戦いが終わり、戦士たちが静寂に包まれる中、南無は一人、足を止める。廊下の片隅で彼女は立ち尽くし、手に持った法師の装束を見つめていた。かつて、法師が彼女に教えてくれた言葉が頭の中を反響する。
「強くなりなさい、南無。弱さは、あなたを裏切るだけだ。」
その声が、今はもう届かない。南無の目からは、次第に涙がこぼれ落ちていく。法師が死んだことを知ったとき、彼女の心は崩れそうだった。
南無が法師に出会ったのは、まだ幼い頃だった。彼女の両親が何者かに命を奪われたその日、彼女は孤児となり、どこにも行く場所がなかった。従兄弟である教皇(彼女はいとこがそんな偉いやつだとは思わずただの平社員だと思っていた)が彼女を引き取り、狩り手に加わることになったが、教皇の冷徹な態度には馴染めず、心の中で孤独を抱えていた。
そんな時、法師が彼女の前に現れた。最初はただの無愛想な男だと思っていたが、法師は南無に不器用ながらも優しさを見せることが多かった。彼の言葉は、南無の心を少しずつ変えていった。
「お前は、どんな人間にもなることができる。私のように冷徹な戦士になることだって、できる。」
法師は彼女に教えることを惜しまなかった。戦術や異能の使い方だけでなく、人としての強さを教えてくれた。それは、南無にとって父のような存在だった。
「南無、お前はもう一人じゃない。私がついている。」
法師の言葉に、南無は何度も救われた。その言葉に励まされて、孤独を乗り越え、戦士として強くなる決意を固めた。
今、法師が倒れた。南無はその現実をどうしても受け入れられなかった。彼女は跪き、両手で顔を覆う。
「法師……どうして……」
その声は震え、涙が止まらない。彼女は自分の中で怒りと悲しみが交錯するのを感じた。法師が自分を育て、守り、教えてくれたことは、今やすべてが無意味になったのか。彼の死に、何もできなかったことが悔やまれてならなかった。
彼女の心は引き裂かれ、怒りが沸き上がる。その怒りは、自分の無力さに対するものだった。南無は深く息を吸い、涙を拭いながら立ち上がった。
「法師、あなたが教えてくれたことを、私は忘れない。私は、必ず……」
その時、教皇が静かに歩み寄り、彼女に声をかけた。
「南無。」
教皇の声は、いつもの冷徹なものであったが、どこか悲しみを感じさせる。
「法師は自分の役目を全うした。だが、彼の死を無駄にするわけにはいかない。お前の力を使い、戦いを続けなければならない。」
南無は教皇を見つめ、その言葉に答えることはなかった。心の中で、法師の思いを背負う覚悟を決めた。
南無は、法師の死を乗り越え、冷静に戦いの場に立ち向かうことを決意した。彼女の目には、涙を拭ったあとに強い意志が宿っていた。どんな困難な戦いが待ち受けていようと、法師が教えてくれた強さを胸に、戦い抜く覚悟を決めたのだった。
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