な時間が過ごせた。
涼太のマンションからの帰り道。辺りはすっかり暗くなり、沿道沿いの街路樹に紛れ二人手を繋いで帰った。
翔太💙『亮平さん、精力つきました?』
腕に纏わりつくように歩く翔太の表情は、短夜に隠れて窺い知る事はできない。
亮平💚『ふふ//付きましたとも///すっかり元気。翔太くんは?』
足を止めて俺の腕を引いた翔太は、街灯に照らされてピンク色に染めた頰が、益々赤く色づいて小さな声で耳打ちすると小走りして駆けて行く。
翔太💙『早く…したい』
コメント
12件
今日は更新なしかな…
今帰りの電車なんだけど、しょっぴー💙可愛すぎて涙出てきた。 尊い…
朝から最高最高最高❣️本当に1日の活力になりますありがとう💙 そして、だてが亮平となんかありそな予感がビンビンするぜい🤭 とりあえず次回のセンシティブめっちゃ楽しみ✨✨